第28話 空を蹴るペンギン
ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。
「そうだ!そうだ!こっち来て!!」
チョウチョウオが元気よく駆け出した。
ウデフリツノザヤウミウシは慌てて後を追いかける。
「え?」
「確かそっちは」
カブトガニがぽつりと呟いた頃には、二人はすでに次のエリアへ到着していた。
海鳥エリア、ペンギンアイランド。
大きな岩場と冷たい水場が広がり、人工雪がところどころに積もっている。
水辺では何羽ものペンギン達がよちよちと歩き回っていた。
「こっちこっち~!...ほら!!!」
「え?........わぁ〜!」
ウデフリツノザヤウミウシの目がきらきらと輝く。
小さな身体を揺らしながら歩くペンギン達。
水へ飛び込む子。
羽繕いをしている子。
寄り添って眠っている子。
そのどれもが可愛らしく、ウデフリツノザヤウミウシは完全に見入っていた。
「やっぱり、ペンギンアイランド、」
「この可愛いの、ペンギンっていうんですか!?」
「落ち着いて、...」
カブトガニは苦笑する。
(わからなくもないけど...)
「あははっ!興奮しすぎ。でも、癒されるよね。ここには色々な種類のペンギン類がいるんだよ!」
「いっぱいいるんですね!」
「ん、ウミウシのほうが、もっといる」
「※世界で3000種以上、日本近海では約600種以上」
「そんなに!?」
ウデフリツノザヤウミウシは驚きで触角をぴんっと立てた。
その時だった。
「だ、誰かいるんですかぁ〜....」
震えた声が聞こえる。
「あ!この声は!!」
「アクアリスさん?」
「確かこのエリアにいるのは」
「マユちゃ〜ん!大丈夫だよ~!」
チョウチョウオが大きく手を振る。
「マユちゃん?」
「ん、キマユペンギンのアクアリス」
岩陰の柱から、そっと顔だけが覗いた。
「.....ぅぅ......」
黒と白を基調にした髪。
黄色い冠羽のような髪飾り。
そして、不安そうに揺れる瞳。
「あの子とっても臆病、特に海獣が怖いらしい」
「海獣?」
「アザラシとかアシカとか?」
「そうなんですね。あの!お話しませんか?」
ウデフリツノザヤウミウシがにこっと笑いかける。
キマユペンギンはびくっと肩を震わせた。
「......」
しばらくしてから、恐る恐るこちらを見つめる。
「や、優しそうな、人....」
「私!ウデフリツノザヤウミウシって言います!」
「!!......わ、私、さっき、チョウチョウオが言ってた、けど、キマユペンギン....です。」
「キマユペンギン:「ペンギン目 ペンギン科 マカロニペンギン属 キマユペンギン(奇形種アクアリス)」フィヨルドランドペンギンとも呼ばれる。ニュージーランドの南島などに生息し過去にニュージーランドの北島の南岸にも生息していたことが化石から分かった。頭部から上面の羽衣は黒い、下面の羽衣は白い。嘴基部から眼上部と後頭にかけて太く黄色い冠羽があり後頭で垂れ下がる。頬には白い筋模様がある。スネアーズペンギンと似ているがキマユペンギンは嘴根元の剥き出しの皮膚がない。人間に対して警戒心が強い。人間が連れてきたイヌや鼠やオコジョにより生息地が激減している。ペンギン類のアクアリスはペンギンの羽根の形の刃をした薙刀を持っている。彼女は奇形のキマユペンギンのアクアリスであり、他のペンギン類のアクアリスにできない月光力で氷を足元に生成しそれを蹴ることで空を飛ぶ。アクアリスになる前はは奇形ではなかったが月光を浴びてアクアリスになるさいに突然変異いたらしい、彼女は12時間半潜ることができて深海の水圧にも耐えれることがわかっている。彼女は運動が得意であり特にロッククライミングが好きだが脚だけで壁を登る。彼女についたあだ名が「フライング・ペンギン」である。彼女はそれを恥ずかしがっているが飼育員達は可愛がっている。」
「ねぇねぇ!ペンギンのこともあなたのことも!教えてよ!」
「わ、私が!?」
「うん!」
キマユペンギンはあわあわと手を振る。
「.....で、できるかわかりませんが、これも人慣れするための修行、や、やります!!」
「いいねぇ〜」
「うん、」
チョウチョウオとカブトガニが頷く。
キマユペンギンは深呼吸を一つしてから、ゆっくり口を開いた。
「ぺ、ペンギンは....飛べない鳥、です....」
「飛べない?」
「はい....でも、その代わり、泳ぐのが得意で....水の中を飛ぶみたいに進めます....」
「へぇ〜!」
ウデフリツノザヤウミウシは感心したように声を上げた。
「この子達も?」
「はい....」
キマユペンギンが水辺を指さす。
ちょうど一羽のペンギンが水へ飛び込んだところだった。
ばしゃんっと水しぶきが上がる。
次の瞬間、魚雷のような速さで水中を泳ぎ始めた。
「すごぉ〜い!!」
「速い〜」
チョウチョウオも目を丸くする。
キマユペンギンは少しだけ誇らしそうに微笑んだ。
「水の中だと....ほんとに速いんです....」
「キマユペンギンさんも泳げるんですか!?」
「は、はい....」
「見てみたい!」
「えっ」
キマユペンギンは固まる。
「えぇっ!?い、今ですか!?」
「うん!」
「い、いやその、心の準備が....」
「あははっ!困ってる〜!」
チョウチョウオが笑う。
キマユペンギンは真っ赤になっていた。
「うぅ....」
だが、その時。
一羽のペンギンが足を滑らせ、小さな段差から転がりそうになった。
「きゅっ!?」
「あっ」
キマユペンギンの目が変わる。
次の瞬間だった。
彼女の足元に淡い月光が広がる。
透明な氷が瞬時に生成され、その上を蹴った。
ぱきんっ!
鋭い音と共に、キマユペンギンの身体が空へ跳ぶ。
「えぇっ!?」
ウデフリツノザヤウミウシが驚く。
キマユペンギンは空中で小さなペンギンを抱きかかえると、そのままくるりと回転し、ふわりと着地した。
氷の粒がきらきら舞う。
「だ、大丈夫ですか....?」
「きゅ〜!」
助けられたペンギンは元気そうに鳴いた。
「す、すごぉ〜い!!」
ウデフリツノザヤウミウシが大きな拍手をする。
「飛んだ!!」
「空を蹴った〜!」
チョウチョウオも興奮している。
キマユペンギンは照れたように俯いた。
「うぅ....と、とっさに身体が....」
「かっこよかったです!!!」
「そ、そうでしょうか....」
「うん!」
その真っ直ぐな言葉に、キマユペンギンは少しだけ目を丸くする。
それから、ほんの少しだけ。
嬉しそうに笑った。




