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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
ウデフリツノザヤウミウシの章

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第27話 サンゴ礁エリアの水温調整



 ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


 サンゴ礁エリア。


 チョウチョウオに案内されながら、ウデフリツノザヤウミウシとカブトガニはエリアの奥へと進んでいた。


 大きな水槽の向こうでは、数人の飼育員達が忙しそうに作業している。


 太いホースが床を這い、機械の低い駆動音が響いていた。


「わぁ〜、なんだかすごいです〜」


 ウデフリツノザヤウミウシが目を輝かせる。


 頭の触角も、興味津々といった様子でぴこぴこ動いていた。


「今日はね〜、水温調整の日なんだよ〜!」


 チョウチョウオは得意げに胸を張る。


 しかし、その直後。


 くるっと振り返った勢いでまた壁にごつんとぶつかった。


「あいたっ!」


「だ、大丈夫ですか!?」


「へーき!」


 カブトガニはくすっと笑う。


「チョウチョウオちゃん〜前見ないからね〜」


「だって楽しいんだもーん!」


 その声に、近くにいた飼育員が苦笑した。


「こらこら、走ると危ないよ」


「はーい!」


 返事だけは元気いっぱいだった。


 飼育員はホースを確認しながら、水槽の温度計に目を向ける。


「よし、少しずつ合わせていこうか」


「合わせる〜?」


 ウデフリツノザヤウミウシが首を傾げる。


「生き物によって快適な温度が違うんだよ」


 飼育員は優しく説明した。


「急に変えると弱っちゃう子もいるから、少しずつ慣らしていくんだ」


「へぇ〜....」


 ウデフリツノザヤウミウシは感心したように水槽を見る。


 水の中では、小さな泡が静かに上がっていた。


「お魚さん達って、繊細なんですね」


「うん、とってもね」


 チョウチョウオも頷く。


「だからみんな頑張ってるんだ〜」


 その時、ぶおん、と機械音が少し大きくなった。


 水槽の中にゆっくりと新しい海水が流れ込んでいく。


 青いライトに照らされ、海水がきらきら光った。


「綺麗〜....」


 思わずウデフリツノザヤウミウシが呟く。


 カブトガニはその横でのんびりと腕を組んでいた。


「ここはね〜完成したらもっとすごいんだよ〜」


「もっと?」


「いっぱい魚が泳いで〜サンゴも増えて〜人間さんもいっぱい来る〜」


「お客さんが来たら、どんな感じになるんでしょう....」


「にぎやかになるよ〜!」


 チョウチョウオは嬉しそうに笑った。


「みんな『かわいい〜!』とか『すごーい!』って言ってくれるんだよ!」


「そうなんですね....」


 ウデフリツノザヤウミウシは少しだけ想像してみる。


 今はまだ準備中で静かな館内。


 だけどいつかここに、大勢の人が訪れる。


 子供達が笑って、アクアリス達と話して、水槽を眺める。


 そんな未来を考えると、胸の奥がぽかぽかした。


「楽しみ、です」


「でしょでしょ!」


 チョウチョウオはまた勢いよく走り出した。


「あ!こっちこっち!」


「ま、待ってください〜!」


 ウデフリツノザヤウミウシが慌てて追いかける。


 カブトガニはその後ろをのんびり歩いていた。


「元気だね〜ほんと〜」


 サンゴ礁エリアの奥には、小さな円形水槽が並んでいた。


 まだ空っぽの場所も多い。


「ここはなんですか?」


「小型魚用の展示水槽だよ〜!」


 チョウチョウオはぴょんっと水槽の縁に飛び乗る。


「小さい魚さん達がいっぱい入る予定なの!」


「へぇ〜....」


「隠れ家もいっぱい作るんだって!」


 水槽の中には人工岩やサンゴの模型が配置されていた。


 確かに、小さな魚が隠れられそうな隙間がたくさんある。


「海の中みたいですね」


「水族館だけど〜なるべく自然に近づけてるんだって〜」


 カブトガニがゆっくり説明する。


「そうしないと〜落ち着かない子もいるからね〜」


「なるほど....」


 ウデフリツノザヤウミウシは真剣に聞いていた。


 この水族館は、ただ見せるだけの場所ではない。


 生き物達が安心して暮らせる場所を、人間達も一緒に作っている。


 それが少し分かった気がした。


 その時だった。


「うわっ!?」


 チョウチョウオの声が響く。


 見ると、水槽の縁でバランスを崩していた。


「あっぶな〜!」


 ばしゃん!


 そのまま小型水槽へ落下した。


「だ、大丈夫ですかー!?」


 ウデフリツノザヤウミウシが慌てる。


 しかし、水槽の中から元気な声が返ってきた。


「あはははっ!落ちちゃった〜!」


 チョウチョウオはけろっとした顔で笑っていた。


 飼育員が吹き出す。


「ほんと元気だなぁ」


「えへへ〜」


 びしょ濡れのまま笑うチョウチョウオを見て、ウデフリツノザヤウミウシも思わず笑ってしまった。


「ふふっ....」


「お、笑った〜!」


「え?」


「さっきより緊張してない顔してるよ〜!」


「そ、そうですか?」


「うん!」


 チョウチョウオはにかっと笑う。


「ここ、楽しいでしょ!」


 ウデフリツノザヤウミウシは周囲を見回した。


 働く人達。


 準備中の水槽。


 優しいアクアリス達。


 まだ完成していないこの場所は、少しずつ“家”になっていく。


 そんな気がした。


「はい....とっても」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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