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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
ウデフリツノザヤウミウシの章

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第26話 ひらひら泳ぐサンゴ礁の仲間たち


 ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


 バックヤード。


「ここは〜バックヤード、水族館の裏の顔だよ~」


 カブトガニがのんびりとした口調で言いながら、通路を歩いていく。


 その後ろを、ウデフリツノザヤウミウシが小さな足取りで追いかけていた。


「裏の顔....」


「そ〜だよ~、ここで〜いろいろなこと、お世話とかを〜するんだよ〜」


 壁際には大量のバケツやホース、掃除道具が並び、水槽へ送るための海水が透明な管の中を流れている。


 まだオープン前の水族館ではあるが、そこにはすでに“生き物を育てる場所”としての空気が満ちていた。


「そうなんですね。」


 ウデフリツノザヤウミウシはきょろきょろと辺りを見回す。


 どこを見ても初めて見るものばかりだった。


 人間が忙しそうに動き回り、アクアリス達も手伝いをしている。


 その光景が、少しだけ眩しく見える。


「そうだ〜、君〜何食べるの〜」


「え?コケムシ、です。藻の仲間」


「藻か〜.....ちょっと待ってて〜」


 カブトガニはのそのそと去っていった。


 しばらく待っていると、丸いボールのようなものを両手で抱えて戻ってくる。


「これは?」


「ん〜?ウミウシ用餌ボール〜〜」


「餌ボール?」


「ウミウシ用餌ボール(通称コケムシボール)ウミウシ系のアクアリス用に作られた栄養の塊、ボールの種類で呼び名が変わる。これはウミウシ系アクアリスが食べれる餌ボールである。他に魚類ボール、プランクトンボールなどがある」


「ご飯をぎゅってしたものー?かな~」


 差し出されたボールを、ウデフリツノザヤウミウシはおそるおそる口にした。


 すると、ふわりと海藻の香りが広がる。


「な、なるほど、....あ、美味しい」


「でしょー?餌ボールはね~アクアリスの健康と栄養を考えて〜作られるんだよ〜」


「そうなんですね。なんだか、不思議です。」


 元の生き物の頃には、ただ海で自然に食べていたものが、こんな形になるなんて。


 人間達の工夫に、ウデフリツノザヤウミウシは感心していた。


「だよね〜、そ〜だ~、こっち来て〜」


「え?はい!」


 カブトガニはまた歩き始める。


 今度は明るい光が差し込む通路だった。


 そして扉を抜けた瞬間、ウデフリツノザヤウミウシの目がぱっと輝いた。


 サンゴ礁エリア。


 青い海水の中に、色鮮やかなサンゴが広がっている。


 赤、黄色、紫、緑。


 揺れる海藻と、小魚達。


 水面から差し込む光が反射し、まるで海の中に太陽があるようだった。


「わぁ〜、綺麗です〜」


「でしょ〜?」


「はい!」


 その時。


「あ~、カブトガニちゃん!、お隣の子ははじめだ〜!」


 元気な声が響いた。


 黄色と黒と白のグラデーションの髪をした少女が、水槽の縁からひょこっと顔を出している。


「こ、このアクアリスさんは、」


「チョウチョウオだよ~」


「チョウチョウオだよー!」


 少女はぴょんっと飛び降りると、その勢いのまま壁にごつんとぶつかった。


「いたぁ!」


「だ、大丈夫ですか!?」


「へーきへーき!」


「チョウチョウオ:「ニザダイ目 チョウチョウオ科 チョウチョウオ属 チョウチョウオ」模様は目を通る太い黒帯が一本と白い帯が特徴的で藻類やカイメンなどを食べ、水深1〜30mまでの岩礁やサンゴ礁域に生息し水温10どの低温にも耐える。チョウチョウオ科の中でも温帯域に生息。アクアリスのチョウチョウオは元気で活発でよく壁にぶつかるほど危なっかしい」


「ウデフリツノザヤウミウシです。」


「うんうん!よろしくね〜!」


 チョウチョウオはにこにこと笑いながら、ウデフリツノザヤウミウシの周りをくるくる回る。


「新しい子だ〜!かわいい〜!」


「え、えへへ....」


 尻尾のような触角がぱたぱたと揺れる。


「緊張してる〜?」


「す、少しだけ....」


「大丈夫だよ〜!ここ楽しいから!」


「ほんと〜に楽しいよ〜」


 カブトガニものんびり頷いた。


 すると、チョウチョウオが急に目を輝かせる。


「あ!そうだ!サンゴ礁エリア案内してあげる!」


「えっ?」


「いこいこ〜!」


 ぐいっと手を引かれ、ウデフリツノザヤウミウシは慌ててついていく。


「ここはね〜小さい魚さんがいっぱい来る予定なんだよ!」


「へぇ〜」


「あとね!サンゴも増えるんだって!」


 チョウチョウオは指を広げながら説明する。


 そのたびに髪がふわふわ揺れていた。


「人間さん達、毎日頑張ってるんだ〜。夜までお掃除したり、水合わせしたり」


「水合わせ?」


「海の水の温度とか〜塩分とか〜合わせること〜」


 カブトガニが後ろから補足する。


「生き物によって違うからね〜」


「なるほど....」


 ウデフリツノザヤウミウシは、水槽の中を見つめた。


 そこにはまだ空いている場所も多い。


 だけど、だからこそ。


 これからここがどんな場所になるのか、想像するだけでわくわくした。


「みんな、ここで暮らすんですね....」


「うん!」


 チョウチョウオは満面の笑みを浮かべる。


「いっぱいお友達できるよ!」


「友達....」


 その言葉に、ウデフリツノザヤウミウシは少し胸が温かくなる。


 遠い海から来た自分でも。


 ここなら、きっと。


 そう思えた。


 その時だった。


 館内放送が静かに鳴る。


『サンゴ礁エリア担当の皆さん、水温調整を開始します』


「あ、始まるみたい〜」


「見に行く〜?」


「み、見たいです!」


「決まりだね〜!」


 チョウチョウオはまた勢いよく走り出した。


 そして数歩でまた壁にぶつかった。


「いたぁ!」


「だ、大丈夫ですか!?」


「へーきへーき!」


 カブトガニはのんびり笑う。


「チョウチョウオちゃんは〜いつもこうなんだよ〜」


「えへへ〜!」


 元気いっぱいの笑い声が、サンゴ礁エリアに響いていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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