第23話 海を越えてきた海藻竜
ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。
「熱帯エリア」
熱帯エリアの通路を歩きながら、ミミックオクトパスはさっき聞いた言葉を何度も思い返していた。
「気づいたらなっているもの、か、....」
小さく呟くと、横を歩いていたモンハナシャコが笑った。
「なにを悩むことがある。」
オニイトマキエイも、のんびりと頷く。
「ですね、」
ミミックオクトパスは目をぱちぱちさせた。
「え?」
モンハナシャコは当然のように言う。
「アタイ達、もう友達だろ?」
「え!?ど、どうして!」
思わず声が裏返る。
モンハナシャコはきょとんとした。
「どうしてってそりゃあ」
オニイトマキエイがふわっと笑う。
「一緒にいて楽しければ、それはもう友達と言っていいと想います〜」
ミミックオクトパスは胸の奥が少し熱くなるのを感じた。
自分は臆病で、うまく話せなくて、逃げてばかりで。
それでも友達と言ってくれる存在がいる。
その事実が、なんだかくすぐったかった。
「みんな....ありがとう」
「いえいえ、」
「へへっ」
モンハナシャコは少し照れくさそうに頭をかいた。
そのまま三人は通路を進んでいく。
やがて壁面の色が少しずつ変わり始めた。緑色の照明が増え、水槽の中にも長い海藻がゆらゆらと揺れている。
モンハナシャコが前を指差した。
「お、ここから先は海藻エリアか」
「海藻エリア?、何がいるんですか?」
ミミックオクトパスが周囲を見回す。
オニイトマキエイは思い出すように空を見た。
「確か〜、タツノオトシゴ類や〜ウニ類、甲殻類や〜そこに住む魚を展示してあるはずです〜」
「へぇ~、いろいろいるんだね。」
「だな、」
三人は海藻エリアへと足を踏み入れた。
そこは他のエリアとは少し違っていた。
水槽の中では巨大なコンブや海藻が森のように揺れていて、照明もどこか落ち着いている。緑色の光が水面に反射し、まるで海の中の林のようだった。
ミミックオクトパスは水槽に近づく。
「おぉ~、これが、タツノオトシゴ、初めて見た」
小さな身体を縦にして泳ぐ姿は、本当に馬のような顔をしていた。
モンハナシャコは笑う。
「ははっ、魚に見えねぇよな」
オニイトマキエイがうんうんと頷いた。
「タツノオトシゴはー〜たしか〜、尻尾を海藻に巻き付けて〜ながされないようにする〜だった気がします〜、擬態する個体もいるとか〜」
その時だった。
「それは、わたくしのことですね。」
静かな声が聞こえた。
三人が振り向くと、そこには淡い緑色の髪を揺らす少女が立っていた。服は海藻のようにひらひらとしていて、立っているだけなのに周囲の景色へ溶け込んでいる。
モンハナシャコが軽く手を上げる。
「お?ここのアクアリスか?アタイはモンハナシャコだ」
「オニイトマキエイだよ〜」
「み、ミミックオクトパス、ですっ」
少女は丁寧にお辞儀した。
「わたくしは、リーフィーシードラゴン、と、申します。」
「リーフィーシードラゴン:「ヨウジウオ目 ヨウジウオ科 ヨウジウオ亜科 リーフィーシードラゴン属 リーフィーシードラゴン」体長は20〜40cmほどで全身に枝分かれした褐藻ににた突起がありこれを皮弁と言う、この突起は皮膚が変化したものである。海藻そっくりに擬態している。プランクトンなどを食べる。オーストラリアの南西部の浅い海にのみ分布する。この生物の住む海域は天敵が多いため海藻に紛れ生き残ったと思われる。アクアリスのリーフィーシードラゴンはオーストラリアの第二アクアリス水族館からやってきた種であり人間の勉強が好きであるが、ストレスに弱く、あまりはかどっていないようだ」
ミミックオクトパスは思わず見惚れていた。
ひらひらと揺れる装飾は、本当に海藻みたいで、少し目を離すと背景に紛れてしまいそうだった。
「きれい、ですね、」
「ありがとうございます。」
リーフィーシードラゴンは柔らかく微笑む。
オニイトマキエイが思い出したように言った。
「リーフィーシードラゴンちゃんって確か〜第二アクアリス水族館から来たんだよね〜」
「はい、わたくしはそこから来ましたよ」
「ってことは、長旅?」
ミミックオクトパスが驚いたように聞く。
リーフィーシードラゴンは少し懐かしそうに目を細めた。
「そうですね、でも、それも楽しかったですよ。ふふっ」
モンハナシャコが興味津々に身を乗り出す。
「どんなところなんだ?」
リーフィーシードラゴンは少し考えるように視線を上げた。
「そうですね。とっても暖かくて、あっちの皆さんも優しくて、とても素敵な場所でしたね。ここも、素敵ですが」
オニイトマキエイがゆっくり頷く。
「だよね〜」
海藻がゆらりと揺れる。
その中でリーフィーシードラゴンは静かに笑った。
「ふふっ、では、少しオーストラリアのことをお話しましょう」
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




