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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
ミミックオクトパスの章

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第22話 少しずつ増えていくもの



ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


「熱帯エリア」


熱帯エリアの通路には、以前よりもずっと多くの水音が響いていた。


大きな水槽の中を群れで泳ぐ魚たち。水面近くを反射する照明。循環装置の低い駆動音。準備中だった空間は少しずつ完成へ近づき、生き物たちの気配で満たされ始めている。


ミミックオクトパスはガラス越しに魚たちを眺めながら、小さく呟いた。


「.....このあたりも、だいぶ、生き物が増えてきましたね。」


モンハナシャコは腕を後ろで組みながら笑う。


「だな!」


オニイトマキエイもゆったりと頷いた。


「オープンが近づいている気がするよ〜、にぎやかって感じで」


ミミックオクトパスは通路を見回した。


前はもっと静かだった。今は違う。どこからか水の跳ねる音がして、誰かの笑い声が聞こえて、遠くでは飼育員たちが準備をしている。


「はいっ、前は静かでしたが、生きている音が聞こえてきます。」


「だな!」


モンハナシャコが勢いよく同意する。


すると、その直後。


「おやおや、」


「こんなところでお会いするとは」


後ろから重なるような声が聞こえた。


ミミックオクトパスは肩を震わせる。


「ヒィッ!?」


勢いよく振り返ると、そこには二人の少女が立っていた。


一人は鮮やかな赤橙色の髪を揺らし、もう一人は桃色と黄色が混ざる柔らかなグラデーションの髪をしている。


モンハナシャコは笑いながら手を振った。


「ははっ、大丈夫だよ。コイツラはキンギョハナダイとハナゴンベだ」


「キンギョハナダイです。」


「ハナゴンベです」


二人は綺麗にお辞儀をする。


「キンギョハナダイ:「ペルカ目 ハナダイ科 ハナダイ亜科 ナガハナダイ属 キンギョハナダイ」雌は鮮やかな赤橙色の体色で雄は赤紫色をしている。胸鱗に赤い斑点がある。尾鱗の上下と背鱗の第三棘が糸状に伸びる。ハナダイギンポと体色が似ており擬態していると思われる。岩礁やサンゴ礁に生息し大きな群れを作り暮らす。スズメダイ科と混じって泳ぐこともある。動物プランクトンを食べる。雌性先熟の雌雄同体であり、生まれたときは雌で成長すると雄になる。アクアリスとなったキンギョハナダイはハナゴンベのアクアリスといっしょにいることが多い、」


「ハナゴンベ:「ペルカ目 ハナダイ科 ハナダイ亜科 ハナゴンベ属 ハナゴンベ」体は桃色でやや黄色っぽい、ゴンベとついていますがハナダイ亜科の仲間、動物プランクトンを食べる。サンゴ礁域などに生息し昔はゴンベ科に分類されていた。アクアリスとなったハナゴンベはキンギョハナダイとともにいることが多い。」


ミミックオクトパスは慌てて頭を下げた。


「こ、こんにちはっ、ミミックオクトパスですっ!」


「オニイトマキエイだよ〜」


二人もそれぞれ軽く挨拶する。


モンハナシャコは二人を見比べて笑った。


「それにしてもお前ら、いつも一緒にいるな」


ハナゴンベは当然のように頷く。


「仲良しですから」


キンギョハナダイも微笑む。


「ですから、御三方はなにを?」


「なにを?」


ほとんど同時に言葉が重なり、ミミックオクトパスは少し驚いたように目をぱちぱちさせた。


モンハナシャコは気にせず答える。


「ん?探検だよ。」


オニイトマキエイが楽しそうに身を乗り出す。


「楽しぃ〜よ〜、一緒にやる〜?」


ハナゴンベは少し困ったように笑った。


「その誘いは嬉しいのですが、」


キンギョハナダイが続ける。


「ですが。館長に呼ばれておりますので。」


「ので、」


オニイトマキエイは残念そうに肩を落とした。


「そうか〜、それは残念だ〜」


「おう、また今度やろうぜ」


モンハナシャコが言うと、二人は同時に頷いた。


「もちろん」


その返事はぴったり重なっていて、まるで一つの声のようだった。


ミミックオクトパスはその様子を見つめていた。


自然で、当たり前みたいに息が合っている。


少しだけ羨ましいと思った。


だから気づけば、口が動いていた。


「....あ、あのっ!」


二人が振り返る。


「んー?」


ミミックオクトパスは胸の前で手をぎゅっと握った。


「わ、私、、ビビリで、上手く仲良くできなくて、どうすればいいですか、」


言い終えた瞬間、顔が熱くなる。


けれど二人は笑わなかった。


ハナゴンベは小さく首を傾げる。


「うーん、...私達は、」


キンギョハナダイが続ける。


「気づいたらなってたから」


「わかんない、」


ミミックオクトパスは少しだけ肩を落とした。


「そうですか、」


するとハナゴンベが優しく笑う。


「でも〜」


キンギョハナダイが静かに頷いた。


「仲良しは気づいたらなっているもの、」


ハナゴンベが目を細める。


「だから焦る必要は、」


二人の声が重なる。


「ない」


ミミックオクトパスは目を丸くした。


その言葉は、不思議と胸の奥にすっと入ってくる。


上手くやらなきゃいけないと思っていた。


怖がらないようにしなきゃと思っていた。


でも、今隣にはモンハナシャコがいて、オニイトマキエイがいて、こうして話せる相手も増えている。


気づかないうちに、少しずつ。


ミミックオクトパスは小さく笑った。


「......はいっ!」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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