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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
オトヒメエビの章

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第19話 もふもふと大きな背中


「ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。」


「半水生エリア ラッコ園」


水面には、ゆらゆらとラッコたちが浮かんでいた。


太陽の光を反射した水がきらきらと揺れ、穏やかな波音が広いラッコ園に響いている。


そんな中、オトヒメエビは目を輝かせながらホンソメワケベラを見上げていた。


「ホンソメワケベラはお掃除してたの?」


ホンソメワケベラは、水面にぷかりと浮かぶラッコを見ながら笑う。


「そうだよ、それと、ラッコ達の掃除もね」


「わぁ〜!」


オトヒメエビの瞳がさらにきらきらと輝いた。


ヒメタツも微笑みながら口を開く。


「ホンソメワケベラさんは、水の生き物が好きでお世話係を立候補したくらいよ」


「すごい!」


オトヒメエビは尊敬の眼差しを向ける。


するとホンソメワケベラは、少し照れたように頬をかいた。


「まぁ、掃除に夢中になりすぎて、ホオジロザメに丸呑みにされたこともあるけど、楽しいよ。それに、もふもふできる!」


「最後、欲望が....」


パシフィックシーネットルがぽつりと呟く。


「そ、そうね」


ヒメタツも苦笑した。


だが当の本人は気にした様子もなく、ラッコのお腹をもふもふ撫でている。


「ふふふ〜、最高〜」


「幸せそう.....」


パシフィックシーネットルが呟いたその時だった。


「いつも一人でしてるの?」


「ううん、今日来る当番の子達がアルビノのヒメウミガメのお世話に時間がかかってるみたいで、先に来たの」


「アルビノ?」


オトヒメエビが小首をかしげる。


ヒメタツはゆっくり説明した。


「メラニン色素が薄くて白くなって生まれてくる生物のことをアルビノと言うのよ、とっても珍しいんだから」


「へぇ~、あってみたい!」


するとその瞬間――


「じゃあ、連れてってあげるよ」


聞き慣れない声が後ろから響いた。


振り向くと、白と黒のグラデーションの髪をした少女が手を振っていた。


その隣には、ひときわ大きな体格の青灰色の髪の少女。


オトヒメエビは思わず目を丸くする。


「おぉぉ〜、おっきぃ〜!」


「え、えっと?」


大きな少女は少し困ったように笑った。


ヒメタツが紹介する。


「白いほうがアラスカラッコさん、おおきいほうが、オサガメさんよ」


アラスカラッコはにこっと笑った。


「こんにちは~!」


「アラスカラッコ:「ネコ目 イタチ科 ラッコ属 ラッコ亜種 アラスカラッコ」肉食で貝類や甲殻類、ウニなどを食べ魚類を食べることもある。毛皮のために乱獲され絶滅危惧種に指定されたが現在は保護され回復傾向にある。お腹を上に向け石で殻を砕いて食べる。現在日本では三重県でのみ見ることができ、再輸入は難しいため、今後、日本で生きた姿を見ることはできなくなるおそれがあります」


続いて、大柄な少女がぺこりと頭を下げた。


「オサガメです〜」


「オサガメ:「カメ目 潜頸亜目 ウミガメ上科 オサガメ科 オサガメ属 オサガメ」現生するカメ類の中で最大種であり全長2m超、体重300〜500kg(最大1トンクラス)に達する巨大なウミガメです。硬い甲羅を持たず黒いゴム状の皮膚で覆われている。1000m以上の深海まで潜水します。クラゲを食べます。喉の奥に無数の突起があり獲物を逃がしません亜寒帯近くまで回遊することもあります。混獲(マグロ延縄漁など)海洋プラスチックごみの誤食や産卵地の海岸破壊などにより激減している」


「こんにちは!」


オトヒメエビは元気いっぱいに手を振った。


パシフィックシーネットルも軽く会釈する。


「よろしく、」


ホンソメワケベラがぱたぱたと近づいた。


「おぉ~終わった〜?」


「はい、無事に終わりました、アルビノですので、大変でした〜」


オサガメはふぅっと息を吐く。


アラスカラッコも苦笑しながら頷いた。


「そうだね〜」


ヒメタツは少し安心したように胸を撫で下ろした。


「緊急な過渡が起こってなくて、良かった〜」


「うん、」


パシフィックシーネットルも静かに頷く。


どうやらアルビノ個体は体調管理が特に難しいらしい。


そんな空気も知らず、オトヒメエビは目を輝かせながらアラスカラッコへ詰め寄った。


「ねぇねぇ!話しよ!ラッコのこと教えて〜」


「いいでしょう!まずはですね〜」


アラスカラッコはどこか先生のような顔になる。


「ラッコは貝を割るために石を使うんです!」


「石!」


「そうそう〜。こうやってお腹に石を置いて〜」


アラスカラッコは仰向けになって、ラッコ達の真似をした。


「貝を〜、ガンッ!ガンッ!って!」


「わぁ〜!!」


オトヒメエビは大興奮で拍手する。


ヒメタツもくすりと笑った。


「可愛いですね」


「うん、」


パシフィックシーネットルも少しだけ表情を緩める。


すると水面でぷかぷか浮いていた本物のラッコが、石を抱えながら貝を叩き始めた。


コン、コン、と軽快な音。


「ほんとだーー!!」


オトヒメエビは目を丸くした。


「でしょ〜?」


アラスカラッコは誇らしげだ。


その横で、オサガメはのんびりと水に手を浸している。


「ラッコさん達は見ていて飽きません〜」


「オサガメさんは深海まで行けるんだよね?」


ヒメタツが尋ねる。


「はい〜、深いところまで潜れますよ〜。静かで暗くて、とても落ち着きます〜」


「深海......」


パシフィックシーネットルがぽつりと呟く。


深海組のアクアリス達のことを思い出したのかもしれない。


するとオトヒメエビが突然、ラッコのほうへ泳ぎ出した。


「あっ!もふもふしていい!?」


「え?」


アラスカラッコが止める前に、オトヒメエビはラッコのお腹へ顔を埋めた。


「わぁぁぁ〜〜〜!!ふわふわ〜!!」


「きゅぅ〜」


ラッコも気持ちよさそうに鳴く。


ホンソメワケベラは頷いた。


「うん、気持ちはわかる」


「共感してる....」


パシフィックシーネットルが呆れたように言う。


だがその表情は、どこか楽しそうだった。


ヒメタツも笑っている。


穏やかな水面。


ゆっくり流れる時間。


ラッコ達の鳴き声。


そして、楽しそうにはしゃぐアクアリス達。


まだオープン前の水族館。


けれどそこには、確かに温かな日常があった。


今日もまた、新しい出会いが生まれていく。


アクアリス水族館は、少しずつ、少しずつ賑やかになっていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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