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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
オトヒメエビの章

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第18話 海中トンネルのお散歩



 ここは、アクアリス達が暮らしている。

 アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


「あはははっ! こっちこっち〜!」


 オトヒメエビが楽しそうに廊下を駆けていく。

 赤白の髪を揺らしながら、まるで館内そのものが遊び場になったみたいに走り回っていた。


「……」


 その後ろを歩きながら、パシフィックシーネットルは小さく息を吐く。


 しかし嫌そうではない。

 むしろ、その無邪気さに少しだけ頬が緩んでいる。


「なんだか楽しくなってしまいました」


 ヒメタツがくすりと笑った。


「うん……」


 パシフィックシーネットルも静かに頷く。


 三人はそのまま、海中大トンネルエリアへ辿り着いた。


 薄暗い青色の光に包まれた巨大な通路。

 頭上を覆うアーチ状の水槽は、まだ完全には生き物が入っておらず、静かな海の景色だけが広がっている。


「ぉー……」


 オトヒメエビは目を丸くした。


「海中大トンネルですね」


 ヒメタツは見上げながら小さく呟く。


「お魚さん、全然いないよ?」


「ん、まだ届いてない。だから少ない」


 パシフィックシーネットルが説明する。


「そうなんだ〜」


 オトヒメエビは少し残念そうにしながらも、すぐにまた興味津々で周囲を見回し始めた。


「ここもいつか、にぎやかに……楽しみですね」


「うん」


 ヒメタツの言葉に、パシフィックシーネットルも頷く。


 まだ静かなトンネル。

 けれど、未来にはたくさんの魚達と、人間達の笑顔で満ちる場所になる。


 そんな光景を、三人はなんとなく思い浮かべていた。


「ねぇねぇ! どんな生き物来るの〜?」


 オトヒメエビがぴょこぴょこ跳ねながら聞く。


「沢山の種類ですから、どの種類かは……」


 ヒメタツは困ったように笑う。


「そうなんだ〜、ねぇ、ここのガラス、少し変だよ〜? 光ってる〜、それに、すり抜けるよ〜?」


 オトヒメエビが不思議そうに壁へ手を伸ばした。


 すると指先が、水面のようにゆらりと沈み込む。


「月海強化ガラスですね」


 ヒメタツが説明する。


「月のエネルギーを詰め込んだ強化ガラスです。すり抜けれるのは、私達がアクアリスだからですね。私たちも月のエネルギーから生まれたので、緊急時に出動できるよう、水槽のガラスは全てこれですよ」


「そうなんだ〜」


 オトヒメエビは感心したように目を輝かせた。


 そして次の瞬間。


「ねぇ! 泳いで行こ!」


「そうですね。たまには泳ぎたい気分です」


「うん、ボクも賛成だね」


 三人は顔を見合わせ、小さく笑う。


 そのまま海中大トンネルの月海強化ガラスをすり抜け、水の中へ飛び込んだ。


     ◇


 ひんやりした海水が全身を包み込む。


「あはははははっ、こっちこっち〜!」


 オトヒメエビは水中をくるくる回りながら泳いでいた。


 その動きは驚くほど軽やかで速い。


「泳ぎ、お上手ですね」


 ヒメタツが感心する。


「たしかに、エビのアクアリスはエビと違って泳がないから、もっと下手なのに」


 パシフィックシーネットルも不思議そうに目を細めた。


「ですよね。まぁ、気にしてもわかりません、行きましょう」


「うん」


 三人はゆっくりとトンネルの中を泳いでいく。


 水中から見る海中トンネルは、外から見る景色とはまた違っていた。

 光が水面から差し込み、ゆらゆらと揺れている。


「あはははっ」


 オトヒメエビは楽しそうに泳ぎ続ける。


 気づけば、かなり遠くまで来ていた。


「出動用水層管まできてしまいましたね」


 ヒメタツが周囲を見回す。


「……たしかこっちは」


 パシフィックシーネットルが思い出そうとしたその時だった。


「あ! 外〜! 明かり〜!」


 オトヒメエビが勢いよく先へ飛び出した。


     ◇


 半水生エリア――ラッコ園。

 海中側の水槽へと三人は出ていた。


「あれ〜、ここどこ〜?」


 オトヒメエビがきょろきょろ辺りを見回す。


「ここ、ラッコ園の水層」


「ラッコ園?」


「ラッコがたくさんいるエリアの水層ですね。ほら、上に」


 ヒメタツが指差した。


 三人が水面を見上げると、ぷかぷかと浮かぶ茶色い影が見える。


 ラッコ達だった。


 お腹の上に貝を乗せていたり、手を繋いで浮いていたり、思い思いにのんびりしている。


「ホントだ〜」


 オトヒメエビは目を輝かせた。


「上がろー」


「あ、ちょっと」


 パシフィックシーネットルが止めようとする。


「急にでてきてはいけませんよ、驚かせてしまいます」


「うん!……」


 オトヒメエビはちゃんと返事をしてから、そろ〜っと水面へ顔を出した。


     ◇


「わ〜、いっぱいラッコさんいる〜」


 水面から見えるラッコ達に、オトヒメエビは感動したような声を上げる。


 すると近くから、のんびりした声が聞こえた。


「正確には〜アラスカラッコですよ〜」


「ホンソメワケベラさん」


 ヒメタツが振り向く。


 そこには細身の少女が立っていた。

 青と黒のラインが入った髪を揺らしながら、にこにこと笑っている。


「こんにちは〜私、オトヒメエビ」


「パシフィックシーネットル」


「ホンソメワケベラと申します〜」


 ホンソメワケベラ――海の掃除屋として有名な魚のアクアリス。


「ホンソメワケベラ:『ベラ目 ベラ亜目 ベラ科 カンムリベラ亜科 ソメワケベラ属 ホンソメワケベラ』サンゴ礁域や岩礁などの周辺に生息し他の魚の体表についた寄生虫や口の中の食べかす、死んだ皮膚などを食べ掃除する『クリーナーフィッシュ』としてとても有名な小型のベラです。黒いラインに縦スジがある。ダンスのような独特の動きで近寄り自分が掃除屋だと、アピールします。これにとてもにた魚でニセクロスジギンポという魚がいてホンソメワケベラにふんして近づいて鱗などを食べてしまうがホンソメワケベラのダンスのような独特の動きは真似できないようだ。寝るときは粘液を出して膜を貼りその中で寝る。アクアリス化したこの個体は獣が好きで海獣などの海や川などで暮らす哺乳類の世話を申し出た』


「彼女は掃除の達人なのよ」


 ヒメタツが紹介する。


「私と同じだ!」


 オトヒメエビがぱっと笑顔になる。


「あぁ、そうか、どっちも、クリーナー(掃除屋)だったね」


「うん!」


 オトヒメエビは嬉しそうに何度も頷いた。


 ホンソメワケベラは少し困ったように笑う。


「私は、クリーナーフィッシュだけど、まぁいいか、」


 三人はくすくすと笑い合った。


 こうして、はじめましてとはじめましてが知り合いになっていく。


 そんな生まれたばかりの水族館では、毎日たくさんのアクアリスと人間が、オープンを夢見て頑張っている。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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