第12話「アマゾンから来た新しい仲間」
ここは、アクアリス達が暮らしているアクアリス水族館。
今日も今日とて平和です。
アクアリス水族館、搬入口。
大型トラックや活魚車が出入りするこの場所では、今日も新しい生き物たちを迎える準備が進められていた。
「.....飼育員さん、また届いたの?」
灰色の髪を揺らしながら、オオシャコガイが活魚車を見上げる。
「えぇ、オープンに向けてたくさんの生き物が来る予定です。」
飼育員は端末を確認しながら頷いた。
「ふーん、オオシャコガイはいる?」
「この活魚車には乗っていませんが、来る予定ですよ」
「.....ん、わかった、」
オオシャコガイは静かに頷いた。
その時だった。
「おやおや、今日も大量だね。」
後ろから落ち着いた声が聞こえる。
「マダコ、」
ルビー色の髪を揺らしながら現れたのは、知的な雰囲気を持つ少女だった。
「マダコちゃん、いらしてたんですね。いつも図書エリアにいるのに、」
「あぁ。たまには外に出歩かないとね、それに肩も凝るから」
そう言って軽く首を回す。
マダコ:「八腕目 無触毛亜目(マダコ亜目) マダコ科 マダコ属 マダコ」日本近海でポピュラーなタコの軟体動物です。全身は約60〜70cm、最大で1.3m、重さは10kgにも成長します。知恵が高く周囲に合わせて体色を変える能力を持ち、1〜2年の短い寿命で貝や甲殻類を食べて生活します。無脊椎動物の中で最も知能が高い部類に入り、学習能力や問題解決能力があり人間の3歳児ほどの知能があるとも
「ん、たしかに、」
オオシャコガイも少し納得したように頷く。
「今回はどこのエリアの動物かな、」
「アマゾンエリアの子たちですよ。」
「あぁ、最近整ったばかりの、あそこにも来るのか、楽しみだ」
「たしかに、......みんな馴染むといいね」
「えぇ、そうですね。」
搬入口には、少し湿った熱帯の空気が漂っていた。まだ完成したばかりのアマゾンエリアでは、大型淡水魚や熱帯生物を迎える準備が進んでいる。
その時だった。
「ふぅ、えっ〜と、......ん?....」
活魚車から荷物を確認していた業者が、不思議そうな顔をした。
次の瞬間。
「わぁー!!」
「うわぁぁぁああぁ!!!???」
業者が大声を上げて飛び退く。
「だ、大丈夫ですか!?....え!?」
飼育員も慌てて駆け寄った。
「これは驚いた、」
マダコが目を丸くする。
「活魚車の水槽から女の子.....アクアリス....」
オオシャコガイがぽつりと呟いた。
水槽の縁から、赤と黒のグラデーションの髪を持つ少女が勢いよく飛び出していた。
「あははははっ!!!ここが目的地〜?」
元気いっぱいだった。
「な、なんで、発進する前に確認したときにはいなかったのに、」
業者は混乱している。
「ふむ、」
マダコは静かに活魚車の中を確認した。
しばらくして、小さな装置を拾い上げる。
「あ、」
「なにかわかった?」
「これだよ」
「月光灯?.....あ!そっか、」
飼育員が納得したように声を上げる。
「そ、それは発進する前に新人が失くしたものです。まさか、落ちたときにスイッチがオンになって、その光を浴びた何かの生き物が、アクアリスに、....たしかその子がでてきたのはピラルクーを数匹入れていた水槽......はっ!?も、申し訳ありません!運搬中に二匹の内一匹がアクアリスになってしまうとは」
業者は真っ青になって頭を下げた。
すると、奥から落ち着いた声が聞こえる。
「いえ、問題ないわ」
「館長、いいんですか?展示する数が....二匹から一匹に」
「問題ないわよ。寿命が来て別れるよりマシだわ......」
館長は優しく微笑んだ。
オオシャコガイは、その言葉を静かに聞いていた。
「....」
「たしかに、月光濃度が高いほどアクアリスは元の生き物には戻らないし、滅多なことがない限り月光濃度が下がることはないからね。」
マダコが補足する。
「ねぇ、ピラルクーのアクアリス....」
「うん!あーしはピラルクー!」
少女は元気よく胸を張った。
ピラルクー:「アロワナ目 アロワナ科 ヘテロティス亜科 アラパイマ属 ピラルクー」南米アマゾン川流域に生息する世界最大級の淡水魚で生きた化石とも呼ばれる古代魚です。全長3〜4m、体重200kg以上に成長し、うきぶくろを用いた空気呼吸を行うため定期的に水面へ上がります。全身が硬い鱗に覆われ槍で突いても跳ね返されるほど頑丈。肉食性で小魚などを食べ、流れの穏やかな河川や湖や沼に生息する。
「ねぇ!ここ何〜?」
「ここは世界に三つあるアクアリス水族館。まだオープンしてないけど、」
「水族館?アクアリス?」
「あぁ。アクアリスとは、月光の光を浴びた川や海などの生き物が人型になる現象だよ。そして水族館とは、魚や海鳥を展示してお客さんに見てもらう施設さ」
マダコは落ち着いた口調で説明する。
「へぇー!楽しそう!私もなにかやってみたい!」
ピラルクーは目を輝かせた。
その様子に、周囲の空気も少し明るくなる。
「あぁ、今はまだ自由だし、好きなことをやるといい」
「わーい!」
ピラルクーは元気いっぱいに飛び跳ねた。
そのたびに、搬入口に置かれたバケツの水が少し揺れる。
「楽しそうですね、館長、」
「そうね。あ、ここまでの運転、お疲れ様でした。」
「い、いえ、こちらこそです。」
業者はほっとしたように頭を下げた。
搬入口の向こうでは、新しい設備の工事音が聞こえる。
少しずつ形になっていく水族館。
そこへ、新しい命と仲間たちが集まってくる。
「.......ん、.......オープン、楽しみ、」
オオシャコガイは小さく呟いた。
その視線の先では、ピラルクーが元気よく館内へ走っていく。
「わぁー!広ーい!!」
そんな声が、今日もアクアリス水族館に響いていた。
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