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15話 「俺の背中は任せた、アンジュ」

 まあ、そんな俺のドン引きは置いておいて。聖女が王子に対して不義理を働いているなんて、今の俺の立場で言っても誰も信じてくれないだろう。

 だから、俺は話を本筋に戻して。


「なるほど、トイフェルにアンジュを止める力はない……あれそれって……」


 俺は言葉を区切って自分の中で再度確認をする。だよな?そういうことだよな?


「それクロイア殿下、失政なんじゃ……」

「しっ、そんなこと言ってはいけません!シェナ!……あの、イデーア侯爵令嬢……」

「私はなにも聞いていませんので、ご安心ください」


 アンジュの微笑みに親父の顔が上がらなくなる。だが、その上でアンジュは話を続けるのだ。


「でも、シェナ様の言っていることは正しいです。国家を守る盾として私との縁は切らないでおく方が正解です。ですが……」

「あんな公の場でイデーア侯爵令嬢を辱めるためだけに下げ渡すと言ってしまった以上、やっぱりなし、とは言えないのでしょう……」

「そして———」


 アンジュが口を開く。


「加えて、シェナ様と私に国家転覆の罪を着せて罪人にすることによって私を盾として再度扱うつもりなのでしょう」


 うわ、うわ、うわああ……王族腹黒ッ。え、しかもそれって……。


「それ、俺死罪だよな?」


 アンジュがこくり、と頷く。わ、わあ、うわあああああああああ。


「俺今不敬罪に問われる言葉が出そう」

「辞めてくださいます?これ以上罪を増やすのは」

「シェナ、黙りなさい」


 親父とアンジュに諭され、俺は頭を押さえる。流石に、こんなにピンチではいつものカッコつけもできたものではない。


「これ俺がほぼ負けるのが確定してるってことだよな……?でも、それならなんで王国警備隊がウチに来ないんだ?」


 俺の疑問に答えたのはアンジュだった。


「仮にも爵位を預かるもの。そう簡単に捕縛はできません。大方、数日後に糾問会が開かれるはずです。その場で無罪を勝ち取るしか生き残る方法はないでしょう。……ですよね?ラティオ男爵」


 アンジュが親父を見れば、親父は深く頷いた。どれぐらい深いかってその眉間に刻まれた皺ぐらい深い。


「そうです。3日後、王城に出頭するように言われています」

「つまり、3日の間に俺は俺が無罪たる証拠を集めなければいけない、と……」


 俺の喉から盛大なため息が零れ出る。アンジュを手に入れられて、仲良くなれてウキウキしてたらこれだよ、人生上手くいかねーな!


「だけど、やるしかねーな……」


 俺がアンジュを幸せにするため。そのためにこのぐらいの火の粉は跳ねのけなければいけない。俺が軽く息を吐き出せば、アンジュの洋扇が開く音。


「そう、やるしかありません」


 その口ぶりはまるで手伝ってくれるような口ぶりで。そんなアンジュを呆然と見てしまう。


「シェナ様の無罪、勝ち取りましょう」

「アンジュ……手伝ってくれるのか?」


 そんな俺の不思議そうな視線を受けて、アンジュが目を見開く。そして、微笑んだ。


「少なくともシェナ様は国家転覆なんて目論む人間ではないことは分かっています。加えて、国家転覆罪が判決された場合、使用人、家族もみな斬首に処されるでしょう」


 アンジュが悲し気に目を伏せる。


「私はこの家の人間がそんな目に合うのを見たくありません。……だから、シェナ様の無罪を証明して見せます」


 ああ、アンジュの中でラティオの人間はそんなにも大事な存在になっていたのか。俺の胸はその言葉でいっぱいになる。アンジュが守ってもいいと思えるほど、大事な存在になっていたのか、と。

 こんな状況じゃなかったら踊って喜んでいたかもしれない。だが、踊り喜ぶのはこの場面を超えてからだろう。

 俺はアンジュに右手を差し出した。


「俺の背中は任せた、アンジュ」


 そんな右手にアンジュの白く細い手が合わせられる。


「ええ、……しばらくのお礼に絶対に無罪を捧げてみせます」



 そこから、アンジュはしばらくラティオの家の書庫に潜った。親父はと言えば、ラティオ領の本邸の人間にもこのこと伝えねばいけない、と文を書くために書斎に行った。

 俺ができることはなんだろう。そう考えた俺は俺の書いた論文を再度読む。我ながら完璧な論文で……有体に言えば、この世界にはオーバーテクノロジー過ぎてどれもこれも軍事転用は悲しいことに可能だった。


「ボタンを押せばそこに着地する鳥の玩具……顔を見分けて友達になってくれる熊さん……」


 悲しいな、俺はこれらで子供たちを笑顔にして欲しかった。でも、実際にこの論文が褒められた理由は国が強くなるためで。

 俺はそんなの絶対認めたくなくて、俺の作るものの軍事転用は認めない、とまで宣言したのに……それが種火になってこんなことになるなんて。


「作らない方がよかったのかな」


 いや、でも、この玩具で実際に笑顔になってくれる子供たちは居たし、作ったことはきっと間違いではないのだろう。

 ただ、それを正しく使おうとしない大人が居ただけで。

 俺は再度ため息をついて、論文の原本をしっかり纏める。王宮に提出した中身が改ざんされている可能性があるからだ。

 だから、身を護るため、俺はしっかりと原本を———。

 まあ、そんな俺のドン引きは置いておいて。聖女が王子に対して不義理を働いているなんて、今の俺の立場で言っても誰も信じてくれないだろう。

 だから、俺は話を本筋に戻して。


「なるほど、トイフェルにアンジュを止める力はない……あれそれって……」


 俺は言葉を区切って自分の中で再度確認をする。だよな?そういうことだよな?


「それクロイア殿下、失政なんじゃ……」

「しっ、そんなこと言ってはいけません!シェナ!……あの、イデーア侯爵令嬢……」

「私はなにも聞いていませんので、ご安心ください」


 アンジュの微笑みに親父の顔が上がらなくなる。だが、その上でアンジュは話を続けるのだ。


「でも、シェナ様の言っていることは正しいです。国家を守る盾として私との縁は切らないでおく方が正解です。ですが……」

「あんな公の場でイデーア侯爵令嬢を辱めるためだけに下げ渡すと言ってしまった以上、やっぱりなし、とは言えないのでしょう……」

「そして———」


 アンジュが口を開く。


「加えて、シェナ様と私に国家転覆の罪を着せて罪人にすることによって私を盾として再度扱うつもりなのでしょう」


 うわ、うわ、うわああ……王族腹黒ッ。え、しかもそれって……。


「それ、俺死罪だよな?」


 アンジュがこくり、と頷く。わ、わあ、うわあああああああああ。


「俺今不敬罪に問われる言葉が出そう」

「辞めてくださいます?これ以上罪を増やすのは」

「シェナ、黙りなさい」


 親父とアンジュに諭され、俺は頭を押さえる。流石に、こんなにピンチではいつものカッコつけもできたものではない。


「これ俺がほぼ負けるのが確定してるってことだよな……?でも、それならなんで王国警備隊がウチに来ないんだ?」


 俺の疑問に答えたのはアンジュだった。


「仮にも爵位を預かるもの。そう簡単に捕縛はできません。大方、数日後に糾問会が開かれるはずです。その場で無罪を勝ち取るしか生き残る方法はないでしょう。……ですよね?ラティオ男爵」


 アンジュが親父を見れば、親父は深く頷いた。どれぐらい深いかってその眉間に刻まれた皺ぐらい深い。


「そうです。3日後、王城に出頭するように言われています」

「つまり、3日の間に俺は俺が無罪たる証拠を集めなければいけない、と……」


 俺の喉から盛大なため息が零れ出る。アンジュを手に入れられて、仲良くなれてウキウキしてたらこれだよ、人生上手くいかねーな!


「だけど、やるしかねーな……」


 俺がアンジュを幸せにするため。そのためにこのぐらいの火の粉は跳ねのけなければいけない。俺が軽く息を吐き出せば、アンジュの洋扇が開く音。


「そう、やるしかありません」


 その口ぶりはまるで手伝ってくれるような口ぶりで。そんなアンジュを呆然と見てしまう。


「シェナ様の無罪、勝ち取りましょう」

「アンジュ……手伝ってくれるのか?」


 そんな俺の不思議そうな視線を受けて、アンジュが目を見開く。そして、微笑んだ。


「少なくともシェナ様は国家転覆なんて目論む人間ではないことは分かっています。加えて、国家転覆罪が判決された場合、使用人、家族もみな斬首に処されるでしょう」


 アンジュが悲し気に目を伏せる。


「私はこの家の人間がそんな目に合うのを見たくありません。……だから、シェナ様の無罪を証明して見せます」


 ああ、アンジュの中でラティオの人間はそんなにも大事な存在になっていたのか。俺の胸はその言葉でいっぱいになる。アンジュが守ってもいいと思えるほど、大事な存在になっていたのか、と。

 こんな状況じゃなかったら踊って喜んでいたかもしれない。だが、踊り喜ぶのはこの場面を超えてからだろう。

 俺はアンジュに右手を差し出した。


「俺の背中は任せた、アンジュ」


 そんな右手にアンジュの白く細い手が合わせられる。


「ええ、……しばらくのお礼に絶対に無罪を捧げてみせます」



 そこから、アンジュはしばらくラティオの家の書庫に潜った。親父はと言えば、ラティオ領の本邸の人間にもこのこと伝えねばいけない、と文を書くために書斎に行った。

 俺ができることはなんだろう。そう考えた俺は俺の書いた論文を再度読む。我ながら完璧な論文で……有体に言えば、この世界にはオーバーテクノロジー過ぎてどれもこれも軍事転用は悲しいことに可能だった。


「ボタンを押せばそこに着地する鳥の玩具……顔を見分けて友達になってくれる熊さん……」


 悲しいな、俺はこれらで子供たちを笑顔にして欲しかった。でも、実際にこの論文が褒められた理由は国が強くなるためで。

 俺はそんなの絶対認めたくなくて、俺の作るものの軍事転用は認めない、とまで宣言したのに……それが種火になってこんなことになるなんて。


「作らない方がよかったのかな」


 いや、でも、この玩具で実際に笑顔になってくれる子供たちは居たし、作ったことはきっと間違いではないのだろう。

 ただ、それを正しく使おうとしない大人が居ただけで。

 俺は再度ため息をついて、論文の原本をしっかり纏める。王宮に提出した中身が改ざんされている可能性があるからだ。

 だから、身を護るため、俺はしっかりと原本を———。


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