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14話 (……マジかよ。逆ハーレムやってんの確定じゃん)

 ……ホワイ?

 俺の怒りも、涙も、全てが引っ込んだ俺の心からの声だった。


「……ホワイ?」

「またッ……シェナ、貴方特有の言語体系は引っ込めなさい。で、まずは聞きます。貴方はやろうとしたのですか?」


 え?ええ……えええええ?


「な、なにを……?」

「パラミシアの転覆を」


 俺は親父殿の言葉に盛大に首を横に振る。してない、ないない、していない。ええ!?俺がパラミシアを転覆させる理由なんてないよぉ!?

 そして、同時にアンジュもまた唐突な展開に驚き、固まっていた。いやまあ、そうなるそうなる。


「では、シェナはパラミシアの転覆を目論んでなどは居ない、そう、俺は認識いたしますが?」


 俺は次は肯定の意で首を縦にぶんぶんと振る。やってないし、目論んでなんかいないからね!?


「ふう……」


 親父はそれを聞いて、軽く息を吐く。そして、額を押さえてからアンジュに向きなおるのだ。


「イデーア侯爵令嬢」

「はい……?」

「メイドたちから聞きました、イデーアの家に帰ろうとしていた、と」

「はい、流石に婚姻前の男女がそう長く一緒に居る訳にもいきませんので……」

「申し訳ありません。それは今朝を持って叶わなくなりました」


 親父のその言葉にアンジュは静かに唇に指をあてて、一瞬考え、顔を上げる。


「被疑者を逃がさないため、ですね。この家から馬車等の一切の出入りを禁じられたのでしょう」

「はい、ですので……」

「しばらく、またご厄介になってもよろしいでしょうか?」


 アンジュのその切り返しは未だ親しくもなければ爵位の下の親父にとってしてみればありがたかっただろう。


「申し訳ございません……家の不祥事に巻き込む形になってしまって」

「いえ……ただ、1点よろしいでしょうか?」

「はい」


 アンジュは静かにその事実を確認するように言う。


「イデーアの家はなにも言っていないのですね」


 それはアンジュが切り捨てられたかどうかの確認だった。そして、親父もそのことに気づかないほど馬鹿ではない。親父は一瞬息を呑んで、そして、握りこぶしを膝の上に作って震えた声で言うのだ。


「はい……」


 此処でちょっと親父の話。親父は典型的な人の親、というか。とても義理堅い人だ。だから、国家転覆罪の疑惑をかけられた息子を見捨てられなかったのだろうし……親が子を、お義父様がアンジュを見捨てるという事実に多分、少し信じられないものがあったのだろう。

 つまり、かなり現代にも通用する倫理観をお持ちなのがうちの親父……ハミット・ラティオなのだ。

 そんな親父からすれば、アンジュの問いはなかなかに堪えただろう。

 そうして、親父が俯く中、アンジュは少し寂しそうな笑みを浮かべて言うのだ。


「では、1つだけお願いしてもよろしいでしょうか?」


 そのアンジュの言葉に親父も、俺もアンジュを見る。


「状況をお聞かせ願っても?数日間の付き合いではございますが……シェナ様はそんなこと絶対に望まないと断言できますので」


 そう言うアンジュの瞳はどこか光り輝いていたのを覚えている。



 と言うことで。俺たちはメイドにお茶を……今度は紅茶を淹れなおしてもらい、全員着席して会話をする。


「では……いえ、私が取り仕切るのもおかしな話ですね。ラティオ男爵にこの場の主導権をお渡ししても?」

「ありがとうございます。では、私主導の元話させていただきます」


 お、親父が「私」モードになった。そう、公務のときと普段とで親父は一人称を使い分けるが……今が公務、というかしっかりしなければいけない場判定になったのだろう。


「まず、大前提シェナにかけられている罪状は国家転覆罪。その大まかな理由なのですが……シェナの研究などは知っていますか?」


 親父からアンジュに話が振られれば、アンジュはこくり、と頷いた。


「大まかには玩具を作っていることは存じ上げています。他にもラティオ家の共同著として出ていた魔石の研究についてもその大部分をシェナ様が担っていたとか」

「ええ、合っています。では、それらが軍事転用可能と判断されたことは?」

「……存じています」


 すると、親父は人差し指を立てて言うのだ。


「まず、1点。これらを国に明け渡さなかった点。これはシェナがこの国を転覆させるために、明け渡さなかった、そう判断されました」

「は?いや、ちょっと待て」


 俺は思わず声を上げる。


「俺は玩具を作っただけで、人を殺す道具を作った訳じゃない。実際にそのことを示すために、署名までしただろ?」


 署名、これは王族や貴族間で用いられる絶対に破らないという誓いを家紋に立てるための署名だ。

 すると、アンジュが声を上げる。


「……この国を転覆させる気があるのなら、そんな紙キレ1枚に効力はない、と判断したのでしょうね……」


 うぇー、あの署名ガチガチに作られてるせいで何日もしっかり読み込んで署名したって言うのに向こう都合でそんな判断されるの?マジ?


「加えて、イデーア侯爵令嬢との婚約が今回取りざたにされている」

「え」

「まあ」


 え、なんで。アンジュに国家転覆要素……そこまで考えて思い至る。


「ちょっと待て。つまりはこういうことか?俺がアンジュをあんな大立ち回りで手に入れようとしたのは闇属性の魔法と言う国を傾かせられる魔法の担い手を欲していたから……そう思われてるってことか?」


 俺の言葉に親父が軽く息を吐く。


「そう。あの時は殿下はその……」

「私に気を遣わないで大丈夫ですよ」

「殿下はイデーア侯爵令嬢を勢いで下げ渡した。あのような公衆の面前で言った以上、その言葉は取り消せません。ですが……その後」


 それはそうだ。どのような形であれ、公衆の面前で下げ渡した。最低のクズ野郎殿下なのだが。……その後?


「王宮内であの発明王のシェナとこの国唯一の闇属性の使い手のアンジュが手を組んだら、この国を転覆させることも可能なのではないか、と囁かれ始めました」


 あ、あ、あ~~~~その称号まだ生きてるんだ!発明王、それは誰が言ったか俺をワッショイするための恥ずかしい称号。俺はそんな称号が出てきたことにむず痒さを感じながら。


「いやいや、そこも待て。闇属性魔法が国を傾かせられるのはその担い手が1人しかいなかった場合だろ?闇属性魔法をいなせる聖女が王族側には居るだろ?だったらその論理は成り立たないんじゃ……」


 すると、アンジュの凛とした声が響いた。


「いえ、……トイフェルに私はいなせません」


 ……マジ?俺はその言葉をぐっ、と飲み込んでアンジュを見る。


「そもそもの年季が違うという話です。幼いころから今に渡るまでずっと鍛錬を繰り返してきた私と、ついこの間ぽっと光属性の魔法を使い始めたトイフェルでは、お話になりません」


 その論理は聞けば納得するものだった。いや、でも、だ。聖女だって何もしていない訳ではないし、最終的には各ルートのボスを倒すまでいた———そこまで考えて俺は気づく。

 アナセカ原作では聖女が光属性の魔法に目覚めたのは原作スタートの1年前。原作スタート時には☆1魔法をやっと使えた程度。

 そこから共通ルート、個別ルートを経て光属性+攻略キャラの属性が使えるようになる。

 今は個別ルートの序盤、と言うことはせいぜい使えて☆3魔法。……そりゃ敵わんわ。


「加えて言うなら、トイフェルは何故か光属性に加えて4属性が使えます。……そのことが分かって、光属性の鍛錬だけではなくなったのです」


 え?俺は今耳を疑った。「光属性に加えて4属性が使えます」、これってつまり。


(……マジかよ。逆ハーレムやってんの確定じゃん)


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