未定
刃物工場に半導体工場、ドラッグストアと秋頃から入っていた現場は次々と終り、今日はマンションの現場に来ている。
千香良は高城と前倒しのクリスマス以降から仕事への意識を変えたが、現場での毎日は相変わらずモルタルの下地塗りが多い。
『プラスター工房ムラオカ』は野丁場が多いので致し方ないのだが、千香良はモチベーションを維持するのに苦労していた。
そのせいか、親方にも龍太にも、まだ2級左官技能試験を受ける、と言えていない。
けれども、今日は龍太が現場に来ているので、職人だけの時に比べて現場が"ピリッ"としていて心地よい。
しかも、外階段のモルタル仕上げを千香良が1人でヤレ、と言われた。
常駐する管理人が1階のベランダから外に出る為の階段で、3段だけだが、当然、鏝を持つ手も引き締まる。
「外階段が爆ぜた!」
すると、芝生地の前庭で電話していた龍太が大きな声を出した。
丁度、目の前で作業をしていた千香良も手を止めて狼狽える。
階段が爆ぜる、など千香良でも判る大惨事だ。
どこの現場か気になって仕方がない。
「千香良!小学校の外階段は、お前も行ったよな。外階段の最終日の仕事内容は覚えているか?」
千香良は暫く考えてから頷くと、千香良なりに、その日の出来事を思い出していた。
あの日の現場監督は星谷とは違う方の丁稚で……館が『俺たちは言われた所を塗るだけだ』と言っていたような……)
「兎に角、俺は『青興建設』に行ってくるから、話しは帰ってきてから聞かさせてくれ。……で、ノースリップ鏝の使い方は大丈夫だな」
「はい。大丈夫です」
基本に戻った千香良は返事も"キリッ"としてみせる。
特に緊急事態に向かう龍太にダレた、態度は出来ない。
久しぶりに龍太の険しい顔を見た千香良は、改めて建設現場を仕切る仕事の重大さを考えていた。
以前、千香良が見つけたレベリングの墨出しの間違えも然り。
丁稚と言われるのは気構えに違いのように思えた。
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