技能五輪 8
千香良は高城に驚いた顔の満足の笑みを溢すと、2個目の牡丹海老を頬張った。
ピッチを速めたお陰か、珍しく酔いが回っている。
高城に宣言したのも酒の勢いだ。
「そうか……親方も、龍太も喜びと思うよ」
千香良は『プラスター工房ムラオカ』で左官職人の修業を3年間してきた。
プライドや向上心が備わっていて当たり前だ。
高城もあれこれと言及はしない。
速やかに体勢を立て直すと食事を進めるだけだ。
「そうかな……」
「千香ちゃんが、その気になるのを待っていたんだと思うよ」
「だよね。ちょっと反省することもあるし……」
「そうか……」
「頑張るね」
「先ずは、2級左官技能士試験だな」
「うん」
ほろ酔いの千香良は頬が朱色に染まり、色っぽい。
「お待たせしました」
すると若い仲居が追加の酒を持ってきた。
けれども高城は若い仲居を、もう気に留めない。
大人の社交辞令は罪作りだ。
若い仲居は口惜しそうに千香良を睥睨してから、出ていった。
千香良は少し可哀想な気がしてしまう。
けれども、高城と一緒の食事は誰にも邪魔されたくない。
千香良は数の子、穴子、卵焼き、鉄火と、残りの寿司を美味しく頂いていく。
すると、頃合いを見計らって、女将がお茶を持ってきた。
やはり高城は常連らしい。
「綺麗なお嬢さんですね」
千香良は女将に褒められて嬉しい、恥ずかし。
けれども、眠たい。
かろうじて起きている。
「えぇ、本人は自覚していませんが……タクシーを、呼んでください」
そして、タクシーに乗車すると同時に高城に凭れて眠っている。
「技能五輪か……」
高城は優しく千香良の短い髪を撫でていた。
読んで下さってありがとうございます。
相変わらずの遅筆・・・
すいません。




