技能五輪 7
そして、冷酒を持って戻った若い仲居は、高城の猪口が空になっているのを目聡く見付けて、酌をしている。
「よく気が利くね。一段と酒が美味くなるよ」
嘘、ばっかり。
高城は人に酌をされるのが嫌いだ。
社交辞令と判っていても、鼻の下が伸びているようで面白くない。
しかも、酒談義まで始めている。
(今日は少し早めのクリスマスなのに……)
千香良は苛々してきた。
「流石だよ。何を聞いても的確に答えてくれる。それに、まだ若くて、綺麗だ。ねぇ、千香ちゃん」
千香良は、無理矢理、笑顔を作ると頷いた。
高城が若い仲居をベタ褒めするのが、本当に面白くない。
始めての感情を持て余して、冷酒を飲むペースが早くなっている。
折角、違う景色のグラスに代っているのに目で楽しむ、ゆとりもない。
「最近は冷で飲まれるお客様が多いので、お燗をお薦め出来るのは『加賀鳶』か『三十六人集』の純米酒を40度ぐらいで、お呑みになるか……どちらかですが、いかがされますか?」
「じゃあ、飲み慣れている『加賀鳶』で」
「はい、畏まりました」
(やっと、帰った……)
千香良は、ぶー垂れるわけにもいかずに冷酒をグビッ、といくと、牡丹海老を頬張った。
(甘っ!)
咀嚼している間に口の中に旨味が広がる。
そして次は鯖。
高城は黙々と寿司を食べる千香良に目を細くする。
「はい、海老と穴子。好きだろ」
千香良の顔が再び、歪んだ。
自律神経がイカれたみたいで、感情のコントロールが効かない。
千香良は元来、内向的で人見知りだ。
だからこそ、内弁慶も否めない。
今まで露見しなかったのは、高城と一緒にいて不愉快に感じるシチュエーションに遭遇していないから。
高城の前では、いつだって、思いっ切り甘えん坊で我が儘な気持ちになっている。
若い仲居に高城を盗られたようで、ただ、ただ悔しい。
千香良は子供の頃から、競い合うことが嫌いだ。
自分が折れて済むことなら我慢も出来た。
けれども、時として人の気持ちは、見ず知らずの誰かに揺り動かされる。
「技能五輪、出る」
高城は千香良の急な心境の変化に驚くあまりに、鯖の握りを摘まんだまま、停止していた。
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稚筆で御免なさい(゜゜)(。。)ペコッ




