技能五輪 3
千香良は美々を親友だと思っている。
それなのに……
少し淋しい。
「ずーっと、熱心に陸上をしていたって聞いているから、根性はあるだろうな……」
それよりも、高城の口から美々の話が出たことが何故か面白くない。
子供じみた独占欲に、千香良は下唇を突き出して、ふて腐れた。
「先週、会ったのに、教えてくれなかった……友達なのに……」
千香良は、意図して美々が薄情に聞こえるように言い回す。
「そりゃ~続けていく自信が着くまで、黙っているだろう」
高城は千香良の言いように、少しだけ眉根を寄せたが、直ぐに口元を綻ばせた。
可愛い、嫉妬に気が付いたようだ。
「そんな、もんなの?」
「……と、思うぞ。ましてや、千香ちゃんは一人前の職人だろ」
千香良は、一人前、と言われて、はにかんでいる。
高城は千香良の扱いが上手い。
秒で機嫌を直してしまった。
「そ・う・だ!今年もスリッパだよ」
思い立った千香良は、自らラッピングしたクリスマスプレゼントをテーブル越しに掲げた。
深いグリー包装紙で包み、結んだゴールドのリボンには木の実のドライフラワーは挟んである。
「おっ!毎年、楽しみなんだ。じゃあ、俺からも……今年はピアスにしたよ。俺は家まで楽しみは取って置くけど……千香ちゃんは開けてみて」
一昨年は、プチネックレス。
去年は、成人のお祝いも兼ねて、腕時計。
勿論、どちらも身につけてきた。
高城は、千香良の、お目付役的存在だが、世間から見れば、恋人同士にしか見えない。
分かっていないのは、千香良だけだ。
それに引き換え、高城は、千香良を疑似恋人として扱い、楽しんでいる。
見様によっては、スケベな中年だ。
「可愛い……」
小さなグレーの箱には『BENE』
20代、30代の女性に人気のブランドだ。
ゴールドの2つのフープを重ね着けしたようなハグピアスは、ベリーショートの千香良に、よく似合うだろう。
「失礼いします」
そして、千香良が、開けたプレゼントを紙袋に戻していると、冷酒が運ばれてきた。
高城には白粒鉄仙千香良には金花詰。
九谷焼の冷酒グラスは凄くモダンで、それだけで千香良は嬉しくなってしまう。
そして、アテには、イカの酒盗焼きと、鮟肝が、ちょっぴり。
「では、少し早めのクリスマスに乾杯」
高城と千香良は、お約束の唱和。
軽くグラスを合わせると、微笑みを交しながら、グラスを口に運んだ。
「美味しい」
「それは、良かった」
千香良は1度だけ高城に濃厚なキスをされた、ことがある。
処女を捧げようと思った時もあった。
なのに、どうしても恋愛対象としては除外。
チラッと、脳裏を掠め途端に思考が止ってしまうのだ。
だからなのか……
千香良は高城を相手に色っぽい話がしづらい。
会話は専ら、仕事の相談か、龍太の話から入る。
「そうだ……青協建設の新藤さん、知っている?」
「新藤さん、って美魔女の男の?今度、俺の設計した現場の監督をするよ」
高城は面白い言い方をする。
「うん、残念なイケおじ。じゃあ、その下の星谷さんは?」
「俺の高校の後輩らしいね」
思わず星谷の名前を出してしまう千香良だった……
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次話はゴールデンウィーク開け、火曜日です。




