汚い食堂 2
千香良に限らず、人は日常の大部分は直ぐに忘れてしまう。
一晩寝ても覚えているなんて余程の事だ。
それが、もう2日。
千香良は、星谷からのお誘いへの対応を、思い出しては検討している。
(昨日、私って何してたっけ?)
正解は日長、ぼんやり、だら、だらと過ごし、ほんの5分足らずの星谷との逢瀬を反芻していた。
完全に恋する乙女の状態だったような……
そして、今はデパートの入り口前で人間ウォッチング。
AM10時の開店を待つ列に並ぶ千香良は暫し、星谷を忘れている。
(日曜日に女の子同士って………皆、結構、彼氏とかいないんだな~)
一昨日にも増して、駅は人、人、人で賑わっているが、同じ年頃のグループが、やはり目に付く。
皆、それぞれにお洒落をしている。
(そうだ……夕方からは……ファッション雑誌でメイクの研究してたんだ……)
普段の千香良は日焼け止めだけでノーメイク。
友達と出かける時でも、下地クリームにお粉、そしてリップ。
ポイントメークは殆どしない。
けれども、今日はフルメークに挑戦。
瞼に少しだけピンクのラメを剥いで、ビューラーで上げた睫にマスカラも塗ってみた。
又、どこかで偶然、星谷に遭遇するかも……なんて考えて、少しだけ気合いを入れたのだ。
ファッションもミントブルーのボアコートにグレンチェックのキュロットと、いつになく乙女チックな選択をしている。
そこで、また星谷を思い出す。
(そうだ!グッド、アイディア~星谷案件は梓さんに聞いてもらおう)
千香良は思考の連動からの閃きに心の中でガッツポーズ。
梓には予定を決めた段階で【今週の日曜日に朝1で行きたいです】とラインを入ておいた。
すると、直ぐに【了解です】の言葉と、お辞儀するコケティッシュなパンダがのスタンプ。
そして、行きに電車の中で【お待ちしています】のメッセージも受け取った。
毎年、大好きな人達へのクリスマスプレゼント選ぶのは一大イベント。
これで、心置きなくクリスマスプレゼントを選べる。
そして、制服姿の女性が扉の向こう側で一礼すると、開店。
千香良は3階の化粧品売り場に向かった。




