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ガテン系の女 2 娯より、楽より、修業中   作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
21/43

恋をしている場合か? 6




「全国大会って『全国左官技能競技大会』?」


 千香良は思い当たるワードを口にしてみる。


「あれ?お兄ちゃんから聞いた話なんだけど……千香良じゃなかったんだ。お兄ちゃんの情報源も当てにならないな~知り合いにの左官屋さんは千香良だけじやないもんね。でわ、聞かなかったことで……」


 千香良の反応に美々はあっさりと話を覆し、頭をペコリ。

 

 胸の内を吐き出したばかりで、面倒な話は抜きにしたいのだろうか……

 それとも、咄嗟に箝口令と判断したか?


「だよね」  


 いずれにしても、千香良は美々の勘違いに寧ろ納得。

 一瞬(真逆!)と、慌てたが……

 絶対、おかしい。

 左官職人なって3年目。

『左官技能競技大会』にエントリーなんて分不相応も大概だ。

 冗談にもならない。


「次はレモン杯かな……」


 美々はどうやら、飲食に本腰を入れる模様。

 飲み物のメニューを手にすると、呼び出しブザーを押した。


 折角の飲み放題。

 当然、千香良も右に倣え。

 美々からメニューを見せてもらう。


「もう、お兄ちゃんの話って登場人物が多くて、苗字を言われても右から左に忘れちゃうよ」


 そして、美々が榊の愚痴を溢すと、流れで千香良は千登世の悪口を……

 たわいも無い話しは、口にした側から忘れていき、取り留めない。

 

 飲み物の追加を頼み、頼みと、2時間の飲み放題など、アッという間に過ぎていく。

 先程、デザートを持ってきたスタッフが、飲み放題のラストオーダを聞いていった。


「そうそう、思い出した。千登世さんがね、恋愛したいならコミュニケーション能力を磨けって。男も女も顔より知性だって。千登世さん性格は度外視だもん、笑える」


 美々はケラ、ケラと楽しそう。

 然程、酔っているようには見えないが、どうやら、笑い上戸らしい。


 けれども、酒に強い力は一方に代わらない。

 いつの間にか忘れていた星谷について思い出す。


「ねぇ、そんなに蘊蓄、言うってことは、お兄ちゃん、もマッチングアプリしているのかな~」


 それでも、酒の力は本人ですら、思いも寄らない言葉を吐かせる。

 千登世は星谷と同世代、婉曲ながら参考までに……と思ってみたいだ。


「ナイ、ナイ。アレは遊び人と非モテが使うアプリで、しかも、ハイリスクでロウリターンだって。友達の一件で私も、そう思うな……もう、あの娘との友情もフェイドアウトするかも……」


 美々がしんみりと肩を落とした。

 急激に酔いが回ってきたらしい。


 今日中が門限の千香良も、そろそろタイムリミット。

 デザートも食べ終えている。


「行こうか」


「あぁ~来週には、試験の結果が分かるけど……自身ないな~、でも、先ずは己の確立。陸上部の監督に良く言われよ~」


 美々が酔いを覚ますべく、気合いを入れて立ち上がる。

 

 そう言えば、美々が簿記2級の試験を受けた話は兄の千登世から聞いた。

 恋よりも、美々は仕事に家事と忙しい。

 陸上部の練習で延々と走っていたのを思いだす。

 緩緩と生きてきた千香良とは違う。

 たまには羽目も外すだろう。


 千香良!

 本当に恋をしている場合か?

  


 

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