恋をしている場合か? 2
美々との待ち合わせはPM7時にN駅のコンコース、エスカレーター下、時計前。
流石に定番の待ち合せ場所とあって、老若男女関わらず、人々がひしめき合っている。
加えて12月。
正に芋生洗うごとく。
千香良は、たじろいでしまい、時計下には近づけない。
けれども、美々は来ていないことだけは確か。
予定よりも仕事が早く片づいた千香良は、30分も早く着いていた。
千香良は、どこか空いた場所はと……
チラチラと当たりを見回し始める。
すると、隣接するデパートの玄関にトナカイの手綱を握るサンタクロース……
周りにはスマホを手にした人々が集っている。
どうやら、人々は皆クリスマスのディスプレイを撮っているようだ。
飾り台にはティディベアに玩具の兵隊が数多。
人の間からディスプレイ台がチラリと見えた。
千香良は居ても立っても居られない。
早足で、近づいていく。
天井からはリボンが結ばれたギフトボックスが数多と連なり、金と赤とのコントラストが眩い。
夢の風景を前にすると、どんな乙女も厚かましさを発動。
千香良は人を割って最前に立つと、スマホを掲げた。
結果、一頻り写真を撮った千香良はデパート入り口付に立っている。
然れども……
眺める景色は人、人、人……
それでも、皆、それぞれに待ち人を見付けては、行き交う。
千香良は感心するばかりだ。
美々も、そろそろ来るだろう。
けれども、益々の人混みが千香良に不安を与えだす。
(ここでも、ちゃんと分るかな……)
千香良は、スマホを取り出そうとトートバッグに視線を移す。
「お待たせ」
すると、不意に声が掛けられた。
「良かった~」
千香良は美々の顔を見るなり、安堵の声を出す。
「ごめん、ごめん。待たせた……」
「ううん、凄い人だから、時計下は私には近寄れなくて、今、ラインでも送ろうかと思って……」
「良いよ。時計下はこの付近一帯だからさ。それの、相手は千香良だよ、どこに居ても分るよ」
ニッコリと笑う美々は、ラテカラーのロングコートに身を包んでいる。
元スプリンターだが、ファッションはエレガントな雰囲気を好む。
足元も華奢なピンヒールと可愛らしい。
一方、今日の千香良は黒のダウンコートに黒のロングブーツと黒ずくめ。
シーョートヘアーも相俟ってどちらのモデルさん?といった風体だ。
「まぁ、友達だからね……」
千香良は友情を思わせる美々の言葉がチョッピリ嬉しい。
「だね」
けれども、ニュアンスを誤って解釈している。
苦笑いの美々は何ともいやはや……
微妙。
千香良は未だに自分に容姿が如何に目立ちか分っていないようだった。
読んで下さってありがとうございます。
一月も空いてしまいました。
面目ない。
今後も見捨てずお願いします




