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ガテン系の女 2 娯より、楽より、修業中   作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
16/43

恋をしている場合か?




 今週は何かと慌ただしく、1週間があっという間に過ぎた。

 そして週末を迎えた千香良は、久しぶりに、美々と食事に行く約束をしている。

 美々は千香良と同じく社会人。

 三上を介して知り合った大学生連中とは違い、話が噛み合う。

 今日は丁稚の話を聞いて貰おうと思っている。

 

 仕事も今日は刃物工場でPコン詰めと、お得意の作業。

 千香良は鼻歌交じりで、指先を動かしていた。

 

「ご機嫌じゃん」


 すると、背後から馴染みに声が……

 土間屋の元ヤン、城島に違いない。

 振り向かなくても分るのが嫌だ。 


「うん、今日は友達と、ご飯に行くんだ……城島さんは?真逆、今か土間打ちじゃないよね……」


 千香良は背中を向けたままで話しを返す。


「んな、訳ないだろ……もう直ぐ昼だぞ……今から打ったら、押さえが終わるのが夜中になるわ。で、龍太さんは?」


「だよね。龍兄は監督と打ち合わせだから、多分、現場事務所だと思うけど……用事?」


「おう、此奴が左官になりたいって言うから相談に……」


「えっ?」


 千香良が城島の意外な言葉に振り向くと……

 城島の隣に詰め襟の男子が1人、立っていた。

 制服は規制のままで、着崩してもいない。

 ヤンキーでは無さそうだ。


「ツレの弟で、まだ中坊だけどな……今日は期末テストで早いって言うから連れてきた。龍太さんにはラインでOK貰ってから……此奴は拓哉な」


「こんにちは」


「こんにちは」

 

 千香良は敢えて名乗らずに挨拶だけを返した。

 龍太よりも先に自己紹介するのも……

 違う気がする。

 それでも、何だか心が騒ぐ。

 後輩が出来るかもしれないのだ。


(今日は美々と恋バナの予定だったのに……)

 

 千香良は丁稚よりも眼前の中坊が気になってしまう。

 

 拓哉は千香良が手にしている鏝板を凝視しているのだ。

 

「お姉さんは何をしているんですか?」


「Pコン詰めな……」


 城島が千香良の代わりに説明をしてくれている。

 拓哉も熱心に聞いているようだ。


「千香ちゃん、拓哉も見たいだろうから、作業を続けて……」


 頷いた千香良は背を向けると、親指で鏝板からモルタルを掬う。

 すると後頭部に熱い視線が刺さる。

 倦怠期気味の千香良には何とも羨ましい限りだった……

 







 

読んで下さってありがとうございます。

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