ポーカーフェイス 4
習慣性とは有り難い物で、無意識にでも身体は動くらしい。
千香良のタッピングで床は水平にレベル調整されていく。
レベリング材は優れた材料で、高強度、超速硬、速乾型。
4時間後には歩行が出来る。
それ故に作業はスピードが求められ、休憩もままならなず、ついつ口が開いてしまう。
「そういえば……今度、新藤君が担当する工場が凄いんだって……」
沈黙に耐えきれず館が龍太に話を振っている。
仕事絡みの話なら私語も許されるだろう。
「宣伝なのか、イメージ戦略なのか……日本家屋調だって聞いている」
「和菓子屋でしたっけ?」
「まぁ、……も併設されるらしいから……」
千香良は龍太と館の会話に聞き耳を立てるが、現場の騒音で、要所、要所が聞き取れない。
「なら、漆喰工事が結構あるんですかね~噂では有名な建築家の弟子が設計するって?」
「あぁ、それ敦さん、だよ」
「……でしたか……」
(えっ?敦さん、って高城さんだよね……でも……館は別の名前を口にしていたような……)
千香良は小首を傾げるが、頭は働かない。
それよりも、先程、高城を思い出していたばっかしで、何故だかこそばゆい。
「で、館さんの情報網では、工期は、いつ頃?」
「来年、早々って話ですけど……龍太さんが工期を聞いていないなら、やっぱり親方が出張りますか?」
しかし、龍太と館の会話は実務的に代わり、高城の話題は続かなかった。
当然、千香良は高城に名前に興味、深々だったのに……
興味が削がれる。
千香良は聞き耳を立てるのを止めると、お門違いの脹れ面で、灰褐色の床を緩緩と進んでいく。
「どうだろう……?でも、星屋は確か……さんと同じ高校だから……あり得るな」
すると、知らない間に龍太が直ぐ横に。
千香良の鼓膜に大きな声が響いた。
どうやら、会話の途中で、館との間が離れていったらしい。
しかも、龍太の口から星谷の名前が……
「そうなの?」
千香良は思わず龍太に聞き返してしまった。
(ヤバイ!)
千香良は丁稚に興味があるなんて、龍太にだけは知られたくない。
茶化されるか、怒られるか……
両極端の反応しか想像出来ない。
「なんだ、敦さんの話には食いつくな~」
「……うん」
高城との仲良しぶりは、勿論、龍太も知るところだ。
(違うけど……)
しかし、薄情な事に今回は丁稚が勝っている。
それでも、千香良は、しらっと頷ずく。
そして、龍太の勘違いに安堵した。
謹賀新年
早々に読んで下さってありがとうございます。
今年もよろしくお願いします。




