ポーカーフェイス 3
龍太の一言で、丁稚は素早くスマホを操作。
「僕、バーコード出しますから」
そして、頷いた千香良がライン画面を開くと、丁稚はマイバーコードを差し出した。
千香良が読み込んでラインの交換は終了。
しかし、続く言葉は……
「じゃあ、僕は余所とも打ち合わせがあるので、先に行きますけど、後はお願いします……」
席を立って行ってしまった。
千香良は拍子抜けした気分だが、顔には出さない。
同じように、無関心を装う。
「俺らも、行くか」
どうやら、龍太の提案は業務上。
他意は無いようだ。
千香良は乙女な自分が恥ずかしかった。
打設用のホースがセットされると、龍太が圧送されたレベリング剤をフロアーに流し込む。
そして、館と千香良が土間トンボでタッピング。
かんじきを履いて、凝固前の溶剤を踏みしめていく感触が作業の慎重さを認識させる。
(チャポン、チャポン、トン、トン、スー)
千香良は擬音がイメージしながら、水平に均らしていく。
そして、粛々と30分。
無言で土間トンボを動かしていたら、丁稚の事など、頭から消えていた。
しかし、今回の作業現場は広すぎた。
(乳液が少なくなっていたな~)
単調な作業が続くと、どうしても他事が頭に浮かんでしまう。
千香良は化粧品の残量に思いを馳せる。
二十歳に娘には重大事項だ。
そして、今度の日曜日は梓の所に行こうと決めた。
梓は龍太の従姉妹で老舗化粧品メーカー美容部員。
デパートで働いている。
千香良は序に自分や、両親、友達、エトセトラ……
クリスマスプレゼントも物色するつもりだ。
(今年は……何をくれるかな?)
すると、今度は高城の顔が頭に浮かぶ。
高城は梓の兄で、新進気鋭の建築家らしい。
けれども、千香良はどうもピンと来ない。
設計する建造物は素晴らしいのだが……
何故だか、千香良の前では見た目のダンディーさを裏切る、駄目ぷり。
世話が焼けるのだ。
元々、高城は千香良が『プラスター工房ムラオカ』に勤める以前アルバイトをしていた町中華『蘭々』のただの常連客で、龍太の従兄弟とは偶然だった。
それが、今では自称、千香良のお目付役。
毎年クリスマスプレゼントまで交換している。
、
千香良は人の縁とは本当の面白いと思う。
(高城さんが丁稚を知っていたら面白いな……)
そして、どうしてか……
又もや……
丁稚が浮上してきた。
読んで下さってありがとうございます。
次回は令和6年になります。
良い年をお迎え下さい。
来年もよろしくお願いします。




