メアリーの励まし
暫くして、第三妃キャロンさまがお輿入れをしてきた。
そんな私を心配して、メアリーは幾度となくお茶会を設定してくれて励ましてくれたし5人も夜だけでなく昼も顔を見せに私室へと足を運んでくれた。
「メアリー、いつもお茶会を設定してくれてありがとう。今日は、私の得意なケーキを作って来たのです」
「これは?」
タルトタタンと言って、キャラメリゼしたリンゴを敷き詰めで焼くことでよりコクが出てとても美味しいお菓子なんですよ。お口合えばいいのですが・・」
日頃のお礼も兼ねて、タルトタタンを焼いたのだ。
「タルトタタン、ってどういう意味かしら?初めて聞いたわ」
それは、私がえーと適当に考えました(てへ!
「変な子。でもお菓子はとても美味しいわ、ありがとう」
よろしければ、アマーリエもぜひ。
和やかに会は終わった。
「ジューンはとても落ち込んでいるわね・・あいつらにしっかり捕まえておきなさいとはっぱを掛けなければ」
「メアリーさま、メアリーさまの励ましも随分、ジューンさまのお役に立っていますよ、お手紙もこまめにお書きになられては?」
「アマーリエ・・そうね、ちょこちょこメッセージを送って、味方だからって励ましましょう、かつて、私がジューンに励まされたように・・・」
*
実は、まだ子供の頃に、ジューンはメアリーと会ったことがあるのだ。
ジューンが5歳となりお城でお披露目会をした際にガーデンパーティーが行われた。
その時、庭園の奥に迷い込んだジューンが、ぐしゃぐちゃに泣いているメアリーを見つけ、話しかけたのがきっかけである。
メアリーは生まれた時から第一妃になることが決まっていた。
ただ、詳しい内容は聞かされていなかったし、ただただ、お城でよくわからない人の元に行くのだということだけはわかっていた。そのころ、メアリーは自分付きのメイドのことが大好きで結婚すれば離れなければならない、そのショックからおねしょが治らなくなったのだ。そのことを親に叱責され、そして公爵家の長女としての責務を既に負わされ、メアリーは鬱々と日々を過ごしていた。そんなメアリーが、一人になれる場所が城の庭園の奥だった。そしてその日も些細なことで親に叱られたメアリーが城の庭園の奥で誰にも見つからないように泣いていたのだ。
「だいじょうぶ?ないているの?おなか、いたい?」
「だれ?!」
ジューンとメアリーの出会いだった。
一緒にいてあげる、そう言って何も言わずそばにいてくれたジューン。
「私ね、失敗ばかりしているの・・・」同世代の女の子ということでメアリーも落ち着き話し出す。
「私なんか、失敗ばっかりだよー、お母さまの顔が悪魔に見えるもん」
あはは、と笑うジューン。
でもね、お母さまは私に幸せになりなさい、そのためには頑張りなさいって言うの。
あ。幸せって言うのはね、多分、ずっとうれしいことだと思うんだけど。
「頑張ったってダメなものもあるんじゃ・・」
「お父さまはね、努力は裏切らないって言ってたわ、あ、努力って言うのは頑張ることだよ!」
そ、それくらい知ってますわ・・・
この世で一番不幸、くらい思っていたメアリーだったが、そんな些細な子供の励ましでも。公爵家の長女として頑張ろう、そう思えたのだった。
あ!お父さまが呼んでるわ、怒られるから行くね!
そう言って、風のように去っていったジューン。
メアリーはずっと忘れていなかった。
「私が今度は励まして、助けるからね」
そう誓ったメアリーだった。




