この国の秘密
日差しの入る明るい食堂で5人の前に座る。
こうやって明るい場所で5人を見るのは・・初めてかもしれない。
前に面談を行った部屋はそこまで明るくなかったから。
こうやってまじまじと見ると5人共、完全に別人だった。
「俺たちを見分けられるは」
口火を切ったのは1番だった。
どうも並ぶ順番は決まっているらしい。(知らんけど)
産んだ母親とメアリーだけなんだ。と静かに笑った。
親父は話すとわかるみたいなんだけどね。
「皇后は、あれは俺らが誰でもいいみたいだね」
「政治の駒だからな」
「まぁ、そう言うなって。一応は大事にされていただろ、一人息子としてはさ」
なかなかの話だ。
あの、5人はお城の中ではどういう扱い、というか、5人は5人なんですか・・・?
「そんなことしたら漏れちゃうでしょうよ」
「国家レベルの秘密だよ」
確かに・・
「よく分からないんだけど、王家はその種を絶やすまい、諍いを起こすまい、という執念から子孫に呪いをかけたんだと思うんだ」
の、呪いですか・・
「言いようによっちゃ、加護、なんだろうけど。ものすごい力で必ず5つ子を成し、そして・・その五つ子は一人しか認識されない」
どういう・・意味・・ですか
「俺らは5人で一人だって言ったよね。文字通りそうなんだ。今だって5人分の食事が用意されているし、当然、部屋もメイドも5人分いるんだ、だけど・・一人としてカウントされているんだ、これを呪いと言わずなんというかわかるとしたら聞きたいところだよね」
「結婚の儀の時に国王が、親父が居ただろ。何人に見えた?」
え?国王は一人に決まって・・・
あ、
まさか・・・!
「そ、あそこにちゃんと5人いたんだ、にやにやしてたよ」
そうだったんだ・・・
城中、国中、この世界中を巻き込んだ、その想いは。
今もこうやって受け継がれているのか・・・。
そう言えば、5人に何かあった場合は、と伺いましたが、今まであったのですか?
「過去には、ね・・・有ったみたいだけど、公式に残せないし、
皇子が暗殺未遂に遭った、くらいだね。
だけど、先祖の廟にいくとなんとなく、わかるよ。先祖のつらさとかね」
みんなも・・・お辛いんですか・・?
「俺ら?うーん、割り切ったというか・・そういうもんだって生まれた時からだし。宿命とか言いたくないけど。でもいいこともつらいことも全部5人で分かち合い、知恵を絞って今まで生きてきたし、これからも生きていくよ。そして5人でジューン、君を守るよ」
さらっと・・・
「なぜ、そこまで私に・・?選定会で割とすぐに決められましたよね・・」
なんでだろうね、この子だって5人でわかったんだよね。逆にジューンはどうなの?
「私ですか・・・私は・・まず、選ばれるとは思っておりませんでしたから・・・ただ、選定が進むにつれ、好奇心は湧いてきました。同一人物に見えなかったって言いましたよね。その後、お話しして・・・私は、私もこの人たちだって思えたんです。
私は、ずっと一人の人と添い遂げるんだって無意識に思っていました。でも、今は5人、誰一人欠けてもいやです」
わがままですよね。そう言った私に。5人は微笑んでくれた。
「大事な娘をお披露目もしない、城に押し込めるかもしれないのに快く送り出してくれたミディアム侯爵には感謝だね」
あーー、うちの親は・・・厄介払いできたとほっとしていると思いますよ。
お母さまもお父さまも妹も執事も最後の最後までそれこそ、馬車に乗るまでクドクド、淑女、花嫁とは、と言われまくったけど。
ーーー
あの日。選定の結果と書類を持った私が屋敷に帰ると。
すっ飛んできた両親たち。
お母さまは寝込んでいたらしい。
お父さまと妹と執事と秘書で作戦会議をし、ミディアム家として腹を括ったそうだ。
そもそも、辞退はできそうにないだろうし。
それこそ、断罪ものかもしれない。
そこから一週間、詰込みの花嫁修業が始まった。
「お母さま、無駄になると思います・・」と何度も直談判しても相手にしてもらえず
ワルツを踊りながら刺繍をするような毎日だった。
いよいよ、お迎えの日は。
朝からじゃぶじゃぶと全身を磨かれ、フランス人形のようになってお迎えの馬車に乗った。
「お父さま、お母さま、行ってまいります。マリー、執事、よろしく頼んだわよ。」
元気でな、頑張ってお勤めを果たしてこい、時々は手紙をよこしなさい。
家族に見送られ、私は住み慣れた屋敷を後にしたのだった。
お城につくと。
待ち構えていた兵士と神官とその他大勢に連れられ、お城の深層部へと誘われた。
ここからはお一人で進んでください、そう言われ薄暗い通路を進んだ先には
神殿だろうか・・・国王とその皇子がいた。
「よく来たね」
初めまして、お目にかかります。ミディアム家ジューンでございます。
挨拶を済ませ。
密やかに結婚の儀が始まった。
と言っても。
神殿の湧き出ている泉の中に両腕を肘まで浸けるっていう、儀式だったんだけど。
腕を浸けると。
パーーーーーーッ
泉が一瞬光って、また元の静寂が訪れた。
無事に、儀式は終わったようだった。
その後、私室に案内され、また湯あみをし、ふやけたところで
メイドがたくさんの食べ物、飲み物を乗せたワゴンを運び入れ、
するりと・・・5人の皇子が入って来たのだった。




