第54話 勇者指先をにぎにぎする
六魔将のひとり、だいまどうのスズキくんから逃げた俺とユミコ。
転移の翼を使って、オオミヤ城の前に転移した。
オオミヤ城には、魔法の鍵がかかった扉が、三箇所あった。
それを開けに行くのだが、その前に、はっきりさせたい事があった。
ユミコは一体、何を考えているのか。
「なぜあんな所に、六魔将がいるのよ。
そりゃあ、虹の橋を阻止するためでしょうけれど、普通、あそこで待つ?」
ユミコはぶつくさと、ひとり自問自答している。
俺が話しかけても、気づきもしない。
「あのー、ユミコさん?」
周囲の事に注意が向かない、今のユミコ。
ちょっと胸でも揉んでみたい衝動にかられたが、後が怖いので、やめといた。
「そうよ、ユウタはどう思う?」
「え?」
いや、いきなりそんな事聞かれても、いいお胸をしてますね、くらいしか答えられんぞ。
「てか、何その手?」
「え?」
やばい、俺の両手はユミコの胸元に伸びていた。
今後ろから押されたら、そのままユミコの胸を揉んでしまうほどに。
つか、誰か押せよ。
「いや、ちょっと指先のストレッチ。
ユミコもなんか考え事してて、俺も暇だったから。」
俺は指先をにぎにぎして、その場をごまかす。
「ふーん、まあいいや。
私が聞きたいのはね、なぜあそこにスズキークが居たのか。
ユウタはどう思う?」
「どうって、そりゃあ、」
ユミコの目の前、つか胸の前で指先をにぎにぎしながら、俺はちょっと考える。
つか、指先にぎにぎをやめるきっかけを、失った。
「あの岬から、どうやって魔王の島に渡るのか知らないけど、あそこに居れば確実に、俺みたいな勇者は来るんだから、あそこで待つのは、効率的なんじゃない?」
「いや、それなら虹の橋の作成を阻止した方が、確実よ。
あそこで石像にまぎれて、野ざらしで待つ?普通。」
「その虹の橋の作成方法が分からなければ、阻止出来ないよ?」
「え?虹の橋の作成方法が分からない?」
「少なくとも、俺は知らないぞ。」
「でも、カトウサは知ってるわ。」
「でも、あそこに居たのは、スズキくんじゃん。」
「まさか、虹の橋の作成方法を、伝えてない?」
俺との問答で、ユミコは何か納得する。
「カトウサも、それだけは秘密にしてたようね。
魔族相手の、切り札ってとこかしら。」
「でも、処刑されちゃったらしいじゃん。」
「ええ、そのようね。
問題は、スズキークが知らないだけで、魔王軍の誰かには、漏らしてる可能性よ。」
ユミコは意を決っした表情で、俺を見る。
「行ってみましょう、神帝のほこらへ。」
「じんていのほこら?」
「虹の橋を作った場所よ。」




