第101話 勇者姫に怨まれる
海底洞窟のドラゴンを友と慕うローザ。
ローザはドラゴンを倒した俺に、牙をむく!
ローザは激しい形相で、俺をにらむ。
そしてナイフを片手で持ち、俺に向ける。
「私では、おまえに勝てない!」
ローザは俺をにらんだまま、ナイフの切っ先をユミコに向ける。
「だから、おまえの大事な人を殺してやる!
大切な人を奪われる苦しみ、おまえも味わうがいい!」
って、ローザ姫さん、ちょっと待ってね。
ユミコさん、俺より強いよ?
ふう。
ユミコは小さくため息をつく。そして、
「ボッと。」
ユミコは初級の火炎呪文を唱える。
ユミコの指先から放たれた小さな火球が、ローザの手からナイフをはじく。
カラーん。
「へ?」
ユミコからの思わぬ攻撃に、ローザはバカ面をさらす。
ユミコはゆっくりと、ローザに歩みよる。
ローザはガタガタ震えだす。
ローザにもユミコの強さが分かるようだ。
「ご、ごめんなさい。私が、悪がっだでず。」
ローザは泣きながら、ユミコに謝る。
でもユミコは、無表情のまま、歩みを止めない。
「ちょ、ちょっとユミコさん、おとなげないよ?」
俺は思わずふたりの間に入って、ユミコをとめる。
「あら、私は落ちたナイフを、拾おうとしただけよ?」
ピシっ。
ユミコが落ちたナイフの切っ先をつまむと、ナイフは音をたてて砕け散る。
「ひい。」
ローザはさらに怯える。
「もう、何よこのナイフ。もう寿命だったのかしら。」
ユミコは満面の笑みを、ローザに向ける。
ローザは気を失いかけているが、なんとか持ちこたえている。
「ローザ姫、早くお城に戻りましょう。」
俺はユミコの恐怖から、ローザを解放しようとする。
今の状況は、あまり見たくもないし。
「お、おまえに、姫と呼ばれたくない!」
ローザは俺に対しては、キツくあたる。
「私を姫と呼んでいいのは、ドラゴンさんだけ!
おまえが、殺した、、」
ローザは言葉をつまらせる。
「ドラゴンさーん、うわーん。」
ローザはドラゴンの事を思い出したのか、その場に泣き崩れる。
思えばこんな暗い洞窟の奥で、そのドラゴンさんだけが、心の拠り所だったのだろう。
ローザは見た感じ、まだ10歳くらいだ。
姫である前に、まだ幼い少女だ。
そんなローザには、ドラゴンみたいな存在が必要だったのだろう。
「わ、悪かったよ、ローザ。ドラゴンさんを倒しちまった。」
「おまえは、私の大切なドラゴンさんを殺した。絶対許さない!」
俺はローザの事を思って謝るが、やはりローザは許してくれそうもない。
ははは、女の子のひとりも救えないなんて、勇者失格だな。




