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48話  笹本の戦後

 見つけてくれてありがとうございます

 結構Twitterさんからも来てくれているのかな?

 ようこそお越しくださいました

 実力主義の公国10艦隊を全て全滅させた第6艦隊は暫くお祭り騒ぎが続いた。航宙機はターンやきりもみをし、艦船は傾斜をかけて一回転したり空砲を鳴らしたり。

 戦時糧秣を配り歩いていた渡辺真美子烹炊(ほうすい)長は予め用意していたご馳走を出す為にテレポーターで海浜幕張に帰還した。艦内の喜びの声をハイライトがフル稼動して伝える。

 騙し討ちしかしてない気がするが、こんなに喜んでくれるのだから嬉しいじゃないかと笹本は思っている。頭はぐちゃぐちゃと思考が巡る。


 ほらみんな喜んでいるじゃないか。いつも腹ペコな若手達はカフェテリアで食べて飲んではしゃいでいるし、いつか来た白猫のエカテリーナの主のウラジオストク共和国の女の子は選挙帝政ロシアの男の子とコサックダンスを躍りながら、白猫を胸元に入れつつ『国家連邦政府宇宙軍万歳』と、歌って喜んでいる。

 両国は仲が悪いけど、同じロシア語だからか打ち解けるのも早いよね。ねえ、猫ちゃん怯えてニャーニャー言ってるよ。


 あ。成人以上の船団長さん方早くも酒宴ですか。気は早いかもしれないけど構いませんよ。あら?DJフレデリックことフレデリック・ケイジさんとナオミ・フィッシュバーン船団長も居るじゃない?なんか良い雰囲気じゃないか。ナオミさんは割と美人さんなんだから良い人見つけて欲しいよね。アラフォーだけどさ。


 パラメスワラ惑星系で怪我をしたマレーシア出身の船団長君も健在なようだ。今回は大きな怪我もなく乗組員の皆と肘を突き合わせて勝利を祝ってるね。あ。ハイタッチもするんだ。将来この子はマレーシア宇宙軍の重要セクションに配置されるだろうから、今の内に国家連邦政府(こくれん)流のやり方を見て貰う為に参謀本部に呼ぼうかな?ただなにがしかを教えるのに僕は不味いよね。そうだユボーさんに手ほどきをお願いしよう。教科書通りは良い物だ。手始めは恵梨香先生とユボーさんの教室で戦史と戦術論学んでもらおう。そうしよう。


 あれ?アリーナと小鳥遊君もしかしてまだ飛んでるのかい?そりゃあとんだ話だな飛んでるだけに。航宙機隊の皆にはいい加減帰投して貰おうかな。なにせ本物の航宙機で飛んでいたら燃料代が嵩むからと各務原さんが文句言うよな。えー。でももうこれ勢い止められる気がしないし心行くまで飛ばしてあげたいよね。だってみんなすごい技術だよ。これのびのびやって貰いたいよね予算関係なく。各務原さんもけち臭い事言うなよな。って僕は思うんだよね。だって実際凄いじゃないか。これ実は結構多くの他国の航宙機隊は出来ないらしいじゃないか。


 ああ。奇襲部隊のみんなここに来てくれてるのか。実際皆さん見事な側面攻撃でしたよ。それぞれ素晴らしいです。なんとなく僕には出来ないよねあんな事。ってか僕あんまり指揮艦から離れて何かする事なんか出来ないよね。実際敵を屠り相手の心をへし折る為に作戦を立てて指揮するのが僕の役目だもんな。いやみんなごめんな。なんか僕やり切ってないわぁ。


 なんだろうこの虚無感。僕は何をやっていたの?毎回薄氷の上の勝利を掴んでいるけど何かの拍子で負けるぞ。いやそれ言い出したらこんなチョロっと研修課した程度の1艦隊にカノープスの戦いやらせんなよな。悪いのは国家連邦政府かな?いや他人のせいになんかしたくないよね。いや。不満なのは僕自身なんだ。だって僕は指示を飛ばしただけで汗水たらしも危険な思いもしていないんだもの。


 笹本の頭だけは凄い勢いで回転していたが感情も行動も起こさなかった。ただほっとして、ただ申し訳なくて、そしてただ虚ろだった。参謀本部の面々も大いに沸いている中、笹本の時間だけが止まったように動かなかった。例えるならそれは心の時間だ。

 参謀本部の各員が笹本のそのような様子を見ては顔を曇らせ、やがて異変に気付く。一番最初に笹本に声をかけたのは同い年のウルシュラ・キタだった。

「あのさあ笹本君さあ!」

 ウルシュラは呆けた笹本にも聞こえるように大声で呼びかけた。エチエンヌは耳を塞ぎ、叢雲は目を見開き、今更のようにやって来たアリーナ、小島、小鳥遊は声に仰天した。意外と大場一家は平気そうだ。

「でかい声出さないでよウルシュラ」

 エチエンヌが抗議した中、大場一家は『あれくらいの声でなきゃ工場内では聞こえないよな』などと言っている。

「田舎育ちも声は大きくなるんだ。だって声を届ける親は遥か彼方にあって遠いからね」

 

「……なに?」

 笹本がぼんやりしながら答える。

「行こう!」

「どこに?」

「ドルチ先生の所だ!」

「……なんでさ?」

「何でもだ!おら行くぞ!」

 普段重たい機械を、そして子供のころから重い農作物を運んでいたウルシュラは意外にも笹本を引きずり歩く事は可能だった。しかしウルシュラは助けを求めた。

「オオバパパ、ユウヤ君、サントス君、それから……」

「私もやりましょう」

 航海長のフセイン・ゼルコウトまでが名乗りを上げ、それぞれ四肢を掴んで医務室まで連れて行き始めた。

「おい。僕はいたって健康だ。何をするんだ元薬屋に不健康を語るな」

「良いから行くんだよ。キミは今恐らく非常に良くない」

 何故か笹本が喚き倒す中、4人がかりな上、ウルシュラが耳元で落ち着けるように宥められながら連れて行かれた。


 軍医大佐のドルチドトエン医師はその頃多忙だった。これも仕方がない。大場霰がこさえた大量の怪我人が居るので笹本と言う命に別状のない患者に手が回らないのだ。

 しかし教官の中に看護コースの人物がおり、その方が駆けてきて笹本に無理やり注射を打って寝かしつけ、そのまま外側からしか開かない個室に放り込んだ。その病状は『指揮官(うつ)』と言うらしく、新人参謀や提督が罹りやすい病気で、自分が考えているだけで行動も身動きも出来ない事に喪失感と無気力感を感じてしまう物なのだという。1日5回の医薬品の服用でケロリと治るが、逃げ出す前に個室に入れるという。

 

 そこにウルシュラだけが残って看病をしたいと申し出た。ウルシュラは薬で寝ている笹本にぽつりぽつりと声をかける。

「笹本君、心配したんだよ。キミは私に今一度エンジニアリング魂を植え付けてくれた大事な人なんだ。こんな所でくたばったり再起不能になったらヤダよ。でもそうなったらさ、ポーランドにおいでよ。一緒に会社やろう?笹本君は口が上手い訳では無いけど、農機具いっぱい売ってくれそうだ。その農機具を私が改造するんだ。きっと繁盛するよ。まあそれは次回の話になるね。ホントに良かったよ。帰ってきたらまた馬車馬のように働くのだろ?そうならないように何か良い物作ってあげるね。後ついでにさあ。ワーカーホリックなんて単語、ほら見ろ君の方が似合う言葉じゃんか。まったく笹本君はさあ。でも良いんだよ。キミらしいや」

 ウルシュラは機械や工具の取扱いは一流だ。しかし包丁すら満足に扱えない。そんな女性が必死に話しかけ、涙を零して剥いた林檎は、皮は千切れ千切れで不格好で、床に散乱していた。

 読んでくれてありがとうございます

 もし良かったらブックマーク、評価、いいね、感想、レビューなど頂けましたら嬉しいです

 あと支援イラストもくだちゃい(ボソ)


 ブックマーク多数、評価5頂きました。どんな感謝をしたらいいだろう。


 最近Twitter始めました。@kokochu539です。フォロー返しは現場確実ですのでお気軽にどうぞ

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