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53. 直属部隊


 大悟は、警備に付いてる者以外の人と動物を一ヶ所に集めていた。


「ゴホンッ。はい、みんな、注目ぅー。

 今からここの管理をしてくれる人物を紹介します」

 そう言って大悟はアリスを前に出す。


「異世界の皆様、初めまして。

 私はアリス・デュ・ルイースと申します。気軽にアリスとお呼びください」

 アリスは、軽くお辞儀をした。

「今回、私は大悟様の(めい)によりここの管理を任せられました。

 任せられましたが、国というのは1人でできる物ではございません。1人1人が自覚を持って行動し、互いに助け合いながら築き上げていく物でございます。

 皆が安全に暮らせるように、ここを最高の場所にする為に、皆様の力をお貸し下さい」

 そう言って、アリスは再びお辞儀をした。


 (しば)しの沈黙の後、

「おぉー!」

 と、歓声が飛ぶ。

 

 そして、その歓声の中1人の男性が手を挙げた。


「ハイ、ハイ。アリスさんは異世界では何をしてたんですか? やっぱ貴族とかですか? それとも冒険者?」


 その質問には、大悟が答える。


「アリスは公爵の娘だよ。

 17で騎士団に入団して、18の時に最年少で騎士団第1部隊隊長に任命されたんだ。

 オーリア王国始まって以来の才女だと騒がれたらしいよ。凄いでしょ」


 アリスは幼少の時から内政、外交、財務、経理、会計、指揮、格闘、剣術、魔法などを叩き込まれ、それをスポンジのようにいとも簡単に吸収していった。

 そして、16で学校を卒業する時には『オーリアの奇跡』とまで呼ばれ、その異名は他国にまで轟いていた。

 ちなみに、この世界の学校は15で卒業となっているのだが、貴族は義務で、成績優秀者は志願制でプラス1年勉強する事ができる。


「いえ、大悟様に比べたら、私なんてまだまだ」

 アリスは、真っ赤にした顔を扇子で隠す。


「あはははっ。そんな事ないけどね、俺経理とかした事ないし。……えっと、他に質問ある人いる?」

 

「は、はい」

 1人の女性が手を上げた。


「どうぞ」


「あ、あの。アリスさんは大悟さんと、ど、ど、ど、どういったご関係なんでしょうか?」


「未来の妻(予定)です」

 アリスは即答した。

 その言葉に場内は騒つく。


「ちょ、ちょっと。その話は断ったじゃん」

 大悟は慌てて否定する。


「確かに1度お断りされましたが、先のことなど誰にもわかりません。

 恋が終わるのは振られた時ではなく、気持ちがなくなった時に終わるのですよ。

 振られて忘れられる様な恋なら所詮、その程度の恋だと言うこと。私は、この思いがいずれ成就すると信じていますから」

 そう言って、アリスはニコッと笑う。


 ウッ。絶世の美女に微笑まれると心が揺らぎそうだ。

 ……だけど、悪いなアリス。俺にはまだ恋愛は無理そうだ。昔の……


 そんな事を考えていると、大悟は場が静まり返っている事に気づく。


 ヤベ、まずいな。

 俺はこう言った話で注目されるのが苦手なんだ。

 早急にこの場を離脱しなければ


「はい、もう質問ないね? ないよね? ないね? それじゃあ解散という事で、解散!」

 大悟は足早にその場から立ち去ってしまった。


 大悟の華麗な撤退劇に皆、口をポカーンと開けて固まっていた。


 そんな中、1人の男がアリスに突然話しかける。

「アリスさん、僕を鍛えてくれないだろうか?」

 全員の視線がそちらに向いた。

 その視線の先にいたのは勇巳だった。

 勇巳は皆が呆気に取られている中、1人アリスの元に向かっていた。

 

「貴方は確かあの部屋にいた……勇巳さん、でしたね」


「はい」


「でも、訓練なら明日の朝からみっちりと(おこな)うつもりですよ。

 今日は明日に備え、ゆっくり体を休めて」


「僕は1秒でも早く強くならとダメなんです!」

 勇巳は突然声を張り上げ、その場にいる者は全員その声に驚き体をビクッとさせた。(アリスは不動)

「ご、御免なさい。でも、怖いんです。怖くて、怖くて……。

 数日前、僕達は多くの仲間の命を失いました。

 逃げることしか出来ず、仲間が襲われても何も出来なかった。

 1人になるといつもその事を思い出してしまうんです。もうあんな思いはしたくない。強くなりたい」

 勇巳は涙をグッと堪える。


 アリスは、そんな勇巳の姿を静かに見つめていた。


「アリスさん、私も一緒にお願いします」

 そう言って、出てきたのは優希だった。

 優希は、そのまま勇巳の隣に並んだ。


「優希?」


「自分の無力さを痛感しているのは、兄さんだけじゃない。俺も同じだ」

 勇巳と優希は、互いに目を合わせると小さく頷いた。


「アリスさん、お願いします」

 勇巳と優希は、同時に頭を下げた。


 暫しの沈黙の後、アリスが口を開く。


「ハァー、しょうがないですね。

 そんな大人数で頼まれたら、さすがの私でも断れませんよ」


 勇巳と優希はその言葉を聞き、後ろを振り向いた。

 するとそこには、多くの人達が勇巳達の後ろに集まっていた。


「自分だけの責任だと思うんじゃない。何も出来なかったのは俺達も一緒だ」

「俺達だって悔しいんだ」

「僕も皆を守れる男になりたい」


「みんな!」

 勇巳は先程堪えた涙が、再び込み上げてくる。


「ふふふ、いい心構えですね。鍛えがいがありそうです。

 それでは何処か訓練を行える場所はありませんか?」

 アリスはクスッと笑い、全員を見渡した。


「それなら、こっちに訓練場が」

 勇巳は涙を手で拭い、アリスを訓練場へと案内する。

 そして、その後ろを大勢の人がついて行く。

 が、


 その大勢の中に、女性の姿は1人も見当たらなかった。


 女性達は一体どこに?






 〜〜D.L.A〜〜


「これより、緊急会議を始めます」

 D.L.A代表、中田恵美がこの場を仕切り、他の女性達は床に座って話を聞いていた。


 彼女らは子供達を部屋に帰した後、ある一室に集まって、緊急会議を開いていた。


「あの、恵美さん。いいんでしょうか? 私達は訓練に混ざらなくて」

 1人の女性が手を上げた。


「そうですね。確かに今日の訓練はとてもとても大事だと思います。

 が、今回の議題『大悟様とアリスさんの関係』は、私達にとって到底無視できる内容ではないのです。まず、この問題を解決しなければ、私達は先に進む事はできません」

 恵美は、拳を握り力強く答えた。


「うん、うん」

 それに頷く一同。

 何故か手を上げた女性も一緒に頷いていた。


「他に質問は?」


 恵美は辺りを見回し、確認する。

 手をあげる者は誰もいなかった。


 恵美はこれ以上の質問がない事を確認し、今日の議題について話し始めた。


「では、今回の議題『大悟様とアリスさんの関係』についてですが」

 

 恵美がそう発言した時だった。

 

「未来の妻、と言ったはずですが?」

 

 その言葉に皆の体がビクッと跳ねた。

 そして、全員が声がした方を向いた。

 するとそこには、扇子を持って壁に寄りかかっているアリスの姿があった。


「い、いつからそこに?」

 恵美は、声を絞り出す。


「『これより、緊急会議を始めます』からかしら」


 最初っからやん


 全員が心の中で叫んだ。



「と、特訓はどうされたんですか?」


「特訓? 特訓ならもう終わりましたよ」


「え?」

 全員が目を点にする。


「と言っても、何もしてませんけどね。

 彼等は気持ちだけが先行していて、心と体がズタボロになっている事に気付いてませんでしたので、訓練場に着いた瞬間、彼等には眠ってもらいましたよ。

 あのまま訓練を行っても効果は薄いですからね。

 ああいうのは倒れるまで動きますから、無理にでも休ませないと」


 実際、勇巳達はアリスの言う通り訓練場で死んだ様に眠っていた。

 彼等は訓練場に着いた瞬間、稲妻に打たれたかの様な衝撃を受け、そのまま意識を刈りとられていた。



「そ、そうですか」

 恵美は恐怖を感じていた。

 数十人の男達を一瞬で倒してしまう程の力を持った存在。そんな人と争わないといけない事を

 

「それで? ここに集まってる人達は全員、大悟様の事をお慕いしていると言うことで宜しいのでしょうか?」

 アリスの目が鋭く光る。


 女性達はアリスの眼光にたじろぎ、一斉に恵美を見た。

 (代表お願いします)

 (恵美さん、私には無理です)

 (目が怖いんだもん)

 (恵美さん私まだ死にたくありません)

 怯えた子犬の様な目。そんな彼女達の心の声が恵美には、ひしひしと伝わってきた。

 

 あんたら。


「ハァー」

 恵美は覚悟を決める。

 D.L.A代表として、D.L.Aの未来の為に喋り始めた。


「聞かれてしまったのなら、隠してもしょうがないですね。

 そうです。ここに集まった者達は皆、大悟様に憧れ、敬愛し、結婚したいと思っています。

 このD.L.Aはそんな大悟様を思う者達でできた組織です。いずれ全員が大悟様と添い遂げる為に……。

 な、なので、ア、ア、アリスさんとは、て、て、て、て、敵対関係に、な、な、なってしまいますが……」

 恵美の額には大量の汗が


「敵対関係?」

 アリスは首を傾げる。

「何故、敵対関係になるのですか?」


「え? だ、だって、アリスさんは大悟様を独占したいんじゃ?」


 恵美の言葉に、アリスは「ハァー」っとため息をついた。


「いいえ、違いますよ恵美さん。

 いいですか! 私のいたオーリア王国では一夫多妻制は法で認められていました。

 力ある男性の元には多くの女性が集まり、皆で力を合わせて夫を支えるんです。

 大悟様は剣と魔法が飛び交う我々の世界であっても唯一無二の存在。世界中の女性を虜にしたっておかしくない程の。

 だから、私には大悟様を独り占めする考えは元からありません。彼を独り占めできる女性など、この世界には、いや、どこの世界にもいませんもの」


 アリスのいたオーリア王国では、一夫多妻制は法で認められていた。ただし、一夫多妻制度が適応されるには、男性側にある条件が必要となる。

 条件とは、一定以上の力がある事。

 その力を示す方法として、いくつかの方法が挙げられる。

 まずは貴族。

 貴族であれば、最低限の財力、権力を持っていると判断され一夫多妻制度が適用される。

 次に冒険者。

 冒険者であれば、Sランク以上もしくは、それと同等の評価を得ている者が適応される。

 そして商人。

 王国から大商人として認められた者。大商人は王国に多大な貢献をし、多くの財を齎した者に与えられる称号である。

 その他。

 上記以外の王国に認められた者。(例えば、薬や道具などの開発により王国に多大な利益を生み出した者)

 


「そ、それじゃあ」

 恵美達の表情が少し緩んだ。


 が、アリスの言葉に再び顔が強張る。

 

「けれども、大悟様の御側にいる為には、敬愛の心以外にも必要な物がございます。

 それは、強さです。

 心の強さ、体の強さ、そして、自分の身を守れる程度の強さ。それらが無ければ、役に立つどころか大悟様の足を引っ張ってしまいますからね。

 守られるだけの女に大悟様の隣は相応しくありません」


「て、でも、私達にはアリスさん達の様な強さは……」

 恵美達は、そのまま下を向いてしまう。


「……」

 アリスはジッと彼女達を見つめ、


「もし、貴方達に身も心も大悟様に捧げる覚悟があると言うのならば……、(わたくし)が責任を持って貴方達を大悟様に相応しい女性にしてあげます。

 もちろん決めるのは貴方達ですが。どうしますか?」

 アリスの提案に、場はザワザワと騒ぎ出した。


 そんな中、声を掻き消すような大きな声で恵美が喋り出す。


「私は大悟様に全てを捧げる覚悟があります。

 こんな世界になって、明日死ぬかもしれない現実の中で、大悟様は私達に希望の光を照らして下さいました。

 不安しかなかった私の心に生まれた1つの光。この光を大事にしたい。死んでも守りたい。

 私は大悟様の為に死んでも後悔はありません」

 恵美は力強い目でアリスを見る。


 そして、恵美の言葉に後押しされた女性達が、1人、また1人と立ち上がる。

「私も同じ考えです」

「私も」

「私も」

「命をかけるなら大悟様に」


 アリスはクスッと笑い、下を見る。

「貴方達はどうしますか?」


 そこには、まだ数人の女性が座っていた。


「じ、実は、私はまだ恋愛と言うものをした事がなくて……、この気持ちが恋なのか分からないんです。

 あ! でも、でも、大悟様の事は尊敬してるし、憧れてるし、大好きです。もちろん、全てを捧げる覚悟もあります。

 ただ、恋をしてるのかと言われると分からなくて」


 座っている女性達は、高速で頷く。

 

「ふふふっ、別に恋じゃなくてもいいんですよ。

 大悟様を敬い、彼の役に立ちたいと思う心があるのであれば」


 その言葉を聞いて、座っていた女性達は互いに目を合わせ、笑顔になった。

 そして、

「アリスさん、私達もお願いします」

 そう言って座っていた女性達は、全員立ち上がった。


 ふふふっ、いい顔です。


「いいでしょう」

 アリスは、開いていた扇子を「パチンッ」と閉じた。

「これよりD.L.Aは、私の直属部隊と致します。大悟様の盾となり、矛となる。一切の妥協を許しません。血ヘドを吐いてでも私について来なさい」


 女性達は「ゴクッ」と唾を飲む。


「返事は?」

 アリスは、女性達を威圧した。


「は、はい!」

 女性達は背筋をピーンと伸ばし、返事をした。



 これによりD.L.Aはアリスの直属部隊となった。

 そして、ここから信じられない程のスピードで進化を遂げていく事に……









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