51. ペタの能力
「彼等を使ってですか?」
エリは困惑した顔を見せる。
「あぁ」
大悟はエビスに近づき、倒れているエビスのほっぺを引っ張り始めた。
「でも、どうやって?」
「忘れたのか? こういう時は、アイツだろ?」
エリは暫し考え始め、そしてハッと気づく。
「……もしかして、ペタ、ですか?」
「御名答」
大悟は指をパチンッと鳴らした。
すると、指を鳴らした場所からサッカーボールぐらいの大きさのモンスター、ペターンが現れた。
ペターン。
異世界のモンスター。性格は臆病で、滅多に人前に姿を現すことはない。力は無く、スライムにも負けてしまう程弱い。しかし、ペターンは唯一無二の特殊能力『念伝』を持っている。
念伝は、対象者に付与させることで、対象者が遠く離れようとも、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、感覚、全ての情報を得ることが出来る。そして、その得た情報は主従関係を結んだものと共有することが出来る。
「エリ、ユリ、久しぶりぃー」
ペタは、背中についている羽を一生懸命動かしてエリ達の元へと向かう。
「ペタ、久しぶり」
「ペタ、久しぶりですね。いつからこっちに?」
エリは掌を上に向ける。
すると、ペタはその掌の上に乗った。
「少し前ぇー♪」
ペタは、エリの手の上で陽気に踊り出した。
「相変わらずですね」
エリは、ペタの踊りを見てクスッと笑った。
「エリ、ユリ、久しぶりの再会に水を刺すようで申し訳ないんだが、勇巳達に片がついたを教えてやってくれ。概要については明日の朝話すと」
大悟の命を受けてエリは、姿勢を正す。
「畏まりました。ではペタ、私達は仕事がありますので」
そう言ってペタを手から離した。
「うん。エリ、ユリ頑張ってぇー」
ペタは、手を振ってエリとユリを見送った。
その後、大悟は建物の周りを巡回し、安全を確認してから部屋へと戻って行った。
「しかし、コイツは全然起きる気配がないな」
大悟は、エビスをベットへと寝かせた。
幸せそうな顔で寝ているエビスのほっぺは少し赤くなっていた。
「zzz……」
次の日。
「やはり、自衛隊は危険なようですね」
早朝、大悟の部屋で朝食を食べながら話し合いが行われていた。
話し合いの場には、大悟、エリ、ユリ、エビス、勇巳、優希、努が集まっていた。
「自衛隊については、これから色々調べる。今の自衛隊の現状、こうなった経緯、その他もろもろ」
「分かりました。それで奴等の状況は?」
大悟は食べる手を止め、箸を置いた。
「それなんだが、実は数時間前に動きがあってな。奴等がリーダーである田村と接触したんだ」
〜〜ペタに念伝を付与された男〜〜
ペタに念伝を付与され、情報を得る為の餌にされた男。その男の名は加藤 宗と言う。
加藤達は夜中のうちに基地へと帰還すると、そのまま本部室へと向かった。
トントン。
「失礼します」
加藤は扉を開け、本部室の中へと入った。
「捜索部隊D班リーダーの加藤です。探索中に異質な建物と人物を発見致しましたので報告を」
加藤は近くにいた男に話しかけた。
「そうか。ただ、田村総司令官は今ご就寝中だ。朝になってから」
「私なら、ここにいる」
男達が一斉に振り向くと、そこには田村総司令官が立っていた。
「そ、総司令官。起きてらっしゃったのですか?」
男達は慌てて敬礼をする。
「こんな時間にヘリの音がしたからな。緊急か?」
田村は、加藤達を素通りし本部室にある1番立派な椅子に座った。
「あ、はい。彼が異様な物を発見したと」
そう言って男は、加藤を前に出した。
「捜索部隊D班リーダーの加藤です」
加藤は姿勢を正す。
「ん、お前は。久しぶりだな」
「あ、はい。お久しぶりです」
「それで? どうした?」
「はい、探索中に異様な建物と人物を発見致しました」
「異様な?」
「はい」
加藤は、今までの事を丁寧に説明していった。
「……い、以上です」
話し終えた加藤は、田村の顔を恐る恐る見た。
田村は、腕を組み目を瞑っていた。が、突然立ち上がり指示を出し始めた。
「3日以内に全員を集めろ。今から1週間後に攻撃を仕掛ける。巨大な建物だ。きっと食料や武器が沢山あるはずだ。その全てを頂くぞ」
田村は、そこにいる者全てに聞こえるように声を張った。
「はっ!」
その場にいた数人が動き出す。
「し、しかし、俺と対峙した男はどうするんですか? とても人間とは思えないような強さでしたよ」
「ふん、どんなに人間離れした強さであっても所詮、人間。限界がある。ヘリの航空機関銃、戦車の戦車砲、ロケットランチャー、それらに勝てる者など、この世にいるわけないだろ」
田村は、自信満々に言葉を返した。
加藤は、その言葉に納得してしまう。
「なるほど。それで俺達は何をすれば? 前衛でも後衛でも構いませんが」
「ん? 何を言ってるんだお前は。お前達はミスをした。敵に負け、おめおめと逃げ帰ったんだ。本来なら、すぐさま処刑されるのだが、お前達は有意義な情報を持って来たからな。よって処刑は止め、奴隷に降格し奴らと一緒に働いてもらう」
「な、そんな。なんで俺達が奴らと同じ扱いをされなきゃいけないんだ。俺達は為になる情報を持ってきたんだぞ」
加藤は田村に詰め寄ろうとしたが、数人に羽交い締めにされ、そのまま地面へと押さえつけられた。
もちろん、後ろにいたD班メンバーも同じように羽交い締めにされ、押さえつけられる。
「連れて行け」
加藤達は、そのまま手錠をかけられ地下へと連れて行かれた。
「くそ、なんで俺が」
〜〜大悟〜〜
「と言うわけだ」
大悟が話し終わると、一瞬の静寂が辺りを包んだ。
「……ま、まずいんじゃないか?」
静寂を破り、優希が喋り出した。
「ここが戦場になるって事だろ? 早く準備しないと」
そう言って、勇巳と優希は立ち上がった。
しかし、それを大悟が止める。
「落ち着け。ここは戦場にはならんよ」
「え? ど、どうして?」
「もちろん、こっちから仕掛けるからだ。あっちの場所は掴んでいるし、丁度良く全員集結してくれるんだ。潰すにはもってこいだろ?」
「な、なるほど」
勇巳と優希は、ゆっくりと椅子に座り直した。
「ただ、1つ気になる事が」
「奴隷ですね」
エリが食い気味に答えた。
「そう、それ」
大悟は苦笑いを浮かべて、話を続けた。
「奴隷とは一体なんなのか? 奴等のようにミスを犯した者の集まりであるのならば、助けるつもりは無いが、もし違うなら……」
「探り、救出、殲滅を考えるのであれば、私達やエビスも居た方が良さそうですね」
エリとユリは、大悟の横に移動した。
それを見たエビスが、慌てて大悟の横へと移動した。
「しかしそれだと、ここの指揮、防衛、管理、それと勇巳達の特訓をする者がいなくなってしまうんだよな」
大悟は、腕を組み「うぅーん」と唸り出した。
「何言ってるんですか? それを全てこなすなんて私達には元々出来ませんよ」
「え? そうなの?」
一瞬、時が止まる。
「拙者にも無理でござる」
「いや、エビスに管理は無理だろ」
「なんだとぉーでござるぅ」
エビスは大悟に噛みつこうと飛び掛かる。が、片手で止められてしまった。
大悟とエビスが戯れ合っていると、エリが喋り出した。
「大悟様。1人、その全てを完璧にこなせる人物を知ってます」
「何! 誰だ、それは?」
大悟とエビスは、揃ってエリの方を向く。
「それは……アリス様です」




