45. 城壁
「勇巳、おはよう」
時刻は朝の9時
「おはよう大悟さん。全員準備できてるよ」
勇巳の後ろで荷物を抱えている一同。
「ん、それじゃあ案内するからついて来て」
大悟は勇巳達を物置部屋に案内し、物置部屋内に作ったエレベーターに全員を乗せた。
「全員乗れるんだ。このでっかいエレベーター」
「150人までなら余裕余裕」
「あ、そう」
呆れる勇巳。
ピコン。
エレベーターが1階フロアに到着する。
ガガガー
「わぁー、凄い」
エレベーターの扉が開くと全員が声を上げた。
彼等の目には、美しい装飾が施された巨大ホールが映し出されていた。
女性や子供達はエレベーターを降り、巨大ホールに向かって走り出す。
「凄いわ。まるで高級ホテルのエントランスみたい」
「真ん中に噴水まである」
「見て、このソファーふかふかよ」
「この絨毯で寝れるな」
「なんだこの椅子、ボタンがついてるぞ。……うおぉー、なんだ? 体中が揉まれる」
パンパン!
ホール内に手を叩く音が鳴り響く。
「みんな俺の前に集合。燥ぐのは全ての説明が終わってからにしてくれ」
この声を聞いて、子供と女性陣が集まって来た。
「私ったら」
「我を忘れるってこの事ね」
「恥ずかしい」
大悟は全員が集まったのを確認してから1階の説明を始めた。
「ここ1階には大浴場、調理場、医務室、食堂が設置されてるんだ」
「え? お風呂!」
「お風呂に入れるんですか?」
「早く入りたい」
「いつも拭くだけだったから嬉しいわ」
「落ち着いて、落ち着いて。とりあえず、入るのは全ての案内が終わってからね」
そう言って大悟は大浴場から順に案内して行く。
大浴場。
健康ランドの様にいろんな温泉が楽しめる。電気風呂、ひのき風呂、薬湯、ジャグジーバス、打たせ湯、五右衛門風呂、露天風呂。露天風呂は100人同時入浴可能。それにサウナ、遠赤外線サウナ、塩サウナ、スチームサウナ、岩盤浴も完備。勿論、男女別
調理場。
20人同時調理可能。流し台、コンロ、中華レンジ、大型冷蔵庫、冷凍室、業務用寸胴鍋、グリル、オーブン、電子レンジ、食器洗い機などが完備されている。
医務室。
30人分のベットを設置。除菌室あり。大悟考案の完全スキャナーと薬品、包帯類完備。
完全スキャナーは大悟オリジナルの精密機器。この中に入るだけで、あらゆる病気、怪我がすぐさま判明し、対処法を表示してくれる。
大悟が作った薬品は、この地球でかかる病気の99%に対処可能。
食堂。
200人分の席あり。調理場と隣接している。
「まぁーこんなもんかな。何か質問ある人」
「はい」
数人が手をあげる。
「それじゃあ、そこの女の人」
「はい、ジャンプー、リンス、ボディーソープはどのくらいの頻度で使用可能でしょうか?」
「ん? 好きに使っていいですよ。無くなったら補充しますので」
「えぇぇぇー」
女性陣が騒ぎ出す。
うるさい。
「本当ですか?」
「毎日使えるなんて」
「ジャンプーは週1回だったのに」
「もう我慢しなくていいんですね」
「早く入りたい」
大悟に迫る女性陣。
圧が凄いな。そんなに入りたいのか?
「はぁー、それじゃあ一旦お風呂入ります? 案内は、その後にしますので」
「入ります」
「やったぁー」
「みんな行くゾォー」
「おぉー」
我先にと大浴場に向かう女性陣。
「あれ? 君達はいいの?」
男性陣は、子供も含めて全員そこに残っていた。
「僕達は後でいいよ。それよりも窓から見える壁が気になるんだけど」
勇巳は窓を指差す。
壁? あぁー、城壁のことか。
「それじゃあ、案内しようか? 君達の仕事場になるんだし」
「仕事場?」
「あの城壁は衛りの要。衛るのは男の役目だろ? 男性陣には、あそこで番をして貰おうかと思ってね」
「あぁー、そう言うことか。全然構わないよ。今までもそうやって来たし」
「了解。それじゃあ行こうか」
大悟は男性陣を城壁へと案内する。
「凄いなコレは」
勇巳の前には高さ14m、ビル3階分にも及ぶ城壁が建っていた。
「まずは、城壁の上に行くよ」
そう言って大悟は、皆を城壁の上へと連れて行く。
「絶景だ。ここからなら遠くまで見通せるね」
「だろ。その為にわざわざ城壁の上を歩ける様に造ったんだから」
「え? 警備の為じゃないのかい?」
「こんな所で警備なんかさせないよ。危ないだろ?」
「それじゃあ一体どこで?」
「ふふん、それはね。この城壁の中だよ」
大悟は下を指差した。
「中? でも、この城壁の外側には窓が付いてないから、外を見る事はできないんじゃ? そんなんじゃ警備なんてとても……」
勇巳は上から城壁の外側を覗き込む。
城壁の外側は、一切余計な物が付いていない真っ平らな壁になっていた。
「まぁー、とにかく中に入ってみれば分かる事だよ」
そう言って大悟は階段を降り始める。
勇巳達は大悟の言葉に困惑しつつも、階段を降りて行った。そして、下まで降りると大悟は階段の隣にあった扉を開ける。
「さぁ、どうぞ」
勇巳は意を決して、城壁の中に入っていった。
「……ど、どうなってるんだ?」
驚く勇巳。
勇巳の目に写ったのは、城壁外の風景だった。
「なぜ外なんだ? 城壁の上から見た時は、確かにここにも壁があったはずなのに」
「そのまま外に出て見なよ」
勇巳は言われるがままに外に向かって歩き出した。すると、おでこに何かがぶつかる。
ゴチンッ!
「痛ぁ、なんだ?」
勇巳は、ぶつかった場所を触る。
「なんだ? 何かある。これは……壁か?」
「おぉー、正解。それは外壁だよ」
「外壁?」
「ここ1階と3階の外側の壁には細工をしてあってね。外からは普通の壁に見えるんだけど、内からはガラスの様に透き通って見えるんだよ」
「マジックミラーみたいな奴か?」
「マジックミラーは鏡を使って、内と外の明るさを調節したりしないといけないから、これとは全く違うかな。この壁は、内側に透けて見える魔法式が組み込まれてるんだよ。それによって中から外が透けて見えるんだ」
「な、なるほど。よく分かんないけど、この透明な壁は、外からは普通の壁に見えてるって事でいいんだね?」
「まぁーそうだね」
「ふむ。ところで、透明な壁に向かって沢山並べられている、この異様な物体は何?」
勇巳は、その異様な物体を指差す。
「ん? あぁー、これはM134ミニガンだね。それであっちにあるのがミサイル弾。ミニガン16丁にミサイル弾4丁。それが4面あるから、全部で80丁設置されてるかな。ちなみに3階にも、ここと同じ様に設置されてるよ」
ゴクッ。
勇巳達は息を飲む。
「大悟様」
大悟の後ろにディオが現れる。
「どうした?」
「この近くに怪しい人間が複数」
大悟はディオだけは帰さず、この辺りの警護を任せていた。
何者だ?
「案内してくれ」
「はい」
大悟達は城壁内を移動する。
「あそことあそこのビルの中に隠れながら、こちらを覗いています」
ディオは不審者が隠れているビルを指差す。
こっからじゃ分からないな、ドローンを飛ばすか。
大悟はドローンを取り出し、ビルへと飛ばした。
「うお、いるないるな。見た感じ、敵意剥き出しって感じだな」
「あ、コイツは」
勇巳はドローンの映像を覗き込む。
「知ってるのか?」
「コイツは、ウランのボスですよ」
「ウランの?」
佐々木が戻ってこないから、様子を見に来たのか?
「まぁーいいや。アイツにはこの城壁の実験台になって貰うか」
大悟はニヤッと笑った。




