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42. 裏切り者


 大悟達がシェルターに戻ると、そこには沢山の人が固まって泣いていた。


「御主人様、お帰りなさいませ」


「ただいま。そっちはどうだった?」

 大悟は、抱えていた勇巳を毛布の上に置いた。


「はい、勇巳様が感染者を引き付けてくれたお陰で、コチラには1人の負傷者も居ませんでした」


「それで何人が犠牲になったんだ?」


「ここに何人居たのか分からないので、犠牲者の数は分かりませんが、今ここに残っているのは50人ちょっとだけです」


「4分の3です」

 努が会話に入ってきた。


「そ、そんなに」


「ここには、200人程の人達が寝ていましたから」


「一体何があったんだ?」


「それは、」


「それは僕が説明するよ」

 目を覚ました勇巳が起き上がる。


「起きて大丈夫なのか?」


「こんな時に寝てらんないよ」


「それもそうか」


「それでエビスさんが帰った後なんだけど……」


 時は遡る事、数時間前。



 〜〜勇巳〜〜


「それじゃあ帰るでござる」

 子供や女性に撫でくり回され、ヘトヘトのエビス。


「お、お疲れ様」

 勇巳と優希はエビスを地上まで案内し、見送った。


「それじゃあ戻るか」

「あぁ」


 勇巳達がシェルターに戻ってくると努が血相を変えてやってきた。


「勇巳さん、すいません。あの男、佐々木を見失いました」


「佐々木?」


 誰だ?


「勇巳さんが監視しろと言っていた男です。探索部隊の連中に怒られてた」


「あぁー、それでいなくなったのか?」


「はい、エビスさん達の人気で場が荒れてる時に。気付いたら何処にも居なくて」


 うぅーん、不安だな


「分かった。明日、朝一番に捜索隊を出動させよう。捜索隊のメンバーは今から僕の部屋で決める。努も一緒に来てくれ」


「はい」

 

 それから1時間後


「それじゃあ、メンバーはこの5人。努には隊長をやって貰うよ」


「分かりました」


「うん、それと明日の探索ポイントなんだけど」


 トントン。

 誰かがドアをノックする。


「はい、どうぞ」


 男が中に入ってきた。

「失礼します。就寝時間になりましたので、大ホールの明かりを落としますがよろしいでしょうか」


「あぁ、もうそんな時間か。僕達はもう少しやる事があるから、先に寝てくれて構わないよ」

 勇巳達はホールに布団を敷き詰め、全員揃って寝ていた。それが1番安心できるから


「分かりました。あまり無理はしないで下さいね」


「ありがとう」

 

「それでは」

 そう言って男はドアを閉めた。


「それじゃあ、パッパと終わらして僕等も早く寝ないとね」


「そうだね兄さん」

 しかし、その数分後シェルター内に悲鳴が響き渡った。

「キャー」


「どうした、何があった?」

 勇巳達がドアを開けると、そこには沢山の感染者がシェルター内に侵入していた。


「おい、何があった? なぜ感染者が?」

 勇巳は近くにいた男を掴んだ。


「佐々木です。アイツが感染者達をここに連れてきたんです」


「な、なんだと。それで佐々木は?」


「分かりません」

 すると、奥にある緊急用の裏口の扉が開く音がする。

 勇巳達が裏口の扉に目をやると、佐々木がそこから逃げようとしていた。


「あの野郎」


「まて、優希」

 勇巳は優希の腕を掴んで止める。


「今はあんな奴に構っている暇はない。ここにいる全員をあの裏口から避難させるんだ」


「わ、分かったよ。兄さん」


 勇巳は先程捕まえた男に指示を出す。

「男達に完全武装させて、入り口付近で感染者を止めてくれ。いいか、止めるだけだ。決して無理はするな」


「は、はい」

 男は指示を伝えに向かった。


「優希、努。俺達は子供や女性達を裏口に誘導をする。それが終わったら男性陣に加勢だ」


「分かった」

「はい」

 勇巳達は子供や女性達の誘導を始める。


 そうして着実に避難を行なっていると、勇巳の背筋に悪寒が走った。

 

「な、なんだ?」

 勇巳は嫌な予感がして、入り口付近を見渡した。すると、武装した男性陣が、突然現れたオーガ擬に粉砕されていたのだった。

「グガァァァー」


 不味い、不味い、不味い。このままでは全滅する。


 勇巳は大きく息を吸い込む。

 スゥー

「全員近くの物陰に隠れろぉぉぉー」

 勇巳は信じられないような大きな声で叫んだ。


 オーガ擬はその声に反応し勇巳を睨みつけると、勇巳に向かって走り出し、周りにいた感染者もオーガ擬に続くように走り出した。


「兄さん!」

「勇巳さん!」

 優希と努は勇巳の元に戻ってきた。


「優希、努。2人は今避難させた者達を追いかけて、安全な所まで避難させてくれ」


「兄さんは?」


「僕は感染者を引き連れて、皆とは逆の道を行くよ」


「そんな、駄目だよ兄さん」


「優希、時間がないんだ。誰かが奴を引き離さないと全滅する」


「それなら僕が」


「駄目だ。これはリーダーである僕の役目だ」


「でも兄さんを1人で行かせるなんて」


「いいえ! 1人じゃないですよ」


「つ、努?」×2


「私も勇巳さんについて行きます。無理やりにでも」


「し、しかし」


「勇巳さんを1人で死なす訳にはいけません。私が最後までお付き合いしますよ」

 努はニコッと笑った。


「はぁー、分かったよ。頑固者め。それじゃあ優希、みんなを頼んだよ」


「うん」

 優希の頬に大粒の涙が流れる。

 そして優希は、溢れ出す涙をそのままに、走り出した。


「それじゃあやろうか」

「はい」

 勇巳と努は鉄の破片を2つずつ手に持ち、鉄を鉄で叩いて音を鳴らした。

 カーン、カーン、カーン


「化物共、こっちだ」

 音を鳴らしながら勇巳達は、皆とは逆の道を走って行く。


「どうだ?」

「……来ました。感染者を沢山引き連れて」

「よし、行ける所まで行くぞ」

「はい」


 感染者達は長蛇の列になって勇巳達を追い掛ける。

 そんな絶望的な状態の中で勇巳は、努の事を考えていた。


 努を死なす訳にはいかない。なんとか説得して彼には別の道に行って貰うしかないな。死ぬのは僕だけで十分だ。


「ハァー、ハァー、努」


「ハァー、ハァー、何ですか?」


「ハァー、ハァー、あのな」


「い、勇巳さん前!」

 勇巳達の行く先は行き止まりだった。


 しまった、道を間違えた。どうする? どうする?


 感染者が勇巳達に迫りくる。

 勇巳は混乱したまま、努の前に立つ。

 何ができる訳でもなく、唯、努を死なせたくないと言う思いから、気付いたら努の前に立っていた。

 それを見たオーガ擬は一気にスピードを上げて、一瞬で勇巳の前に現れる。


 死なせる訳にはいかない、死なせる訳にはいかない、死なせる訳にはいかない、死なせる訳にはいかない

 

 気がつくと勇巳は両手を前に突き出していた。

 オーガ擬を止めようとしたのでは無く、体が勝手に動いたのだ。

 そして前に出した両手が光り出し、目の前に光の盾が出現する。その瞬間、勇巳は何かが自分から抜けていくのを感じ、放心状態に陥った。

 意識はそこにあるが、頭が働かない、そんな感覚。


 オーガ擬は突如出現した光の盾に衝突し、動きが止まる。

「グガァ?」

 そして次の瞬間、動きが止まったオーガ擬は、後ろから飛んで来た大悟に後頸部を蹴られ、吹っ飛んでいった。


  


「その後は、大悟さんが全ての感染者を倒して、僕の意識も刈り取ってくれたんだよね」


「あはは」

 笑ってごまかす大悟であった。




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