41. パラディン
「どうしたエビス? 何があったんだ?」
「シェルターが、感染者の集団に襲われたみたいでござる」
「なんだと」
「だ、大悟殿」
「分かってる。エリ、ユリ、エビス、俺について来い。美香達はここで待機だ」
「御意」
「はい」×2
「分かったわ」
「お姉ちゃん、私達も」
「ダメよ、私達じゃ足手まといになるわ。ここは彼等に任せて待ちましょう」
「う、うん」
大悟達は拠点から飛び出し、シェルターへと走り出した。
何故だ? あんな入り組んだ場所に感染者の集団が現れるなんて、誰かが誘導しない限りあり得ない
ここは地下鉄の入り口。
大悟達は魔法で灯りをつけて地下へと移動する。
地下に入ると、以前来た時とは違い感染者の鳴く声が反響して聞こえてきた。
「いるな」
「いますね」
大悟達は、さらに奥へと進んで行く。
すると、感染者を視界に捉える。
大悟は魔剣エスパースを取り出し、瞬時に感染者達の頭を斬り落とした。そして、そのまま止まる事なく奥へと進んでいく。
一体この感染者はどこから? 勇巳達は大丈夫だろうか?
そんな心配をしていると大悟は、ここにあって欲しくないものを見つけてしまう。
それは、見るも無残な姿になって壁に張り付いている感染者の姿だった。
まずいな、またアイツが現れたのか。急がないと
大悟達は数十体の感染者を倒して、なんとかシェルターへと到着する。
シェルターの扉は完全に開かれ、中には数十体の感染者達が散らばってドアや箱を叩いていた。
大悟はシェルター内に入り、MAPを開く。
人の反応だ。
「生存者がいる。感染者が今いる場所だ。手分けして救出するぞ」
「御意」
「はい」×2
大悟達は3方向に別れ、生存者の救出に向かう。
大悟は、ドアを叩いている感染者の元に向かい、感染者達の頭を一瞬で斬り落とした。
そして、ドアを開けようと手を伸ばしたが、ドアには鍵が掛かっていて開けられなかった。
大悟はドアをノックして声を掛ける。
「大丈夫か?」
これで反応が無ければ、ドアを壊して中に入るしかないな
そう思っていると鍵が開き、ドアが開いた。
そして、中から子供達が飛び出し、大悟に抱きついた。
「うわぁーん」
「怖かったぁぁー」
「お兄ちゃぁぁーん」
大悟は子供達の頭を撫でる。
「みんな怪我はないか?」
「うん」
「大丈夫」
「御主人様」
大悟の後ろからエリが話し掛けてきた。
「全員無事か?」
「はい、ここにいる生存者は全て保護しました。子供達と合わせて24人程です。全員怪我はありません」
「24人? 少ないな。勇巳達は?」
「保護した者達の中には居ませんでした。勿論、倒した感染者の中にも」
じゃあ一体どこに?
大悟は蹲み込んで、子供達に話しかける。
「一体何があったんだ?」
「分かんない。寝てたらアイツ等が突然現れて襲われたの」
「そうか。なら、勇巳がどこに行ったか知らないか?」
「ううん、分かんない」
「私、知ってます」
エリが保護した女性が手を上げる。
「勇巳さんなら、あの扉から」
女性が指差した先には、正面の扉と同じ様に、大きくて強固な扉が全開した状態でそこにあった。
「あの扉は?」
「あれは、緊急用の裏口です。何かあった時はあそこから逃げる手筈になっていました」
「それで、なんで貴方達はその裏口から逃げずに隠れてたんだ?」
「勇巳さんの指示です」
「勇巳の?」
「はい。最初は入り口付近にいた男性陣が感染者を抑えてくれていたのでスムーズに避難が出来ていたんです。でも、今まで見た事もない巨大な感染者が現れた瞬間、勇巳さんが『全員近くの物陰に隠れろ』と叫んだんです。あんな慌てた勇巳さん初めて見ました。それで私達は近くの物陰に隠れたんです」
やはりいたか。
「それで、その巨大な感染者は?」
「大声を出した勇巳さんに向かって行きました」
大悟は、その扉へと向かう。
扉の中には、左と右に分かれた道が奥まで続いていた。
なるほど、たぶん勇巳は皆を誘導させた道とは逆の道を使ったんだな。感染者達を引き離す為に
大悟は索敵魔法を発動する。
すると左には沢山の人の反応、右には沢山の感染者と1人の人間の反応があった。
「エリ、ユリ。お前達は左に行って皆を保護し、ここにまで連れて来てくれ」
「はい」×2
「エビスは、ここに残って彼女等を守れ」
「御意」
そう言うと大悟は右の通路に消えていった。
暫く走ると、感染者の最後尾を見つける。
大悟はスピードを落とさず、すれ違い様に感染者の頭を斬り落として行く。
そうして50体以上の感染者を倒した所で、ついにオーガ擬を視界に捉える。
大悟は武器を『瞬速』に変え、さらにスピードを上げてオーガ擬の後頭部を蹴り飛ばした。
オーガ擬は吹っ飛び壁に激突した。
大悟は透かさず『瞬速』で斬り刻み、ハンドガンでトドメをさした。
そして大悟は、休む事なく残った感染者達の処理に取り掛かる。
「闇魔法『漆黒の沼』」
大悟がそう唱えると、感染者達の足下に黒い沼が出現し、足が徐々に黒い沼の中に沈んでいく。まるで底無し沼にでもハマったかの様に。
そして、数秒足らずで感染者達の体は闇の中に消え去っていった。
大悟は感染者達の処理を終えると、勇巳に振り向いた。すると、信じられない光景が目に入った。
なんと勇巳は両手を前に出し、『聖法盾』を発動さていたのだ。
『聖法盾』はパラディンだけが使える魔法。
大悟がいた異世界では、パラディンは初級職のタンクの中で、光属性を持つ人しかなれない極めて稀で特殊な上級職だった。
「勇巳さん、勇巳さん。大丈夫ですか? 勇巳さん」
勇巳の後ろにはもう1人、男性がいた。
「努さん?」
そこに居たのは努であった。
「大悟さん、勇巳さんがおかしいんです。さっきからずっと目が虚ろで、顔色も悪くて」
勇巳は焦点の合っていない目で、ずっと自分の出した盾を見つめたまま固まっていた。
「鑑定」
大悟は勇巳の状態を確認する。
魔力欠乏症だな。
魔力欠乏症とは魔力がマイナスにまで減ってしまった状態を言う。この状態に陥るとどんな生物でも数分で死に至る。しかし異世界では、魔力を他人に譲渡する技法は失われた古代の技術。現代の人で使える人は全くいなかった。そのため魔力欠乏症=死が確定していたのだ。
初心者が高等魔法を使ったんだ。魔力がマイナスになるのは当然だ。しかし、このままでは後、1分も掛からず絶命するな。しょーがない
大悟は勇巳の後頸部を手刀で打ち込む。
勇巳はそのまま気を失い、それと同時に『聖法盾』も消滅した。
「大悟さん?」
「大丈夫、俺に任せてくれ」
大悟は倒れた勇巳に手を翳し、魔力を送り込む。
そう、大悟は古代の技術を習得していた。以前に、王国で、アリスを使って……
勇巳の顔色が徐々に戻っていく。
そろそろいいか。
「鑑定」
大悟は再び鑑定で状態を確認する。
よし、正常値まで戻ったな。
「もう大丈夫。後は目が覚めるのを待てばいい」
「あ、ありがとうございます。大悟さん」
「それじゃあ、一旦シェルターに戻ろうか」
「え、でも、感染者達が」
「それは俺達で処理したから。他の人達もシェルターに戻ってきてると思うし」
「そ、そうですか。それは良かった」
「話はそこで聞くよ」
こうして、大悟達は勇巳を抱き抱えてシェルターへと戻って行った。




