35. 勇巳と優希
大悟達は地下シェルターに戻ってきた。
「優希。よかった無事で」
勇巳は部屋に入ってきた優希を見るや一目散に抱きついた。
抱きつかれた優希は一瞬、頬が緩んだが、すぐに険しい顔に戻る。
「ごめん、兄さん……誰も救えなかった。救出部隊のみんなも」
「救出部隊も? 一体何があったんだ?」
優希は今まで起こった事を説明していく。
「またアイツが出たのか……そんな化物、普通の人間が相手できる訳無いじゃないか」
勇巳は机を叩く。
それを聞いた優希が大悟をチラッと見る。
大悟は頷き、少し前に出て話をし始めた。
「それに関しては、俺が力を貸すよ」
「大悟さんが? でもどうして?」
「このままじゃ俺達以外、誰も生き残れないからね。やっと異世界から戻って来たのに誰も生きていないとか、何の為に苦労して戻って来たんだか分からないじゃないか。だから、そうならない様に手を貸すよ」
「異世界? それじゃあ、あの不思議な力は?」
「そう、異世界の」
「そうか……大悟さん、それなら俺に代わってここのリーダーになってくれないか? 貴方がリーダーになれば」
大悟は掌を勇巳に向け、話を止めた。
「すまない、俺はそう言うの苦手なんだ。それにこう言うのは、勇巳みたいに強い志を持った者がやるべきだと思う。みんな勇巳を頼ってここに集まってるんだろ?」
「だけど」
大悟は勇巳の言葉を遮って話を続ける。
「勇巳、大丈夫だ。俺がお前を強くしてやるよ。自分の力でみんなを守れる様に」
「無理だ。どんなに鍛えてもアイツに勝つのは不可能だよ。俺達のような普通の人間には」
「それは問題ない、考えがある。ただし、勇巳に普通の人間を止める覚悟があるならの話だが」
大悟はニヤッと笑う。
「ちょっと怖いな……だけど」
勇巳は手を体の横に置き、腰を90度曲げて頭を下げた。
「大悟さん、お願いします。俺を強くしてください、みんなを守りたいんだ」
すると優希も勇巳の隣に並び、同じ様に頭を下げてきた。
「大悟さん。お願いだ、僕も強くして欲しい。もうあんな思いはしたくないんだ」
「分かった。俺に任せろ」
大悟は2人の肩に手を置いた。
「ありがとう大悟さん。それで、どうすればいいんだい?」
勇巳は顔を上げる。
「まずは、俺の拠点に招待するよ。そこで今後の事を話そうと思う」
「それは嬉しいな。それじゃあ直ぐにでも向かおう、今は時間が惜しい」
大悟達は部屋を出る。
「すまない、努を呼んできてくれないか?」
勇巳は近くに居た男性に声を掛ける。
「あ、はい。分かりました」
1分程で努がやってきた。
「紹介するよ、彼は飯田 努。僕の補佐をしてくれてるんだ」
「飯田 努です。宜しくお願いします」
「佐藤 大悟です。宜しく」
大悟が努と握手をした瞬間、左の方から怒号が聞こえてきた。
「なんだ?」
そこにいた全員が、声がする方を向いた。
そこには、チャラチャラした男1人と真面目そうな男達が言い争っていた。
「貴様、またサボるつもりか」
「うるせぇーなぁー、お腹が痛いんだよ」
「嘘つけ、さっきまで美味そうに飯食ってたじゃねぇーか」
「おい、もういいから行こうぜ。こんな奴相手にしても時間の無駄だ」
男達はその男を睨みつけて去っていった。
「ちっ、今に見てろよ」
「あの男は? 一体何があったんだ?」
勇巳は努に聞いた。
「あ、はい。あの男は1ヶ月程前に1人で居た所を保護され、探索部隊に配属された者です。最初の内は真面目に探索していたんですが、最近では何かと理由を付けてサボってばっかで。それで同じ部隊の連中が怒ったのかと」
「なるほどな、今度話をしてみるか」
「お願いします。それで私に用事だと」
「あぁー、今から優希と一緒に大悟さんの拠点に行ってくるから、その間の指揮を任せるよ。出来る限り早く戻ってくるから」
「はい、了解しました」
「宜しくね。それじゃあ行こうか、大悟さん。ん、大悟さん?」
大悟は、怒号されていた男をジッと見つめていた。
「あ、申し訳ない。あの男がちょっと気になってね」
「知ってる人かい?」
「いや、全く知らない男だな。だが、なんかヤな感じがするんだ」
「そうか……努、あの男から目を離さない様にしといてくれ」
勇巳は大悟の言葉を聞いて、すぐさま努に指示を出した。
「分かりました」
「いや、そんな感じがするだけなんだが」
大悟は慌てて答える。
「大悟さんにそう言われたら無視は出来ないよ。それに用心するに越した事はないからね」
まぁーそうだな。何も無ければそれはそれでいいし
「それじゃあ行こうか」
大悟達は地下シェルターを出て、駅の地下に向かった。
「ここは?」
「ここは俺専用の道路だよ。ここから新宿駅まで車で行くから」
そう言って大悟は錬金術で車を造り上げた。
「なんでもアリだな」
勇巳と優希は、その光景を呆然と見ていた。
「ほら、乗って乗って」
大悟は、呆然としている2人とエリ、ユリを車に詰め込み、エンジンを掛けて出発した。
順調に車を走らせていると、脳内通信が発動する。
「大悟殿、少し宜しいでござるか?」
エビスからの脳内通信である。
「どうした? エビス」
「凄く大きい感染者が現れたでござるよ」
「え?」
またかよ。




