32. 東京一安全な場所
大悟達はホープの拠点へと出発した。
「なんか人数多くない?」
そこには、大悟達の他に男性3人と女性8人の総勢14人が固まって動いていた。
「あ、いや、女性は全員、今日訪ねて来た人達だよ。ついでだから一緒に拠点に連れて行こうと思ってね」
「あぁー、エリ達と一緒にきた人か」
すると、エリが会話に入ってきた。
「はい、感染者に襲われてたところを私達が助けました。由紀様の探索中では有りましたが見捨てる訳にはいかず、私の判断で此処までお連れしました。責任は全て私に」
「いや、ナイス判断だエリ。俺も同じ事してたし」
「僕達も大悟さんに助けられなかったら、この世には居られなかっただろうし、大悟さん達には感謝しかないよ」
大悟達は和気藹々と会話をしながら拠点に向かっていた。
所々、感染者に遭遇していたがエリとユリが即座に討伐し、それを見た勇巳は「か、彼女達も強いんだね」と驚いていた。
1時間程歩いた所で勇巳達が止まる。
その止まった先には、地下へと続く階段があった。
「ここから地下に行くから、逸れないように列になって行こう」
へぇー、地下鉄を拠点にしたのか?
隊列はこう、前に大悟と勇巳、後ろに男2人とエリとユリ、そしてその間に女性8人である。
男達3人は中に入るとバックから松明を取り出し、ライターで火をつけた。
「さぁ、行きましょうか」
勇巳は松明を前に翳し、歩き始めた。
地下鉄内は、かなり入り組んだ造りになっており、大悟達は右へ左へと右往左往しながら進んでいった。
「よくこんな入り組んだ場所、何も見ずに進めるね?」
大悟は勇巳に尋ねる。
「何千回も通ってるからね。それに僕の父は昔、ここで仕事をしていて、地下の道には詳しかったんだ。僕もこんな世界になってから、父に道をしつこく叩き込まれたよ」
「その父親は?」
「10年前にね」
「そ、そうか」
「君の両親は?」
「俺も同じ様なもんかな」
「そ、そうだよね。この世界じゃ親子揃って生きてる事は珍しいもんね」
「そうなの?」
「そうだよ。親子が感染者に追い詰められた場合、自分の子を守る為に親が犠牲になるか、子供を犠牲にして親が逃げるか、それしか選択肢がない事が多かったんだ。感染者共は永遠に走り続ける事ができるからね、逃げ切る事は難しいんだ。僕もそんな場面を沢山見てきたし」
勇巳は拳をギュッと握った。
家族が一緒にいるには厳しい世界だったんだな
そんな事を思いながら30分程歩き、大きな扉の前で止まった。
「ここが僕らの拠点だよ」
そう言って勇巳は大きな扉を開ける。
ガチャ、ゴゴゴゴゴ
うお、凄いな
そこは恐ろしく広く、100人以上の人達が暮らしていた。
「こ、ここは一体?」
「ここは、地下シェルターだよ」
「地下シェルター?」
「うん、父が発見して多くの人達をここに連れてきたんだ。他の場所にも地下シェルターは存在するらしいけど、僕達が見つけられたのはここだけさ」
「これは凄いな、東京一安全って言ってたのも頷けるよ。それにしても此処には女性が多くて、男性はあまり居ないみたいだけど? それと小さい子供も多いね、ここで出産もしてるの?」
ここには、大人の女性6割、男性2割、15歳未満の子供が2割存在していた。
「男性陣は外に出て、食料の確保や人命救助を行って貰ってるんだよ。出産に関しては勿論ここでしてるよ。子孫を残す事も僕達の使命だし、子は宝、未来への希望だからね」
ちゃんと考えてんだな、今まで出会った大所帯のグループはアホばかりだったから余計感心したわ
「少し見て回っても?」
「構わないよ」
大悟はシェルター内を見て回った。
子供達は鬼ごっこや飯事などで遊び、大人の女性達は輪になって会話を楽しんでいた。
「地上では中々見れない光景だな」
「そうだね、心から笑えるって事はとても素晴らしく、大事な事だと思う。僕はここが日本の、いや人類の希望の場所になって欲しいと思っているよ。ここから新しい人の世界を……」
カッコいいなコイツ。
歩くのをやめ、大悟がそんな事を思っていると横から子供達が話しかけて来た。
「お兄ちゃん、どっから来たの? 一緒に遊ぼうよ」
「お飯事しよ」
「お飯事なんか大人の人はヤラねぇよ、ここは鬼ごっこだろ」
鬼ごっこも大人は、やらんがな
「すまんな、今日はまだ用事があってな。その代わり今度来た時は面白いもんを持って来てやる」
「ホントか兄ちゃん」
「お人形さんがいい」
「みんなで遊べるのがいいな」
「約束するよ」
子供達は大悟と指切りをすると、また皆で遊び始めた。
「それで今日の事を話し合いたいんだけど」
勇巳が子供達が去ったタイミングで話しかける。
あ、忘れてた。それしに来たんだっけ
「了解」
「それじゃあ、あの部屋で話そう」
大悟達は部屋に案内され、部屋に入ると1人の男性が立っていた。
「待たせたね、優希」
「いや、大丈夫だよ兄さん」
勇巳は優希の隣に立ち、こちらを向いた。
「紹介するよ、彼は優希。僕の弟だ」
彼は桐生 優希、18歳。勇巳の弟。
勇巳はここに着いた時、一緒に戻ってきた男性に現状の説明と部屋への待機を優希に伝えて貰っていた。
「初めまして優希です。救出部隊の隊長をしています」
「初めまして、大悟です。よろしく」
大悟は手を差し出し、握手を求めたが優希はそれを断る。
「申し訳ない、私はまだ貴方達を信用していない。兄達を助けて頂いた事には感謝していますが、それとこれとは別の話。私は自分の目で見て判断する様にしているので」
それを聞いたエリとユリが前に出そうになったので、脳内通信で止めてから大悟は喋り出した。
「いいんじゃないですか。信用は人に言われてするもんじゃない、自分で見て、考えてするもんだ」
「申し訳ないね、優希は父に似て頑固なんだ」
勇巳は申し訳なさそうに答える。
「うるさいよ、兄さん」
「あははっ、それじゃあ話し合いを始めようか。まずは椅子に座って」
勇巳が大悟達を椅子に座らせようとした時、部屋のドアが勢い良く開いた。
「た、大変だ。食料調達部隊が襲われ、ビルに閉じ込められた」
「な、なんだと」×2
勇巳と優希は声を荒げた。
おいおい、いつになったら話し合いが出来るんだ?




