30. エビスの一撃
「エリ、ユリどうして此処に?」
「御主人様こそ」
「いや、今はいい。エビスが由紀を発見したみたいなんだ。俺はエビスの元に向かう」
「それでは私達も」
「いや、2人は残ってここを守っといてくれ、少し心配事があるから」
アイツが一体だけとは限らないしな
「あのぉー」
リーダー格の男が恐る恐る話し掛ける。
「あ、えっと、申し訳ないが探してた人物が見つかったみたいなんだ。ちょっと行ってくるから此処で待っててくれないか?」
「え、あぁー。そ、そう言う事なら分かりました。此処でお待ちしています」
「ありがとう」
そう言うと大悟はエリとユリの頭をクシャッと撫でてから外に出た。
「すまないエビス、少々立て込んでて。それで由紀は無事か?」
大悟は走りながらエビスと連絡をとる。
〜〜エビス〜〜
エビスは大悟と別れたあと東に向かって移動していた。
「さて、どうやって探すでござるか」
エビスは索敵魔法を使う事はできない。
異世界にいた時は闘気を探ることで、索敵と同様の事ができていたが、この世界には闘気の概念がない。
異世界の食べ物を食べ、異世界の力を手に入れつつある由紀ではあるが、まだ闘気を生み出す事はできていない。その為エビスは闘気で由紀を探る事はできず、精々20m内の気配を探って行く事しかできなかった。
「由紀殿のコーティングが剥がれるまで後10時間程、それまでに見つけないとでござる。とにかく探し回るしか無いでござるな」
エビスは虱潰しに探し始める。端から端まで。ビルの上も気配を探り、人の有無を確認していく。
しかし見つからない。時間は過ぎ、エビスに焦りが生まれる。
「不味いでござる。大悟殿とユリ殿は索敵が使えるでござる。と言うことは、もう目的の人物に出会っててもおかしく無いでござる。なのにまだ連絡がない、だとするならば拙者が当たりの可能性が高いでござるよ」
そう言ってエビスは動きを止める。
こうなっては仕方ない。彼等の力を借りるしか無いでござるな
エビスは突如走り出し、路地裏へと入って行った。
路地裏に入ると、エビスは口を開く。
「誰か居ないウサか?」
エビスは兎語で喋り出す。
ガサゴソ、ガサゴソ、ポンっ!
「どうしたチュー?」
鼠が現れ、エビスに返してきた。
「拙者エビスと申すウサ。実は人間の女の子を探してるんウサが、見掛けなかったウサか?」
「見てないチュー。みんなにも聞いてみるチュー」
そう言って鼠はどっかに行ってしまった。
5分程待っていると鼠が戻ってきた。
「誰もこの辺で人間の女の子を見掛けてないチュー」
「そうウサか……」
「ただ、人間の男2人なら見かけたらしいチュー」
「本当ウサか?」
「本当チュー、アイツら僕等の食料盗んだチュー。許せないチュー」
地団駄を踏み出す鼠。
「それで、そいつらはどこウサ?」
「まだ、あっちのスーパーにいると思うチュー。案内するチュー」
「助かるウサ」
エビスは鼠連れられてスーパーに到着する。
「ここがそのスーパーだチュー」
「ありがとうウサ。このお礼はちゃんとするウサ」
「食べ物がいいチュー」
「分かったウサ。今度持ってくるウサ」
「わーい、嬉しいチュー。楽しみに待ってるチュー」
そう言って鼠はどこかに行ってしまった。
エビスはスーパーの中に入り、気配を探る。すると奥の方で人の気配がした。
あっちでござるな
エビスは素早く移動し、2人組の男を発見する。
とりあえず隠れて様子を見るでござる。
エビスは物陰に隠れ、2人の会話を静かに聞いていた。
「おい、あったぞ」
「へへっ、まだまだ探せばあるもんだな」
不審な男2人組
「これ全部持って帰るぞ」
「こんなにあれば今日の夜はハッスルできるな」
「あぁー、久し振りの女だ。夜が明けるまで楽しもうぜ」
ピクッ! エビスが女に反応する。
「俺はもうちょっと成長した女の方が好みだけどな」
「そうか? 俺は今ぐらいが最高だな」
「ロリコンかよ、まぁー俺もヤではないがな。ガーハッハッハ」
エビスの顔が徐々に般若に変わっていく。
「よし、全部入れたな。そろそろ行くぞ」
「へへっ、夜が待ち遠しいぜ」
男達はスーパーを出て拠点へと帰って行く。
その後をエビスが、静かに獲物を狙う目をしながら追っていた。
拠点に着き、男達が中に入って行った。
エビスは、それにはついて行かずにビルの周りを一周し、気配で人を探った。
「どうやら奥の部屋に1人閉じ込められてるみたいでござるな。由紀殿ならいいでござるが」
エビスはその奥の部屋の外壁に近づくと、手刀で外壁を斬りつけた。
すると壁が綺麗に切断された。
エビスはそこから中に入る。するとそこには、両手足を縛られながらもコチラを凝視している由紀の姿があった。
「エ、エビスちゃん」
「し。静かにでござる由紀殿。今助けるでござるよ」
エビスは由紀の両手足の縄を解いてあげた。
「エビスちゃん」
縄を解かれた由紀は、そのままエビスに抱きついた。
「無事でよかったでござる」
エビスは、由紀に抱きつかれながらも大悟に脳内通信で連絡をとった。
「大悟殿、由紀殿を見つけたでござる」
「何、本当か?」
「由紀殿は無事でござるよ」
すると暫く返信がなくなる。
アレ? 大悟殿?
エビスは大悟の返信をその場でジッと待つ。
「すまないエビス、少々立て込んでた。それで由紀は無事か?」
大悟から返信がきた。
「無事でござる。それで此処にいる奴らの処分でござるが、拙者に任せてもらえないでござるか?」
「いや、奴らから色々話を……いや、いいや。エビスお前に任せる」
「大悟殿ならそう言ってくれると思ったでござる。お任せくだされ大悟殿」
「ただ、やり過ぎるなよ。お前が本気でやると街が吹っ飛ぶからな」
しかし、この声はエビスには届いていない。大悟の許可が出た瞬間、エビスは殺しのスイッチを入れていた。
「由紀殿、指輪を見せてほしいでござる」
「え? あ、うん」
エビスは由紀の指輪を見る。
「まだ魔力は残ってるでござるな。由紀殿、これから奴等を成敗するでござる。絶対に、絶対に拙者の後ろから離れてはいけないでござるよ」
「わ、分かったよエビスちゃん」
エビスはドアに向かいドアを蹴り飛ばした。
「な、なんだ?」
「おい、女が逃げるぞ」
「ん、兎?」
「お主ら、よくも拙者の弟子を可愛がってくれたでござるな。お礼に死をプレゼントしてやるでござるよ」
そう言った瞬間、エビスを闘気炎が包み込む。それは恐ろしくデカく、後ろにいる由紀をも包み込む程だった。
「喋ったぞ」
「こんな世界だ、兎が喋っても驚かんぞ俺は」
「今日は兎鍋だ」
「絶対逃すなよお前ら」
男達は一斉にエビスに襲い掛かる。
「笑止」
エビスは腰を落とし、右手を引いた。
すると右手の闘気炎が濃く、大きくなっていく。
「闘爆!」
そう言ってエビスは右手を前に押し出した。
押し出された右手は突如光だし、辺り一面を真っ白な世界に変える。そして次の瞬間、極大爆発を引き起こした。
ドォォォゴォォォーン!
その衝撃は凄まじく、由紀も体を起こす事ができない程だった。
爆発が収まり、風が煙を徐々に流して行く。
煙が全て去ると、そこには男達もビルも跡形もなく消えていた。
「成敗完了でござる」
エビスは右手を前に押し出したまま、スッキリした顔で立っていた。




