25. 美沙の才能
「それであの子はどうするの?」
大悟と美香は隅っこで話をしていた。
「鈴は、同じ経験をした者に任せようと思ってる」
「同じ経験って、まさか?」
「うん、エリとユリにね」
大悟達は今、北展望台の練習場に集まっている。
「それじゃあ召喚するから、ちょっと下がってて」
美香達は大悟から数歩離れる。
大悟が手前に手を翳し、魔力を込めていく。
「召喚、エリ」
すると魔法陣が浮かび上がり、魔法陣の中からエリが現れた。
「ここは? あ、ご主人様」
魔法陣から現れたエリは大悟に気付き、一目散に大悟に抱きついた。
「元気だったかい? エリ」
エリの頭を優しく撫でる大悟。
「エリ、ちょっと待ってね。ユリも呼ばないとだから」
しかし、離れようとしないエリ。
まぁー、いいか。
大悟は再び手を翳し、エリに抱き付かれながらも魔力を込め始める。
「召喚 ユリ」
すると、先程と同じ様に魔法陣が現れ、中からユリが姿を現した。
「あれ? 私は一体……あ、ご主人様」
大悟を見つけるとユリは、エリと同じ様に大悟に抱き付いた。
「ユリも、元気そうで何よりだ」
その後
大悟は話をするために全員をリビングのソファーに座らせ、エリとユリに今までの経緯と皆の紹介を済ませていった。
ちなみにエリとユリは大悟から一切離れず、抱き付いたまま話を聞いていた。
「分かりました。お任せ下さい、ご主人様。私とユリで鈴様の闇を取り除いてみせましょう」
胸を張るエリとユリ。
「うん、任せたよ。それじゃあ今日は早いとこ寝よう。もう日が昇りそうだ」
「ふぁーい」
次の日
時刻は12時、全員揃って昼ご飯を食べていた。
「大悟さん、今日は私」
美沙が大悟に話しかける。
「分かってるよ。これ食べたら出掛けるからな」
「うん」
「ご主人様、図書館でしたら私達も一緒に」
「駄目、今日は私」
「あぁー、エリ達は鈴と一緒にいてくれないと。鈴をちゃんとケア出来たら一緒に行ってやるから」
「ホントですね、ご主人様」
「約束ですよ」
大悟に迫るエリとユリ。
「分かった、分かった」
大悟は昼ご飯食べ終えると、MAPを開いて今日のルートを考えていた。
「大悟殿、少し宜しいでござるか?」
突然エビスが、大悟に話しかけて来た。
「どうしたエビス?」
「美沙殿と行くなら是非、剣術を教えてやってほしいでござる」
「剣術?」
「拙者が見た所、美沙殿は3人の中でズバ抜けて戦闘能力が高く、直接戦闘向きだと感じたでござる」
「へぇー、エビスが言うなら間違い無いだろうな。分かった、やってみるよ」
大悟はルートの確認を終え、美沙と一緒にトロッコに乗っていた。
「美沙、エビスが美沙に剣術を教えてやって欲しいって言ってたんだけどどうする?」
「やる」
「即答だな。それじゃあこの剣をプレゼントしよう」
そう言って大悟は剣を取り出す。
「伝説の剣?」
「ただの練習用の剣」
「ブーブー」
そんな事をしている内にトロッコはビルの終着地点に到着した。
「それじゃあ新宿駅に向かおうか」
「駅? 図書館は?」
「まぁまぁ、いいからいいから」
10分程歩き、新宿駅に到着すると大悟はそのまま地下へと下って行った。
「着いたよ」
大悟の前には、拠点と同じ扉があった。
「怪しい」
警戒する美沙。
「大丈夫だから」
そう言って大悟は扉を開けた。
すると、そこには普通の通路があるだけだった。
「?」
「ここはね、俺が山手線の下をなぞって作った通路だよ。ここを使えば安全に山手線を移動でき、尚且つ、これに乗って移動できるんだ」
そう言って大悟はバイクを取り出した。
「何これ?」
「これはバイク。この世界にあった乗り物だよ」
「大きい自転車?」
「あぁー、それでいいや」
まぁ、乗って貰えば分かるだろ
大悟は美沙を後ろに乗せ、エンジンを掛けて走り出した。
「何これぇー、早ーい」
予想通り興奮する美沙
「落ちない様にちゃんと捕まってろよ」
「ほぉーい」
バイクを飛ばし、10分ちょいで目的の駅に到着する。
「それじゃあ行こうか」
大悟達は駅を出てから数分歩き、目的の図書館へと到着する。
「美沙、ここの感染者は俺が剣で倒すから、ちゃんと見ててね」
「分かった」
大悟は練習用の剣を取り出し、美沙を引き連れて中へと入る。
中には沢山の感染者がおり、大悟に気付いた感染者がこちらに向かって走り出した。
「いいかい美沙。まずは、イメージをしっかり持つ事。刃を敵に向け、素早く振り切る」
そう言って感染者の首を一瞬で斬り落とす。
「躊躇してはダメ。躊躇すれば、肉は斬れても骨は斬れないよ」
美沙は黙って大悟の動きを追っていた。その顔は今まで見た事がないほど真剣だった。
そうして大悟は、1人、2人、3人と倒していき、気が付けば30体の首を斬り落としていた。
「もういないかな」
MAPを開き、確認する。どうやら図書館内の感染者は全て倒してしまったみたいだ。
「どうだった?」
大悟が声をかけるも、美沙は大悟の動きを真似て一心不乱に剣を振っていた。その動きはまだまだ不格好ではあるものの、何かを感じさせる動きであった。
「違う美沙、こうだよ」
「こう?」
「そう、あと力入れすぎ。力を込めるのは剣を振るう瞬間だけ、後は自然体で」
そんな事を続けていると、外は日が暮れようとしていた。
「し、しまった」
ついつい指導に熱が入ってしまった。まだ1件目なのに。はぁー、しょーがない今日は図書館は諦めて、もう少し美沙に剣術を教えるか
「美沙、1度感染者を切ってみようか」
「う、うん」
大悟と美沙は図書館の外に出て感染者を探す。すると、すぐさま感染者を2体発見する。
感染者を見つけた大悟は、その感染者を拘束魔法で捕まえた。
「美沙、失敗してもいいから、イメージをしっかり持ってやってみて」
「分かった」
美沙は1度深呼吸をして剣を構える。そして素早く剣を振り、見事首を斬り落とした。しかし、剣を振った後、体勢を崩し豪快にこけてしまっていた。
ふむ、首を斬り落とすイメージに集中し過ぎて、他が疎かになったんだろう。しかし、初めてでここまで出来るとは
「凄いよ美沙。でも次は斬った後の事も考えてね」
「分かった」
「それじゃあ美沙には、特別に闘気を使った剣術を見せておこうかな」
「闘気を?」
「うん、見てて」
大悟は体に力を込め、闘気炎を体に纏わせた。そして、その闘気炎は持ってる剣にも纏わりついた。
「それが剣士の戦闘体勢だ。異世界では、これが出来ないと剣士とは言えないよ」
大悟はそのまま、もう1体の感染者を斬り付ける。すると感染者だけでは無く、後ろのビルも一緒に真っ二つにしてしまった。
「す、凄い」
「明日からは闘気の練習と並行して、剣を振る練習もして行こうね」
「うん」
「それじゃあ今日は帰ろうか」
「え、図書館はいいの?」
「もう日が暮れそうだからね。それに美沙の剣士としての可能性を見れたから満足だよ」
まぁー、本の探索は急いでる訳ではないからね
こうして大悟と美沙は帰路に着いた。




