20. 過去 潜入
次の日の朝、
大悟達は朝食も取らずに領主の屋敷に向かって歩いていた。
「げ、なんじゃーこの広さは」
目的地に着いた大悟は、敷地の大きさにビックリしていた。
領主の屋敷は約14万㎡、東京ドーム3つ分の敷地を有している。
「門から屋敷が全く見えんな、外から屋敷を確認したかったが仕方ない」
屋敷の確認を諦め、大悟は屋敷の囲いを一周して出入口を確認した。
どうやら出入口は正門だけのようだ。
「入口が正門だけなら、馬車は間違いなくこの道を通ってくる。だから、この通り沿いの宿屋に泊まって監視しよう」
「分かりました。では私が部屋を借りてきます」
グイッと前に出て主張するエリ
「ま、任せるよ。じゃあ俺は食料を補充しておこうかな」
大悟はエリと別れ、この通りにある出店へと向かった。
「オッサン、これも頂戴」
「毎度」
「こんなもんかな」
肉、野菜、魚などの多種多様な食材を買い漁った大悟は、満足して宿屋へと向かった。
大悟が宿屋へと歩いていると、1台の馬車が脇を通り過ぎる。
「こんな朝早くに馬車? まさか」
大悟はMAPを開き、馬車の中の生命反応を確認する。すると沢山の生命反応が見られた。
「ちっ、まさかこんな朝早くから来るとは」
大悟は裏路地へ行き、そこから屋根の上に移動し、エリのいる宿屋までかっ飛ばした。
馬車を抜き宿屋へと着くと、魔力を探ってエリの場所を確認する。
いた。
エリのいる部屋を見つけ、窓から部屋に入る。
「御主人様、どうしたのですか? そんなに慌てて」
突然の窓からの登場で慌てるエリ
「目的の馬車が来た。このタイミングを逃すと次いつになるか分からない。だから今行くよ」
「わ、分かりました。私は此処で待機しています。どうかご無事で」
「うん、ありがとう。お金と食料置いてくから好きに使って。あ、それとこれ」
大悟はエリにコインを投げた
「これは?」
「お守りかな、肌身離さず持っててね」
そう言って大悟は再び窓から飛び出す
「さて、後は馬車に入るタイミングだな」
大悟は、屋根の上を走って馬車を追跡している。
馬車に潜り込むポイントは決まっている。
街に入った馬車が1度完全に止まる場所、それは門の前である。門が開くのを待つこの瞬間、それが1番確実に侵入できるだろうと考えていた。
そして、狙い通り馬車が完全に止まる。
大悟は止まった馬車の後ろに降り立ち、静かに中に入った。
馬車の中は、沢山の人が手足を縛られ眠らされていた。
大悟はこの中に紛れ込むため、錬金術で服、縄、首輪を作り、奴隷に変装して寝たフリをした。
準備を終え、その場にジッとしていると馬車が動き出す。
10分程走り、馬車は何処かの建物に入ってすぐ止まる。
「着いたか」
大悟がそう思っていると、荷台の後ろの布が捲られ、杖を持った男が現れた。
男は杖を構え、奴隷達に掛かっている眠りの魔法を解除していく。
1人また1人と目を覚まし、数分で全員が目を覚ました。
「全員目を覚ましたな。おい、お前らをこれから地下牢に連れて行く。そこで時間が来るまで大人しく待機してろ」
男はそれだけ言うとその場から立ち去ってしまう。そして奥から剣士の格好をした者が現れ、俺達に外に出ろと怒鳴ってきた。
ここにいる者は逆らう事なく、指示に従い一人ずつ馬車を降りていった。
「結構いるな」
大悟もそれに続いて外に出ると、そこには10人程の武装した集団がいた。
「俺の後についてこい」
剣士の男は、そう言うと地下に向かう階段へと歩き出した。
奴隷達もそれに続いて歩き出す。
「ふむ、ここの地下には100人程の人がいるな。これ全部奴隷か?」
大悟はMAPを開き、地下の人数を確認していた。
最下層までくると剣士の男は選別を始める。男性、女性、若い女性、子供と分け、次々と牢屋にぶち込んでいった。
大悟の入った牢の中には既に50人程の男性がギュウギュウ詰めに入れられていた。
せまぁ
「兄ちゃん、あんたも盗賊に村を襲われたのか?」
大悟の隣にいた男が話しかけてきた。
「いえ、旅の途中で盗賊に襲われまして」
「じゃあ、あそこにいる兄ちゃんと一緒だな」
大悟は男が指差す方を見ると、そこには隅っこで腕を組んで座っている男がいた。
大悟はその男性をジッと見る。
すると隅っこにいる男性も大悟の視線に気付き、大悟の方を向いた。が、すぐさま視線を外された。
あの男、どっかでみたことあるんだよなぁー。うーん
「あんたら2人以外は全員村を襲われた者達だ」
「これ全員ですか?」
「2つの村が襲われたんだ」
エリの村を襲ったのもここの連中だろうな
「兄ちゃん、あんたはこの後どうする?」
「どうするとは?」
「俺達は、牢から出されるその瞬間に一矢報いるつもりだ。俺達は奴隷にされ鉱山で死ぬまで働かされる運命だ。それならあのクソ野郎共を1人でも道連れにして死んでやる」
勝手に動かれると困るな
「でもまだ、鉱山と決まった訳ではないですよ。もしかしたら、どこかの屋敷に仕えるかも知れないし」
「それも同じだ。玩具のように扱われ、壊れたら捨てられる。あの少女のように」
男性が最後の一言を言った瞬間、大悟の顔が変わり、周りの空気が一変する。辺りが一気に寒くなり、そこにいる全員の具合が悪くなった。
「なんだ、急に寒く」
「気持ち悪い」
「た、助けてくれ」
お、落ち着け俺、冷静になれ
大悟は深呼吸をし、心を落ち着かせる。
スーハー、スーハー
「大丈夫かい兄ちゃん、それにしても今のは一体何だったんだ?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます。それでその少女とは?」
「数日前にこの牢屋に連れてこられた子だよ。意識もなく体中傷だらけで。たぶん、玩具にされて使いもんにならなくなったから、ここに放り込まれたんだろう。その時はまだ息があるように見えたが、あれじゃあ時間の問題だ」
クソ、早くユリを見つけないと
迷ってる暇はないな、行動するか。
大悟はここにいる男達に提案する。
「実は私には解錠の特技がありまして、この牢から出ることが出来ます。どうでしょう一矢報いるのでは無く、全員で生きる為に行動して見てみませんか?」
男性はビックリしていた。が、
「その話乗った。一度捨てた命だったが、生き残れる可能性があるならそれに賭けるぜ」
「俺も乗るぜ」
「やってやる」
「死んでたまるか」
大悟の話を聞いていた他の者達も賛同し、それは牢にいる全ての者に伝わった。
全員の目が変わる。死んだような目をしていた者達が希望の光を見つけ、目に正気が生まれる。
「でも警備の奴等はどうするんだ? 俺達は弱いぞ」
大悟が「私がやります」と言おうとした時、隅っこに座っていた男が立ち上がった。
「私に任してもらおう」
そう言うと男は大悟と見つめ合う。
あー、思い出したわ。こいつなら大丈夫だな
「じゃあ、任せた」
「了解した。」
2人はニヤッと笑う。
「それじゃあ、まず彼を先に出して、ここにいる警備兵を全て倒してもらい鍵をGETします。その鍵を受け取ったら、全員で他の牢の鍵を開けていきます。その後は指示があるまで静かに待機してて下さい。大丈夫ですか?」
「問題ない」
「大丈夫だ」
「ドキドキしてきた」
「それじゃあ行動開始です」




