19. 過去 領主の噂
エリと旅を始めて数日、
ユリの情報は簡単に手に入る。エリが言ってた奴隷商人を見つけ、金を掴ませると面白いように喋り出したのだ。
「あんたと同じ顔の奴隷がいたのは、ここから少し離れた『テラリタ』と言う街だ。そこの領主が飼っていた」
ちなみに今、エリの首には首輪が付いている。
この奴隷商人はエリの存在を知っている為、首輪がないと不審がると思い、大悟が作ったニセモノの首輪を付けている。奴隷紋は手袋で隠した。
「分かった、約束の金だ」
大悟はテーブルに金貨を数枚おく
「へへっ、毎度」
「おい、この事は他言無用だぞ」
「分かってるって、俺は口が硬いんだ」
「ふん、それじゃあな」
大悟とエリは酒場を出て宿屋の部屋に戻る。
「それでどうだった?」
「はい、ユリの情報に嘘はありませんでした。でも……」
大悟はエリの言葉を聞き、大きく溜息をした。
「はぁー、やっぱりな」
大悟はベットに寝っ転がると目を瞑る。
「どうしますか?」
「とりあえず明日、テラリタに向かおう」
「分かりました」
次の日、大悟達は朝早く街を出てテラリタに向かった。
道中、立ち寄った村や街で情報収集をしながら進み、結局テラリタに着いたのは2日後の夕方だった。
「意外と掛かったな」
「寄り道もしましたから。それで、この後はどうしますか?」
「うーん、貴族が相手だからな。アイツの手を借りようと思って、手紙を送ったんだけど戻ってきてないか」
大悟はテラリタに向かう前に、ある人物に召喚獣を使って手紙を送っていた。
「アイツ、ですか?」
「まぁーちょっとね。それよりもまだ時間あるから調べ物をしてくるよ」
「私はどう致しましょう?」
「とりあえず待機で、この部屋に結界を張っとくから出来る限り出ないで」
「わ、分かりました。御主人様がそう仰るなら」
少し不満な顔をしながらも納得したエリ
「それじゃあ、行ってくるね」
大悟は部屋に結界を張った後、窓から飛び出して行った。
数時間後
寝静まった夜の街、そこを1人で歩く大悟の姿があった。大悟は情報収集を終わらせたにも関わらず、宿とは反対方向に歩いていた。
そしてそのまま路地裏へと消えて行った。
そろそろかな?
大悟がそう思うと突然、大悟の周りに黒いローブを纏った集団が現れた。
「何か御用ですか?」
黒の集団は誰も喋らない
静寂が辺りを包む。
そして、大悟の背後にいた数人が動き出す。
黒ローブ達は大悟に迫り、それと同時にナイフを突き出す。が、そこに大悟の姿はもうない。
黒の集団は辺りを見回すが、どこにも大悟の姿はない。
リーダー格の男が指示を出そうとした瞬間、その男は意識を失い倒れる。そして、それに続くように黒の集団がなし崩し的に倒れていく。
黒の集団はパニックに陥る。
逃げ出そうとする者、むやみにナイフを振り回す者、統率のとれなくなった集団は徐々に数を減らし、1分も持たず全滅した。
「ふぅ、ちょっと速く動いただけで見失うなんて、低級暗殺者集団だな」
大悟は、黒ローブ達の首を後ろから手刀で倒して回っていた。
「さて、コイツらをどうするかな。警備団に引き渡しても結局、領主に手を打たれるだけだし」
うーん、どうするか……
「いいや、放置で。もう領主を潰せる情報は掴んでるし、コイツらはどうせ使い捨てだろう」
そう言って大悟は暗殺者集団を放置し、その場から去っていった。
「お帰りなさいませ御主人様」
窓から静かに入ってきた大悟をエリが迎えてくれた。
「寝ててよかったのに」
「いえ、御主人様が起きてるのに私が寝るなんて事はありえません」
律儀な子だな
「それじゃあ、ちょっとだけ話をしようか? 明日話そうと思ってたんだけど」
「はい、御主人様がお疲れでなければ、私は構いません」
大悟は苦笑いをしながら、エリを椅子に座らせた。
「領主のことなんだけど、どうやらキナ臭い噂があるんだ。」
「噂、ですか?」
「うん、盗賊を使って奴隷売買をしてるって」
「それって」
「エリの村に関わってる可能性はあるね。噂が本当ならだけど」
拳をギュッと握り、小刻みに震えるエリ
悔しいんだろうな、領主主導で両親を殺されたなんて
「落ち着けエリ、まだ噂の段階だ。これからその噂について調べる」
「どうするんですか?」
「領主の館には定期的に謎の馬車が出入りしてるらしいんだ。俺はそれが怪しいと睨んでる」
てか、誰がどう見ても怪しいだろ。なんで誰も言わないんだよ。あ、領主だから誰も言えないのか
「俺は馬車に乗り込んで奴隷として、あの館に入ろうと思う。上手く行けば妹のユリにも会えるかも知れないし」
「そんな危険です」
「危険? 俺を危ない目に合わすぐらいなら、世界征服した方が楽だよ。あーでも、1つ不安要素があるな」
「不安要素? なんですかそれは?」
「ブチギレて街ごと消し炭にしちゃわないか」
大悟はボソッと呟く。
「え?」
「いや、なんでもない気にしないでくれ。それよりも明日からは、屋敷の近くに張り込んで馬車が来るのを待つから」
「分かりました」
「それじゃあ早いとこ寝ようか、もう時間も遅いし」
「はい」
ベットに入り明かりを消す大悟。
それにしてもアイツは何をやってんだ。早く手紙をかえ……zzz
寝た。




