表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/54

17. 過去 少女との出会い


「何故怒られるか分かるか?」


「勝手に飛び出したこと?」


「そうだ」


「でも、アレは助けに行かなかったら死んじゃってた」


「じゃあ聞くが、美香は何をした? 銃を構えて固まってただけだろ」


「それは」


「正義感を持つのは構わない。だが、力も無く無策では何も救えない。どうしても助けたいのであれば、行動する前にまず考える事をしてくれ。力なんてそんな簡単には身に付かない、だけど考える事は弱くても出来る。あの瞬間、むやみに飛び出す前にやれる事はあったはずだ」


 あれじゃあ、俺がいなければ全滅だ。


「それに、以前の美香ならこんな事しなかったんじゃない? だから今まで生きてこれたんだろ?」


「そ、それは」


「たぶん、俺が一緒にいたからじゃないか? 俺が一緒にいるから無理をしても大丈夫、なんかあったら助けてくれる。そう思ったんじゃないか? よく考えた上で俺を頼るなら構わない。でも勝手に助けてくれる、手を貸してくれる。そんな考えで動かれたらこっちは堪ったもんじゃない」


「ゴメンなさい」

 俯きながら答える美香


「こんな世界だからこそ慎重に。自分の命を粗末にしちゃいけないよ」

 大悟は美香の頭をクシャクシャっと撫でる。


「私の方が年上なんだけどね」

 少し頬を赤くした美香が、そう呟く。


「それじゃあ、戻ろうか」


「図書館とアイツらはいいの?」


「あぁーアレは後でなんとかするから」


 そんな会話をしながら大悟達は拠点に戻って行った。


「お帰りぃー」


「ただいま」


「どうだった?」

 美香はこっちを見て話していいか俺に目で聞いてきた。俺は軽く頷き、ソファーに座った。

 美香は今日一日あったことを細かく話していき、それを由紀と美沙は黙って聞いていた。


「ということがあったの」


 ……少し沈黙が続いたが、由紀が震えながらも喋りだした。


「お姉ちゃん。もう無茶しないで、自分の命を大切にして、お姉ちゃんがいなくなったら私生きていけない」

 堪えきれなくなった涙が頬をつたる。


「私も美香さんに死なれては困る、まだ何も返せてないのに。美香さんは私達の支えなの、大切な人なの」

 美沙は涙を堪えていたが、体は小刻みに震えていた。


 もしかしたら死んでいた、大切な人を失ったかも知れない、そう思うと耐え切れないんだろう。


「2人共ありがとう。そして心配かけて御免なさい」

 美香は由紀と美沙を呼び寄せ、3人で抱き合った。


 3人は暫く抱き合った後、名残惜しそうに離れ、美沙が口を開く。


「あ、そうだ。大悟さんが美香さんの支えになればいいんじゃない?」

 

 俺を巻き込むんじゃない美沙、せっかく空気と化してたのに


「私は既に大悟のことを信頼しているわ。家族と美沙以外に信頼できる人なんて久しぶりだわ」


 美香は2人を守らなきゃいけないという使命感で、簡単に他人を信用する事が出来なかったんだろうな

 まぁー愚痴ぐらいなら聞いてやるかな。


「まぁー俺で出来る範囲であれば、力を貸すし相談にも乗るよ。もちろん由紀と美沙もね」


「ありがとう大悟」

「ありがとう大悟さん」

「サンクス」


 美沙よ、どこで聞いたそんな言葉


 その後、夕食を食べ、風呂に入り、ソファーに座ってまったりしていたら、美香がこちらに来た。


「ねぇ、ジャスティスのことなんだけど、どうするの?」


「ん、もうちょっとしたら方を付けに行くよ」


「殺すの?」


「うーん、とりあえず交渉してからかな」


「交渉? 図書館の本と?」


「別にあそこにある本に拘ってはいないよ。図書館は他にもいっぱいあるんだし」


「じゃあ何?」


「奴隷の子が気になってね」


「随分優しいのね」

 悪戯っぽく笑う美香


「異世界にいる時に色々あってね。奴隷って言葉が大っ嫌いなんだ」


「何があったの?」


「まぁー話してもいいかな」

 そう言うと大悟は外に目を向け、感慨深げに昔の話をしていった。


 異世界で旅を始めて数ヶ月。

 大悟は、異世界で沢山の奴隷を見てきた。

 最初の内は、そういう世界なんだと割り切っていたし、奴隷に落とされる理由があるんだろうと思っていた。

 しかし、旅の途中で出会った少女により、奴隷に対する考え方が変わっていく。

 その少女はガリガリにも関わらず、沢山の荷物を持たされていた。ろくに食べ物も食べさせて貰えず、重たい荷物を持ってヨロヨロ歩く少女。

 その少女の前には1人の恰幅の良い男がいた。

 その男は度々少女に罵声を浴びせ、倒れこんだ少女を何度も何度も踏みつけていた。

 胸糞悪い。

 この世界では奴隷に対する評価が限りなくゼロに近い。奴隷となった瞬間に人間として扱われなくなるのだ。


 大悟には魔王討伐と言う目的があり、寄り道をしている暇はない。が、こんな光景を素通り出来る程腐っちゃいなかった。

 

 男は未だに少女を踏み付けているが、少女は一切動いていない。危ない状態かも知れない

 そう思うと大悟は男に近づき横から蹴り飛ばす、男は吹っ飛び建物に衝突した。

 大悟は少女に近づき、鑑定で状態を確認する。少女は全身打撲や栄養失調になってはいたが、命に関わるような状態ではないので、一先ずそこに放置した。

 大悟は恰幅の良い男の元に向かい、頬を叩いて目を覚まさせ、胸ぐらを掴んで引き寄た。


「おい、あの少女を金貨10枚で買ってやる」


「え?」


「聞こえてんだろ、おい、10枚で買ってやるっていってんだよ」


「あ、はい。10枚なら」

 この世界の奴隷の相場は金貨10枚と言われている。もちろん100枚を超える奴隷もいれば、1枚で取引される奴隷もいる。この少女は金貨1枚で取引されていたこともあり、男はすんなり大悟の提案に乗ったのである。

 

「それじゃあ解除しますね。へへへっ、奴隷契約解除!」


 ピカー!

 その瞬間、少女の左手についていた奴隷紋が消えた。が、首輪は取れていない。


「おい、首輪が取れてねぇぞ」


「へへへっ。首輪は奴隷の証明、奴隷紋は主人との契約、主人を変更することはできても奴隷を辞めることはできませんぜ。奴隷は一生奴隷ってね」


「ふーん、じゃあ今主人が俺に変わったってことか?」


「まだ変わってませんぜ、今そのガキは主人無しの状態。3日以内に奴隷商に行き、新しく契約を結ばなくてはいけませんぜ」


「3日過ぎるとどうなる?」


「首輪が爆発して、頭と胴が離れ離れになりますぜ」


「そうか。ほら約束の金だ」

 金貨を男の前に投げると、男は慌てて金貨をかき集めていた。


 大悟は未だ意識を取り戻していない少女を抱え、その場から立ち去っていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ