表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

ひかみざき あかね 5さい

「せいやッ!!!」


「んッ…!」



私は繰り出された刺突に対し、大剣をまるで身体の一部のように片手で防いで見せる。

栞奈さんのただの刺突でさえ、まともに受ければ貫通力と振動で骨が軋むのだが、ニルの力を得てからというもの、身体能力が確実に増していた。



「混沌の一撃!」



黒炎を纏ったアスカロンを振りおろし、大地ごと一刀両断する。炎は地を駆け抜け、一直線に栞奈さんへと向かう。

栞奈さんは一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻してルーンを刻む。

Wを刻んだことから『風』のルーンだと悟った私は、すぐに反撃に移る準備をした。


混沌の一撃を躱した栞奈さんは、風すらも置いて行くような速度で突進を仕掛けてくる。



「覇龍王圧殺!!」



私は目の前に黒い重力球体を生み出すと、それを縦に切り裂く。

その直後に私の前方へ強力な重量による圧殺が行われる。

栞奈さんの速度が格段に落ちたところを見た私は、アスカロンを縦に構え、身体を仰け反らせて投げた。

空間すらも裂きそうなアスカロンの大車輪が栞奈さんを捉えた。

栞奈さんはこの重力力場では防御に回るしか選択肢がなく、槍で大剣を受け止めに入った。


ガガガガガガガガ――――――!!!


大剣は地を削りながら栞奈さんの槍と拮抗する。

私はそれを見た瞬間に覇龍王圧殺を解き、栞奈さんへ仕掛ける。



「炎よ、敵を切り裂く力を…!」



両手に黒炎の剣を生み出す。

二刀流となった私は回転するアスカロンを空中へ蹴り飛ばす。それと同時に栞奈さんの槍が仰け反られ、腹部に隙が出来た。



「炎剣焔!!」



炎剣を振り抜いた。

上段の二連撃からの膝を狙った一撃。

だが、栞奈さんは強かった。

攻撃する前に顎を蹴りあげられたのだ。



「うげッ!うぅ…痛い……頭がぐわんぐわんするゥ…」



軽く空へ4mくらい蹴りあげられ、地面に背中を強く打った。

ヒュンヒュンと回転して落ちてきたアスカロンがすぐ傍に落ちて、役目は終わったのか消えていく。

それと同時にニルの力もすうっと消えて行った。



「狙いはいい。ですが、私の方が速かったですね」


「栞奈さんを超える速度で剣戟が打てたら何も怖くないよ…」


「私を超えるつもりでトレーニングに励んでください。今はまだ私の方が上ですが、あなたの成長は目を見張るものがある。近い未来私を超える力を身に着けるかもしれませんね」


「買い被りすぎですよ……」


「余り謙遜しない方がいいですよ。あなたには戦闘の才能がある。朱音が私を超えるまでは、目標でいてあげますから、頑張りなさい。切りもいいですし、今日はここで終わりにしましょう」


「は、はい!お疲れ様でした!」



栞奈さんは槍を片づけて草原を後にした。

しかし、私が過去に行くという話をしてから栞奈さんの修行がより一層厳しくなった気がした。それは当たり前のことなのかもしれない。

軍隊でも長官が部下に厳しい訓練を課すのは、部下に死なれたくないからだと聞く。

栞奈さんも私が過去に行っても、簡単にしなないために厳しい訓練をしてくれているのだと思うと疲れなどどうってことない、って思いたい………――――




「ありがとうございました!」


「うん、大分術式構成の速度が上がって来たね。流石豊姫さんの娘ってところかな」



場所は変わりトレーニングルーム。

理沙は毎日美波による訓練を受けていた。姉のコンバットタイプとは異なり、妹の理沙は生粋のウィザードタイプである。舞香がいなくなった日本でトップクラスの実力を持つ美波に訓練を見てくれることは理沙にとって光栄なものであった。



「でも、なんだか今日の理沙ちゃんは少しトレーニングに身が入っていないように見えたけど」


「あ、すみません……」


「どうかしたの?私に話せること?」


「実は……姉の朱音のことなんですけど……」



そう、朱音のことだ。

朱音は近々過去へ行くそうで、トレーニングに行く前にちょっぴりだけ豊姫から聞いた時はあほらしく笑ってしまったものなのだが、言ってくれた豊姫の顔には不安の影が差していた。



「理沙ちゃんは、朱音ちゃんが過去に行く話は聞いた?」


「はい……そのことなんです」


「何が気になるの?私に答えれることなら何でも答えるよ」


「本当に過去に行けるんですか?」



これが一番聞きたかった。

そんな嘘のような話に皆が賭けていることが気になったのだ。その過去に行けると言った本人はあの黒い球を置いて行った怪しい人だという。信憑性に欠けるではないか。



「科学的証拠がないから何とも言えない。でも、私個人が思うには、99%の確率で行けると思う」


「どうして……」


「理沙ちゃんは、紅哉さんから朱音さんの話を聞いたことがないかな?」


「朱音さん…?うちの姉ではなく?」


「いやぁ……君のお姉さんでもあるのだけれど、ちょっと違う人」



美波の困ったような顔を見て、ますます理沙は混乱した。



「その朱音って人は未来から来た朱音ちゃんなんだよ。やっぱり……未来を変えるために過去へ来たんだろうね………今の朱音ちゃんと未来の朱音さんを見ると、そっくりだもん。そしてすっごい強かったんだ。紅哉さんも敵わなかったほどね」


「未来の朱音凄いですね……」



紅哉を圧倒している未来の大きくなった朱音を想像して理沙は笑うしかなかった。

どうすればそこまで成長出来るんだと。


もう一つだけ聞きたいことがあった。



「あの、もう一つだけいいですか?」


「なに?」


「私も過去に行けるんでしょうか……」


「それは…………分からないな…」



数秒思案してから美波は『ごめんなさい』と目を伏せた。



「いいんです。自分で答えを探してみるんで」


「そっか。力になれなくてごめんね」


「いえ!それでは、お疲れ様でした」


「うん、また明日ね」



理沙は走ってトレーニングをルームを出て行った。

残された美波は、システムの管理を遊佐へ引き継ぐためにシステム管理室に寄る。が、その前に通る開発部に寄って行く。

扉の前には『アイリ以外入室禁止!』と書かれているが、弟子のためにも聞いておかねばならない。



「すみません、美波ですが」


『ほえ?張り紙見えなかった?』


「作業中なのは分かっているのですが……本当に少しだけお時間をいただきたくて…」


『………分かった。少しだけね?』



入り口でインターホンからアイリとの通話を終えると、自動扉が開いた。

中は誰もいなかった。それはもちろんなのだが、いつもせわしなく動いている研究員の姿がないと、どうも寂しく見える。

ここは開発部と言っても研究部であり、地下1階と2階が油まみれの泥まみれになる本当の開発部だ。



「それで何かな?アイリ、とっても忙しいんだけど」


「お時間はそこまで取らせません」



アイリは様々な機器を操りながら、後ろの席に座った南に目もくれず作業を続ける。



「えっと、まぁコーヒーでも飲んでいいよ。アイリ手が離せないから、ごめんね」


「いえいえ、こちらが一方的に押しかけたのですから、お気になさらず。それでですが、先ほど火神崎理沙からこんな話を聞いたんです」


「妹ちゃんの方ね」


「自分も過去に行けるのか?と」


「………難しい質問を投げられたね」



一瞬だけアイリの手元が止まった。



「はい。それでアイリさんなら何か分かるのではないかと…」


「それにはもう答えは出ている。残酷な答えになっちゃうけど、いいかな」


「はい。理沙ちゃんはここにいないので」


「行けないよ。理由は簡単、母親が龍の遺伝子を持っていないから」


「やはりですか……」


「半龍人じゃダメなんだよ。龍人にならないとタイムトラベルは成功しないと思う。まだどういう原理で行くのか分からないけど、さっき面白い人が訪ねて来たからそれで確信を得た」


「面白い人?ですか」


「あ、これ内緒だったんだ。ごめん、話せないや………えと、それでまぁ行けないって所だったね。あの人でもダメだったって事は紅哉くんでもダメってことになる。んじゃ、瑠璃ちゃんもダメになるから、その流れで理沙ちゃんも行けないってことが分かったの。ってことはね、母親も父親も龍の遺伝子を持った朱音ちゃんならどうかと言うと、大丈夫らしい。あのニルちゃんの宝玉も発動したそうだし、朱音ちゃんだけが過去に行けるそうだってさ」


「豊姫さんが一般人ですもんね………それで宝玉というものは?」


「朱音ちゃんと理沙ちゃんが貰ったっていう黒い宝玉。あれはニルちゃんの意識というか、魂が封じられた物だったらしい。あれを解放するためには同族の龍が触れるしかないそうなんだけど、朱音ちゃんが解放出来たってことは……分かるよね?」


「朱音ちゃんが龍人ということですか…」


「まぁ人型の龍ってところかなぁ。今度朱音ちゃんの身体をじっくり見たいと思うけど、豊姫ちゃんと癒理ちゃんが猛反対しそうだからやらないけどね。でも、朱音ちゃんはちゃんとした人だよ。ただ龍の遺伝子をその身に秘めているだけであって、人には変わりはない。でもまぁ、物事を覚えるのが天才並みだったり、戦闘心が高かったりするのは龍の力なのかな」



アイリはそう言ってポイっと資料を投げてきた。

受け取った美波はタイトルを見た。


『火神崎朱音 研究データ』



「これって!?アイリさん!」


「あ~もううるさいってば。これは紅哉くんに頼まれたからやったんだよ。決してアイリが独断でやったことじゃないってば。それに、この事は内密にね?瑠璃ちゃんも豊姫ちゃんも本人すら知らない研究データだから。これを知っているのは、雅文さん、直海さん、アイリ、セレナお姉ちゃん、佐鳥さん、お母さん、お父さん、紅哉くん、舞香ちゃん、龍一さんだけだから」


「見て……いいものなんですか…?」


「君が絶対に口外しないって誓うなら見てもいい。もし、見ないと言うなら、仕方ないけどそこの机にある薬を飲んでもらう事になるね。ああ、毒じゃないよ。あれは10分前の記憶をなくすものだから、特に身体に害はないよ。ちなみにアイリの好みでレモン味」



美波は目の前の資料を掴んだまま気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした。



「絶対に口外しません」


「うん、なら見てもいいよ。いま、この研究所の監視カメラとか全部ダミーを流させているから別に騒いでもかまわないけど、出来るだけ驚かないで静かに読んでね。それと絶対に紅哉くんと舞香ちゃんを嫌いにならないでね……」



美波はページをめくりあげた。



これは最重要機密資料である。

炎道雅文、炎道直海、四条クロフィード、四条麗華、四条セレナ、四条アイリ、火神崎紅哉、火神崎舞香、佐鳥天音、浅野龍一以外の閲覧を禁ずる。



2055年 7月20日 午前9時30分 記録開始。


最近朱音の様子がおかしいと瑠璃に言われた。

俺は仕事柄いつも夜遅く帰ってくるため、我が子の顔を満足に見る時間などそうなかった。そのせいか、生返事で返してしまったのだが、念のため今度医者に連れて行くと言った。


この事を舞香に相談した結果、普通の医者には連れて行くな、とあいつは言った。

連れて行くならアイリの元へ行けと言う。あいつの言うことはいつも分からない。感情が戻ってからか、考えている事を直に俺に言うようになったため、天才の考えに頭を悩ます日々が続いている。

おっと、私事の愚痴を言う記録ではないな。



「何故アイリの所に連れて行くんだ?」


「それはあの子が普通の子じゃないからよ。お兄様も分かっているでしょう?朱音は私たちと同じ龍の遺伝子を継いだ子。多少の病気程度じゃ龍の遺伝子によって強化された白血球が働きかけて症状が起きる前に相殺するわ」


「分かっていたが……んじゃなんだ、普通の症状ではないというのか?」


「そう見るのが妥当でしょう。とにかく私も着いて行くから今すぐ朱音を連れてきて」


「はぁ……ちょっと癒理に仕事預けて来るから待っていろ」


「お兄様、早く…ね?私、待つのは余り好きじゃないの」


「へいへい」



俺はそう言って私服に着替えながら総督の部屋へ入る。



「師匠、どこかお出かけですか?」



ファーヴニル部隊隊長室でもある総督室で癒理は大量の書類にサインをしていた。



「あぁ、なんだか朱音の様子がおかしいらしくてな。病院に連れて行ってくる。悪いが、仕事を預けてしまうようになってしまうが…」


「構いませんよ。師匠は働き過ぎなのですから、娘の面倒を見るお父さんをしてきてください」


「分かった。ファーヴニル部隊の指揮権はお前に預ける。何もないとは思うが、何かあったらお前が指揮を取れ」


「了解しました!」


「んじゃ、行ってくる。後は頼んだぞ」


「はい。行ってらっしゃい」



夏ということもあり、白のワイシャツとジーパンというラフな出立ちで俺は廊下を歩いて行く。

途中部下から何度もお出かけですか?と聞かれる度に娘に会いに行く、と言うと何故かみなにやにやと笑われる。



『あなた働きすぎなのよ』


『マスターが働いてばかりだから、みんな心配しているのだろう。そんな働いてばかりのマスターが急に娘に会いに行くと言ったらみんなにやにやするに決まっているだろう。上司の意外な顔が見れて面白がっているんじゃないのか?』



ヴリトラとニルが何か言っているが、俺は無視して駐車場に停めてある青塗りのスポーツカーに乗り込む。



「良い天気だな」


「そうね。ここのところ魔物の襲撃が少ないわよね」


「その分書類作業ばかりだがな」



ニルとヴリトラは後部座席で外の景色を眺めながら、最近の事を語る。

車を走らせながら数十分。

子供の頃に冗談で買ったみたいな屋敷についた。あの頃のメイドさんはそのままだが、朱音さんだけはいなくなった。

女将さんは今も現役で働いてくれて、毎日美味しいご飯を作ってくれる。



「オレとヴリトラはここで待っているぞ。さっさと連れて来い」


「お前も舞香みたいなことを言うようになったな…」



紅哉は車から降りて家の扉を開ける。



「帰ったぞ~っと」


「あ、紅哉くん。どうしたの?お仕事中じゃないの?」


「あぁ、瑠璃から朱音を病院に連れて行けって言われてね。それで俺が駆り出されたわけだ」


「なるほどね。朱音ちゃんなら自分の部屋で遊んでいると思うよ」



メイドさんから朱音の居場所を聞くと、階段を上って2階へ上がる。

朱音の部屋と書かれた札の扉を開けて中へ入る。

そこにはまだ5歳になったばかりの我が子がいた。



「あれ?おとーさん?」


「おう、お父さんだぞ。今日は朱音と一緒の日だ」


「うわぁ!おとーさん!!」


「おっと、走ったら危ないぞ?」



お絵かきを中断して手を広げた俺に抱きついてきた朱音を抱き上げて、高い高いする。

無邪気な笑顔で喜ぶ我が子に異常など感じられない。しかし、いつもよく見ている母親の瑠璃がそう言うのだからそうなのだろう。



「朱音、ちょっとお父さんとお出かけしようか。お母さんがな、朱音の身体に悪いばいきんがいるかもしれないからお医者さんに見て貰えって言うんだ」


「ほえ?わたし元気だよ?」


「だよな~でも、お母さんが連れていけって言うんだよなァ……まぁお医者さん行った後はお父さんとどこかで掛けようか」


「うん!お父さんとお出かけ久しぶり!あ……」


「ん?どうした?」


「りさは?」


「理沙はいま雅文お爺ちゃんと直海お婆ちゃんのところだろ?」


「うん…そうだった……りさ、お父さんと遊ぶの楽しみにしてたのに……わたしだけいいの?」


「お前は良い子だな……大丈夫だ、朱音とこっそり遊んだら、次は朱音にばれないようにこっそり理沙と遊ぶからな」


「えー!朱音も一緒に遊ぶー!」


「あははは!そうしたら不公平だろう?まぁ理沙も朱音と同じ事を言いそうだがな。よし、外でニルとヴリトラが待っているから行くぞ」


「ニルも!?ヴリトラもいるの!?」


「あぁ、一緒だぞ」


「わーい!公園でかけっこしたい!」


「まずはお医者さんな?」



紅哉は嬉しそうに抱きかかえられている朱音を抱いて部屋を出て行った。


ものすごく幼いタイトルで始まりました今回ですが、龍の遺伝子について語られていく章となるのですかね?(おい

いえ、ネタバレとかできませんから、こんな曖昧なことしか書けないのですよ。これはあくまで後書きですからね?特に何も期待するこもなく、愚痴を書くような後書きですからね!?

えと、それでは今回紅哉くんと舞香ちゃんが登場しましたね。バリバリ働くお父さんと冷徹最強の天才叔母さん。

うわぁ、字にすると紅哉が完全に負けちゃっているのですが、仕方ありませんね。

実際舞香の方が何倍も強いわけですしおすし。

これからどんな展開になっていくのか!それは私の腕しだいww

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ