音楽室にて
放課後、俺は問題の音楽室の前に来ていた。
中からは金管楽器の音が響いていた。
まだ吹奏楽部が練習中のようだ。
今は6時半。
もう終わっているころだと思ったのに、随分遅くまで練習しているんだな。
しばらく教室で待ってようかと引き返そうとしたとき、ガラッと音楽室のドアが開いて女の子が出てきた。
……泣いてる?
ボブヘアーの茶髪の女の子が目を真っ赤にして飛び出してきた。
「あ…」
目が合ってしまった。
まいったな…ほっとくわけにもいかないし。
女の子は気まずそうに目を伏せて立ち止まってしまった。
「あ、えっと、だ、大丈夫か?」
「大丈夫に見えます?」
「いや、見えない…けど」
「ですよね」
「……」
すげー気まずい。
「「あ、あのっ」」
声が被ってしまった。
「ど、どうぞ」
「いや、そちらこそどうぞ」
「あ、えっと、あの、あなたって転校生の紺屋くんですよね?」
「!!そ、そうだけど…なんで俺の名前知ってんの?」
「えっと、友達が紺屋くんと同じクラスで、ガリガリで目付き悪いのが転校生だって言ってたから……」
俺の世間的評価って…
目付き悪いのはよく言われるけど、ガリガリじゃないんだけどなぁ。
一応鍛えられてたから筋肉あるし!
「ひでー言われよう」
「ご、ごめんなさい」
「いや、あんたは悪くないだろ。それよりさ、あんた名前は?」
「え?えっと、吉倉すずと言います」
「じゃあ吉倉、音楽室の噂、知ってるよな?」
「あ、さっちゃんのことですか?」
「さっちゃん?」
「えっと、椎名皐月ちゃんのことです」
「そう!それだよ!」
「もちろん知ってますよ。さっちゃんが消えた時、あたしも一緒に音楽室で片付けをしてましたから」
「あ、やっぱあの噂ほんとなんだ?」
「はい、そうです…」
「そ、それって何時くらい?」
「たしか、8時くらいです。昨日、練習が終わったのが7時半くらいでしたから」
「ありがとう、じゃあその時間にまた来るわ」
俺が去ろうとすると
「あ、あのっ」
吉倉が叫んだ。
「吉倉どした?」
「…紺屋くんは何者なんですか?」
俺はくすりと笑って答えた。
「正義のヒーローかな」




