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14.真の慈善?

ゴトゴトと激しく車体を揺らしながら、アヴァリスの乗った馬車は、すでに夜の帳がすっかり下りた街の暗い通りを猛烈な勢いで疾走していた。御者台ではブラック伯爵が自ら手綱を握り、夜風に漆黒の髪をなびかせながら、見事な馬さばきでスウィンデル邸への最短ルートを突き進んでいる。


一方、アヴァリスは馬車の座席の中で、先ほど地下金庫から横領してきたばかりの、ずっしりと重い二つの麻袋を、まるで我が子のように必死に両腕で抱きしめていた。金貨の擦れ合う音が、彼女の耳には最高の賛美歌のように聞こえていた。だが同時に、心臓は今にも飛び出しそうなほど激しく脈打っている。


(間に合って、間に合ってちょうだい……! ここまでして手に入れられなかったら、私は一体何のために――)


「伯爵! ヨハンナ夫人の馬車はまだ見えないの!? もう追い抜いたのかしら、それとも!」


「院長、前方をご覧ください! 馬車が停まっています。一足遅かったようだ!」


アヴァリスが慌てて窓から顔を突き出すと、その視界の先、月明かりに照らされたスウィンデル邸の門前に、ヨハンナ夫人の紋章が入った立派な馬車が確かに停車していた。


「そんな……!」


血の気が引くと同時に、身体の奥から灼けつくような焦りが噴き上げる。頭の中で、間に合わなかった場合の惨めな未来――王都に返り咲くどころか、教会の金を使い込んだ事実だけが残る未来――が、恐ろしい速さで駆け巡った。


門の前に自分たちの馬車が激しい音を立てて急停車するやいなや、アヴァリスは元公爵令嬢としての淑女のプライドも、修道院長としての威厳もすべて放り投げ、ドレスの裾が土埃で汚れるのも構わずに飛び降りた。そして、スウィンデル邸の玄関へと猛突進した。


「待ちなさい、ヨハンナ様! その取引、異議ありですわ!」


室内では、机の上にヨハンナ夫人が持参したであろう金貨の袋が開けられており、輝く金貨が顔を覗かせている。まさに、売買契約書に署名しようと、ギルバートがペンを手に取ったところだった。サブリナは傍らで、不安と複雑な表情を浮かべながらその手元をじっと見つめている。


(あと少し……あと少しで、遅かった!)


アヴァリスは肺が焼けるような息切れを抑えながら、必死に頭を働かせた。ここで一秒でも躊躇えば、すべてが終わる。


「まあ、院長様? それにブラック伯爵様まで……こんな夜更けに、一体何事ですの?」


ヨハンナ夫人が驚いたように椅子から立ち上がり、美しい眉をひそめた。アヴァリスは肩で息を荒くしながら、抱えていた二つの麻袋をドスンと机の真ん中に、これみよがしに叩きつけた。重々しい金属音が室内に響き渡る。


「ギルバート様、そのペンをお置きなさい! 今すぐにです!」


その声は、自分でも驚くほど上ずっていた。


「ヨハンナ夫人があなた方に提示した金額がいくらかは知りませんが、このアヴァリス、その金額を遥かに凌駕する――現金で金貨二千枚を今ここで、この場でお支払いいたします!」


「に、二千枚……!? 院長様、それは本当ですか!?」


ギルバートの手からペンがポロリと床へ落ちた。その目には、困惑と、あからさまな欲望の色が同時に浮かんでいる。サブリナも驚愕し、その美しい琥珀色の瞳を限界まで見開いて硬直している。だがその硬直の中に、一瞬だけ、何か――計算するような色がよぎったのを、アヴァリスは興奮のあまり見逃した。


「院長様、これはあまりにも横槍が過ぎますわ!」


ヨハンナ夫人が怒りでその美しい白い肌を赤く染め、アヴァリスに向かって一歩詰め寄った。


「私はスウィンデル家の皆様の困窮を救うため、こうして正当な売買交渉をしていたのです。神に仕えるあなたが、なぜそこまでしてこの古い肖像画に執着するのですか? まさか、この絵に何か、私たちに知らされていない特別な秘密でもあるとでも仰るのですか?」


核心を突く指摘に、アヴァリスの背中に冷や汗が流れた。心臓が一瞬、止まったかと思うほど大きく跳ねる。


(見抜かれた……? いいえ、まさか。ただの当てずっぽうよ。ここで少しでも動揺を見せたら、すべてが終わる)


自分に言い聞かせながら、海千山千の強欲院長はすぐにふふんと鼻で笑い、扇子を広げて胸を張り、これ以上ないほど堂々とした態度で強弁を振るった。表情の裏では、心臓が痛いほど早鐘を打ち続けていた。


「とんでもない! 秘密などあるはずがありませんわ、ヨハンナ様。あるのは神の深く大いなる慈悲、それだけです!」


言葉を紡ぎながら、アヴァリスは自分の嘘があまりにも滑らかに口から出てくることに、内心で薄気味悪ささえ感じていた。だが止まるわけにはいかない。


「私は、ヨハンナ様が夫を亡くした孤独と寂しさから、価値のない古い絵に財産を投じようとするのを、聖職者として見過ごせなかっただけですわ。あなたを無駄遣いという過ちから救い、そして哀れなスウィンデル家にはより多くの財政的援助を与える。これぞ、神に選ばれた私が成すべき真の慈善活動なのです!」


「なんですって……! 私の親切を無駄遣いだなんて!」


ヨハンナ夫人の声が怒りに震えた。その手が、思わず握りしめた金貨の袋の口をぎゅっと掴む。譲る気は毛頭ない、という強い意志がその指先から伝わってくる。


一触即発の空気の中、ギルバートは机の上の二つの金――ヨハンナ夫人の袋と、アヴァリスの麻袋――を交互に見つめ、額に汗を浮かべながら唇を震わせた。


「あ、あの……お二方とも、どうか落ち着いて……」


その声は弱々しく、誰の耳にも届いていないようだった。彼の視線は、明らかに金額の大きいアヴァリスの麻袋へと吸い寄せられている。


「ギルバート様、お分かりですね?」


アヴァリスは追い打ちをかけるように、麻袋をさらにギルバートの目の前へと押しやった。


「どちらの手を取るべきか、賢明なあなたならもう迷われませんわよね?」


アヴァリスは完全に勝利を確信した醜い笑みを浮かべたが、その笑みの下で、心臓はまだ痛いくらいに脈打っていた。ヨハンナ夫人の視線はなおも鋭く自分に突き刺さり、ギルバートの手は麻袋と契約書の間で迷うように震え、サブリナは静かにこの光景のすべてを見つめている。


強欲な院長が並べ立てた大嘘が、深夜の応接室にどこまでも虚しく響き渡っていた。

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