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柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


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9/22

第9話 美化活動発表会~表彰式

 3年生まで全クラスの美化活動の発表が終わった。


『続いて、表彰に移ります』


 そうだった。

 発表して終わりじゃなくて、クラス対抗で美化ポイントを稼ぐ戦いだったわ。


 まあ、一応映画は完成したし、審査の土台には乗れたかな。

 でもほかのクラスは、普通に拾ったゴミの内訳発表や、校内清掃の記録をつけているくらいだったし、うちのクラスみたいに、凝った映像作品を撮っているところはなかった……。なんでわたしたちは、給食を返上してまでこんなに……?


『審査は、文部科学省からお越しいただいた、「全国校内美化強化推進局推進部推進課」の皆様に行っていただきます』


 推進し過ぎ。

 しかもぞろぞろと……何人いるの。


『外回りの校内美化に参加したクラスには、一律で美化ポイントが10ポイント進呈されます』


「え~、一律なの~? がんばったクラスの表彰は~?」


『外回りの校内美化は、参加賞のみとします。ノークレームノーリターンでお願いします』


 ざわつく体育館。

 どのクラスも、体育館の中には女子生徒しかいないので、外回りを担当した男子生徒たちの反応を知りたいところ。


『それでは各クラスの審査について、審査方法を発表いたします』


 今、審査方法を⁉

 もう全クラスの発表が終わっちゃったあとなんですけど……。


『こちらの9人の審査員の方たちが、各発表に対して、それぞれ100点満点で採点します。全員が100点をつければ、900点満点ということになります』


 んー、M-1グランプリかな?


『外回りの美化活動に参加していたクラスは、ここに10ポイントが加算されます』


 男子の寄与率がかわいそうなレベル……。

 まあ、男子だし仕方ないかあ。


「ねぇねぇ。うちのクラスって、何点くらい取れると思う~?」


 スズメが小声で話しかけてきた。


「ファーストラウンドを突破して、最終決戦に出たいよね!」


 それは……M-1グランプリだね。


「最終決戦はないと思うけど……まあ、けっこうがんばったと思うし、何かの賞はほしいよねぇ」


 審査員特別賞とか? あるのか知らないけど。


『審査結果が出たようです。それでは前方スクリーンにご注目ください。カウントダウン形式で順位を発表します。まずは100位から51位まで』


 うちの学園に、そんなにクラス数ないでしょ。

 3学年それぞれ3クラスずつだから、9位から発表して……。


『9位から4位まで一気に発表します。第9位、1-1。765点。第8位――』


 んー、2-2がない!

 まさか――。


「マミマミマミ! すごいよ~! 私たち、3位以内確定だぁ♡」


 スズメがわたしの両肩に手をかけて……思いっきり揺さぶってくる。


「そそそそそうだねえええええ」


 揺らし過ぎ揺らし過ぎ。

 マッサージ器じゃないんだから!


『それでは、第3位の発表に移る前に、残った2-2、3-1、3-2の代表者は、壇上にお上がりください』


 えっ、そういうシステム⁉

 ホントに決勝ラウンドみたい!


 あ、でも……代表者って……。


『代表者は、各クラス2名ずつでお願いします。賞状とトロフィーの授与があります』


 えーと……。


「マミが美化委員! このクラスの代表でしょ! いけいけ~総監督!」


 スズメがグイグイとわたしの背中を押してくる。


「えっと……」


 やっぱりそうなりますよね……。


「目立つのは苦手なんだけど……」


「大丈夫! 私も主演女優だから一緒に行くしぃ! ね!」


 力強い目。

 ほかのクラスメイトも無言で頷いて……。


 ここまで来たら最後まで、がんばるしかない、か。


「……わかった」


「やったぁ♡ いこいこ!」


 わたしとスズメは、手を繋いで壇上へと駆け上がる。3-1、3-2の代表者の人たちも、壇上に揃った。


『各クラス、揃いましたね。それではここからは入賞3組の発表です』


 緊張する……。


 スズメの手に力がこもる。

 ちょっと震えている……?


『第3位……3-2! 853点です!』


 違った。


 会場は、安堵の声や悲鳴のような声、様々な感情が入り乱れていた。


「2位以上!」


 手汗がすごい。

 たぶん、わたしもスズメも。


「3-1、3-1、3-1」


 スズメの口からは呪詛のように繰り返される。

 2位でうちの2-2が呼ばれなければ、そこで優勝が確定する……。


 ……いける?

 

 スズメのかわいさはアピールできた。

 それ以外の何物でもないけど、わたしの魂を込めた最高の作品を――。


 硬く目を閉じて祈るように呟いているスズメの姿を見ると、優勝させてあげたいな、って気持ちになる。


『続いて、第2位は……』


 2位だったら……きっとスズメはがっかりして……でもわたしを気遣おうとして、ほんのり笑うんだろうな。


 そんな姿、見たくないなあ。


『3-1! 857点!』


 ああ。


『そして第1位は、2-2! 910点! 優勝は2-2です!』


 勝っちゃった。


『今のお気持ちは⁉』


 司会担当の放送委員の生徒に、マイクを向けられた。


「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 スズメの大絶叫が、体育館中に響き渡った。


「マミマミマミマミマミ! やったよぉ! 私たち優勝だってぇぇぇぇぇぇ!」


「わかった、わかったから。ちょっと……一旦落ち着こう?」


 ちょっ! 興奮し過ぎ! 肩に上ってこようとしないで⁉ いくらスズメが小さくても、肩車は無理だから!


『2-2のみなさん、うれしそうですね! 審査員の方々から、コメントをいただきましょう! 審査委員長、お願いできますか⁉』


「はい、この度は、グレートゴールデン校内美化デーの美化活動発表会とのことで、大変有意義な時間を過ごさせていただきました」


 白髪の混じるスーツのおじさんが話し始める。

 たぶん、すっごい偉い人なんだろうなあ。グレートゴールデンとか言わせないであげてほしい……。


「どのクラスの発表もとても良かったです。この私立大波中央学園中等部が、普段からどれだけ真剣に校内美化に取り組んでいるのか、ということがよくわかる発表でした」


 いや……別に普段は何も……。


「ですが今回は審査ということで、公平な目で点数をつけさせていただきました。各審査員から、それぞれコメントを述べたいところですが、時間の都合もありましょうから、代表して私が総括いたします」


 お祭りムードだった場の空気が、話を聞こうというピリッとしたものに変わっていく。この審査委員長の人、物腰柔らかなのに、人に言葉を伝えることに慣れてる……。


「どのクラスもとても良かった。とくに壇上にいる上位3クラスはすばらしかったです。3-2の『プールの水全部抜いてみた』は、大変興味深いものでした。そして、3-1の『美化の心は、内側よりも外側から』も良かったです。一見無謀とも思える、体育館の屋根のペンキを塗りかえるという作業。それをこの短時間で行ってしまう実行力、感服しました」


 さすが3年生、だね。

 

「ただ、その中でも群を抜いていたのが、2-2『スズメの恩返し』です」


 きた。


 群を抜いて……? 何を評価されたんだろう……。

 スケールの大きさ? それとも、あえて映像作品に取り組んだチャレンジ精神?


 まさか、スズメがかわいいから……ってことはないよね。


 芸能界にスカウトが来ちゃったりとか⁉ でも文部科学省の人って、民間じゃないからダメか。


 いや、なくはない?

 ……でも。


「とにかくすべての取り組みが校内美化の推進に向いていました。何を置いても、映像を見ている我々の心が美化されました。概念として最も優れていました。文句なく、満場一致で満点でした」


 拍手。拍手。拍手。


 背中におぶさっているスズメが、耳元で「……良かった」とつぶやいたのが聞こえた。


『審査委員長、貴重なコメント、ありがとうございました!』


 いや……。


 審査委員長さん?


 コメントがふわっとし過ぎでは……?

 心が美化されたって何……?


『それでは審査委員の方々から、賞状とトロフィーが授与されます。第3位の3-2の代表者の方々、こちらにどうぞ』


 いやいや、わたしたち、何で優勝できたの……?

 

『続いて第2位の3-1の代表者の方々~』


 しかも満点って!

 

『第1位! 2-2の代表者の方々、こちらにお願いします!』


 ホントに優勝……?


「マミ! 呼ばれてる!」


 スズメの声が耳元で……って、いい加減降りなさいって。


「早く~!」


 降りる気なし。


「もう!」


 どこの世界に、主演女優をおんぶしたまま、優勝トロフィーを受け取る監督がいるのよ……。


「賞状、第1位。2-2『スズメの恩返し』。以下同文です。優勝おめでとうございます」


「あ、ありがとうございます……」


 審査委員長から、賞状を受け取る。

 ちょっと手が震えちゃった。作法合ってた?


「なんでもあれは5分間のダイジェスト映像だったとお聞きしました。もっと長尺の映像があるのですか?」


 えっ、ここで追加質問⁉


「あー、えーと……アリマス」


「担任の池中先生から、『120分の映画を撮れ~』って言われたので、大スペクタクル超巨編で撮りましたぁ!」


 わたしの背中越しに、スズメが答えた。


「池中……、なるほど。あなたが柊マミさん? そしてあなたが南野スズメさん?」


 えっ、なんでわたしたちの名前を知っているの……。


「そう、ですけど……」


「はいは~い! 主演女優の南野スズメで~す!」


 怖っ!

 もしかして、文部科学省にマークされてる⁉


 問題児扱い⁉


「ああ、警戒しないでください。池中ソラ教諭のことは……個人的に少しだけ存じ上げているだけです。その教え子となれば、この結果も納得いくものです」


 先生、何者なの……。


 チラリ。


 めっちゃドヤ顔だあ。

 あの顔は……「優勝は当然の結果だ。指導の賜物だな」とか思ってそう。


『優勝した2-2には、トロフィーに加えて、優勝旗が贈呈されます』


「優勝おめでとうございます」


「デカっ!」


 優勝旗、デカっ!


「スズメ、持てる……?」


 スズメの身長よりもはるかに大きい……。


「大丈夫ぅぅぅぅ! 私、力持ち……だからっ!」


 顔が真っ赤。

 無理しないで……。


 壇上にいた3年生の先輩たちが、旗を支えてくれて何とか……。


「ああっ、先輩方、ありがとうございます!」


『それではこれで、「第1回グレートゴールデン校内美化デー美化活動発表会」を終わります! 第2回でお会いしましょう!』


 第2回があるの⁉

 ……もうカンベンしてほしいです。

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