第51話 ご当地スポット・ご当地グルメ、誕生!
無機物の修復は、時間切れ。
つまりは、スズメっぽいあれこれが、残っちゃったってことらしい。
池中先生から「詳しくは、お前たちの目で確かめてくれ」ってことで、一方的に電話を切られてしまった。
「じゃ~、駅のほうを見に行こ~」
スズメが、テキパキとお茶のカップやケーキのお皿を片づけ始めた。
「えっと、お仕事は……? 平気なの?」
世界の修復の仕事がけっこう溜まっているって話だったけど……。
「見に行くだけなら、暇なわたしがやっておくよ?」
それに一応これでも、駅長に就任した身だし? もしかしたら、もう解任されてるかもだけど。
「行くよ~! だって『スズメ駅』にスズメ電車が停まってるんでしょ? 絶対見たい!」
「まあ、スズメがそう言うなら……」
わたしだったら、自分の顔の駅と電車を見たいって感覚はないけど、スズメくらいかわいければ、感覚も違うのかな。
「マミが願ってくれた私っぽい駅ってどんな感じかな~。楽しみ♡」
「だからわたしの願いじゃないって……。世界が勝手に忖度したの……」
「え~、じゃあ好きじゃない感じ?」
「……そんなことないけど」
訊き方がズルいなあ。
「マミが好きな私っぽい駅を見に行こう♡」
もう。
スズメにはかなわないなあ。
「マミ~、置いてくよ~!」
もう玄関に⁉
行動が速いなあ。
急いで玄関に向かうと――。
「ありがとね。私の分身たち」
スズメが、スズメ人形たちの頭を撫でているところだった。
「さっきまで元気に飛び回ってたんだよ。家のドアも勝手に開けてたし」
「そっかぁ。私も一緒に遊びたかったなぁ」
「そうだね……」
スズメとスズメ人形たち。
もし一緒にいたら――すっごくにぎやかになりそう。
ハイテンションな時のスズメにそっくりだったしなあ。
「あとでまた迎えに来るから、もうちょっとここで待っててね」
スズメ人形たちを、スズメの家の玄関に残して外に出る。
「それで~『スズメ駅』ってどこ?」
あ、そっか。そこから説明がいるんだね。
「もともと『大波中央南駅』だったところが、勝手に改築工事をされちゃったんだよね。名前も変わっちゃったし」
「あそこかぁ。最寄駅だね!」
「たぶん、最寄駅だから選ばれたんだと思うけど、めっちゃ豪華な駅舎になっちゃったよ……」
「ほとんど利用者のいない無人駅だったのにぃ?」
「今は大時計も設置されてるし、大都会のターミナル駅並みだよ……」
「え~! 楽しみ~! 早くいこいこ!」
スズメがグイグイとわたしの腕を引っ張って走り出す。
まあ、スズメが楽しそうならそれで良いんだけど……。
小走りで5分ほど。
わたしたちは『スズメ駅』に到着した。
「え~! すっごいすっご~い! めちゃめちゃ大きな駅になってる~!」
スズメ大興奮。
新品でキラッキラの大きな駅舎。
でも駅ビルがあるわけでも、お店が併設されているわけでもない。利用者はぜんぜんいなくて、とても静かだった。
駅前を埋め尽くす勢いで詰め掛けていた、スズメっぽい顔の動物たちはもういない。
「アハハ、ホントに私の顔だ~! おもしろ~! マミマミ~! 記念撮影しようよ~!」
スマホを片手に、スズメが振り返る。
「はいはい」
スズメが喜んでいるなら、まあね。
「盛れてる~! 無加工なのにすっごい! SNSに――あげるのはまずいよね……」
「そうだね。また、スズメがアイドルになっちゃうと困るし……」
すぐにスズメのかわいさは世界に見つかっちゃうからね。
「むぅ。じゃ、顔のところを加工してあげちゃおう!」
「えっ、やめときなって。せめて先生にOKもらってから――」
「うわ~! 拡散エグい~!」
あーあ。面倒なことにならなきゃ良いけど……。
なるほど、そっか。『スズメ駅』が爆誕したことは、すでに常識として固定されたから、誰もそれに疑問は持たないんだわ。でも、この世界一かわいい駅舎のかわいさには驚きを……。常識が固定されるってそういうことなんだね。
うわっ、なんか人が集まってきてる⁉
バズーカーみたいな望遠レンズのカメラをかまえた人がいっぱい! これって、スズメの投稿のバズり効果ってこと⁉
「あ、は~い! ありがとうございます~♡」
ん、スズメが何か――。
「マミマミ~! これ、通りがかりのおばちゃんからもらっちゃった♡」
「知らない人から気軽に物をもらっちゃダメだよ。って、これは!」
「マミ知ってるの? じゃあ知り合いだからセーフだ♡ いただきま~す!」
いや、知り合いっていうか、その……。
「スズメ印のからあげだわ」
これも固定化されてたんだ……。
こうして、1日にして『スズメ駅』と『スズメ印のからあげ』が、この地域を代表するご当地スポットとご当地グルメに定着したのだった。
チュンチュン。




