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柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


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第49話 世界がスズメを休ませた3日間

「スズメの家だ! ホントにホント……? 更地になっていたのに……戻ってる」


 これは夢……?


『南野』の表札が掛かった郵便受け。

 郵便の投入口には、小さい頃にスズメが貼ったシールの跡が。


 そっと触れてみる。


「幻じゃない……」


 ホントにスズメの家が戻ってきたんだわ。


「わたしの願いが通じた……」


「何してるチュン?」

「早く中に入るチュン」


 いや……感動の場面を台無しにしていくのやめて?

 ちょっとうるっときていたところなのに、涙が引っ込んじゃったでしょ。


「緊張しているチュン?」


「緊張はしてないから」


 どうしよう、呼び鈴鳴らす?

 でも、一度もそんなことしたことないし。普通に合鍵も持ってるし。


「スズメ人形100連撃チュン!」

「チュンチュンチュンチュンチュンチュンチュン!」


 スズメ人形がくちばしで呼び鈴を鬼連打!


「ああっ、ちょっと!」


 スズメは仕事中なんでしょ⁉

 邪魔しちゃダメだって!


 と、すぐに中から返事が。


「はいチュン。今開けるチュン」


 えっと……。


「おかえりなさいませチュン!」


「いや……」


 あのさ。


「なんで普通にスズメ人形(あなたたち)がドア開けてるの……」


 しかも、みんなで寄り集まって、スズメの服を羽織ったりして……。


「マミ、どうしたチュン? スズメはスズメチュン?」


「……無理があるでしょ。まさかこれがスズメ人形合体技?」


「バレてしまっては仕方ないチュン!」

「だからスズメスーツに入ったほうが良いって言ったチュン!」

「責任逃れはズルいチュン!」

「頭を丸刈りにして謝れば許してくれるチュン!」


 内輪揉めー。

 頭を丸刈りって何……。

 ピッと立ってるその毛を剃るってこと? やめておきなさいよ。かわいくなくなっちゃうでしょ。


「はいはい、通して! もう怒ってないから」


 いい加減、スズメに逢わせてよ。


「怒ってる時の言い方チュン」

「マミがブチギレチュン」

「どうするチュン?」

「世界を終わらせるチュン?」

「巻き戻してやり直すチュン」

「どこまで巻き戻すチュン?」

「安全マージンを取って1億年でどうチュン?」

「良いと思うチュン」


「良くないでしょ。1億年って……わたしどころか、人類も誕生してないわ」


 気軽に打ち合わせて良い内容じゃないからね?


「もちろん冗談チュン」

「スズメ人形にそんな権限があるわけないチュン」

「ただの人形チュン」


 付き合ってたら、日が暮れるわ。


「ただの人形なら、ここでおとなしくしてて」


 はい、玄関にみんなで仲良く座っててね。

 そうそう、えらいえらい。



 よし、行くか!


「スズメー! スズメ帰ってるのー? どこー?」


 声が上擦る。

 緊張するなって言うほうが無理。


 3日もスズメと顔を合わせてないんだよ?

 体内のスズメ分は0どころか、マイナス1億%だよ!


 んーでも、この匂い。

 スズメの家の匂いだわ。


 本物。

 ここは間違いなく、わたしが産まれてからずっと通い続けてきたスズメの家。


 でも……スズメはどこ?


 とりあえず2階のスズメの部屋へ。


「スズメー? もしかして隠れてるの?」


 恥ずかしくなったとか?

 それはわたしもだよ!


 なんか妙に緊張するよね……。

 へんなの。


 んー、部屋にはいない、か。

 でもスズメの匂いでいっぱいだー!


 とりあえず、枕からスズメの残り香を回収しておこう!


「スズメ、スズメ、スズメぇ!」


 よし、これであと10秒は生きられる。

 

 スズメ探しに戻ります(キリッ)



「スズメさーん? どっこかなー?」


 って、あれ? 普通にリビングのソファーに座ってない?

 実はあれもダミーで、スズメ人形の合体verだったりする……?


「スズメ……?」


 本物のスズメさん……かな?


 本物だ!


 でも無反応だわ。

 ぜんぜん動かない……。


 目を閉じてるし、寝てるのかな?


 そっか。疲れてるんだもんね……。


 起こしちゃかわいそう。

 起きるまで待ってようかな。



 ホントにホントに、スズメだねえ。

 スズメが無表情で寝てるのって、初めて見たかも。

 いっつも朝起こしに行くと、うっすら笑っているもんね。笑っているわけじゃないか。ニュートラルな表情が女神のような微笑みスタイルだから?


 そう考えると今は『無』って感じ。

 おすまし顔?


 呼吸してるのかな?

 うん、小さく息はしてそう。


 心拍数は……70BPMか。


 あれ、意外と高い。もしかして、起きてる?

 んー、でも目は閉じてるし、ドッキリを仕掛けようとして寝たふりをしている感じもしないね。


 スズメさーん?


 スンスン。

 ああ、首筋も良い匂い。

 健康なスズメの匂い!


 ……ちょっとくらい食べてもバレないかな?


 ちょっとだけなら……。寝てるし……。味見だけ……。


 ペロッ。


 ああああああ! 1億年寿命が延びるわー!



 ペロペロッ。


 最高過ぎる! 3日ぶりのスズメ! これは本物のスズメに間違いなしです!


 

 ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロッ!


「えっ、えっ、くすぐった⁉」


 あ、起きた⁉


「えっ、マミ⁉ な、えっ⁉」


「スズメー! おかえりー!」


 背後から抱きしめっ!

 ギュギュッと!


 もう絶対放さないぞ!


「マミ⁉ くるしっ……」


「あ、ごめん!」


 DVではないよ?

 すぐに放します。


 正面に回り込んで――。


「改めて、おかえり!」


 ジャンピング、スズメの膝の上にダイブ! からのギュギュッ!


「もう、マミったらどうしたの~? ヨシヨシ~」


 スズメがやさしく頭を撫でてくれる。


「だって……。スズメが急にいなくなって……世界が休ませたって……3日も……」


「え? そうなの? え~~と……心細い想いをさせてごめんね」


 スズメはわたしの首に手を添えて、ゆっくりと抱きしめ返してくれた。


「有給休暇申請が出てて、スズメ人形のお尻に『むかえにきて』って書いてたから……そうよ。なんでもう、家に戻ってるの……?」


 迎えに行こうと思ったのに!


「有給休暇申請? 迎え? 何?」


 スズメが体を離して、わたしの顔を見つめてくる。


 これは……とぼけているんじゃなくて、ホントに心当たりがないって顔だわ。


「あの……スズメは……どこまで覚えてるの……?」


「どこまでって何~? 今日は学校から帰ったら、溜まっているお仕事をするよ~って伝えたでしょ? 今は絶賛、世界の修復中だよ~! 集中してただけで、寝てたわけじゃないよ~」


 え……。

 

「学校……? 今日、学校に行った……?」


「行ったよ~! 今日金曜日だよ? 給食のカレーパン争奪戦もしたよね~。5個ゲットしたし、お腹いっぱいだよ~!」


 わたしの知らない記憶だ……。

 ということは、スズメの中では、世界に存在を消されていた3日間はなかったことになっている……? それも都合の良い記憶に書き換えられて――。


「マミ~? 顔が怖いよ? もしかして、疲れてる?」


「……ううん! ぜんぜん! 超元気!」


 スズメの膝の上から降りる。


「変なマミ~」

 

 再会の感動で飛びついたけど、スズメには意味がわからない行為だったってこと。

 恥ずかしっ。


「でもでも~、ちょっと困ってるんだよね~」


 スズメの表情が少しだけ曇った。


「気づいたら、世界が穴だらけになってて、絆創膏でいっぱい応急処置してあるし……私、そんなことしたかな~?」


 スズメの記憶は改ざんされていても、世界の捻じれはそのままらしい。


「スズメ人形たちが、がんばって応急処置して回ってくれてたよ」


「スズメ人形が~⁉」


 うん。

 今も玄関でおとなしく待機しているし。


「急に1000羽以上に増えて……。もしかしたら、今はもっと増えてるかも? めっちゃしゃべるし、生意気だし」


「スズメ人形が……しゃべるの?」


 スズメが小首を傾げる。


「そうだよー。本物のスズメよりおしゃべりかも。呼んでくるね」


「う、うん……」


 目を真ん丸にして驚いているスズメをリビングに残して、わたしは1人玄関へ。


「おーい、スズメ人形たちー! スズメに挨拶しなよー!」


 ご本人様登場の逆バージョンで、人形様登場ってね。


「んー? なんで黙ってるの? あ、わたしが『黙ってろ』って言っちゃったから? もうしゃべっても良いよ。ちょっとだけならね。あんまりうるさくしちゃダメ。ご近所迷惑になっちゃ……あれ? スズメ人形……?」


 玄関には、7羽のスズメ人形たちが。


 でも――。


 ただそこに、転がっているだけ。



 まさか……ただの人形に……。

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