第48話 ロマン発動! スズメ人形集結! 変身合体チュン!
「待って待って待って! えっ、スズメは……?」
今、「自宅にいる」って言いました?
さすがにわたしの聞き間違い、ですよね⁉
「すでに自宅に戻っているそうだ」
空耳じゃなかったわ。
「なんでなんでなんで⁉」
「私に訊かれても困る」
そりゃそうか。
先生も今連絡を受けたばっかりだもんね。
「組織が南野の反応をキャッチした時には、すでに世界の修復に取り組んでいたそうだ……」
「スズメ……がんばり過ぎでは……」
「そうだな。休むために存在まで消されたというのに、な」
池中先生が苦笑する。
「ホントですよ! え、じゃあさっきのは何だったの?『むかえにきて』って言ったのに!」
「それは本人に尋ねると良いんじゃないか?」
たしかに!
はっ⁉ こんなところで油を売っている場合じゃないですよね!
「早く帰りましょう!」
「おお、そうしろ。私はここの事後処理をしてから向かうことにするよ」
ここ。
『スズメ駅』を取り囲むように集まった、スズメっぽい顔の動物たち。それをどうにかしてくれる、ということなのかな。
「みんな良い子たちなので……殺処分だけは……」
わたしの何気ない一言をきっかけに、辺りはお祭りムードから一転、阿鼻叫喚に包まれてしまった。
「そんなことするか! お前は私を何だと思ってるんだ⁉」
うわっ、唾が飛んできた。汚いなあ。
「マッドサイエンティスト幼女先生?」
「柊マミ、理科の成績はC。内申書には、『生活態度に難あり』と書いていく」
「ひどい⁉ 理科のテストなら、ほぼ満点なのに⁉」
横暴だわ!
「理科の成績を気にしている場合か! さっさと行け!」
「そうだったあ! じゃあまたあとでお願いします!……でも、理科の成績はAにしてくださいよ⁉」
「柊。本当のところ……私のことをどう思っているんだ?」
む。
この場合の模範解答は――。
「生徒想いの情に厚い美人教師!」
「よろしい。Aをやろう」
チョロい!
チョロ幼女先生!
「冗談はもう良い。さっさと行け」
「はーい。ちょっとー! みんな通してー! わたし、急いで帰らないといけないの!」
またお祭りムードに戻ってるー。
なんかこう、上がったり下がったり感情の持っていき方が大変だね……。
「静かにー! わたしの話を聞いて!」
ピタリと止まる私語。
ホント素直ねえ。
「家に帰りたいから、通してほしいの!」
一瞬の間。
すぐに動物たちの集団が、ゆっくりと左右に割れていく――。
瞬く間に、わたしの前に一本のまっすぐな道が出現した。
わたしとスズメの家に向かって、一直線に繋がってる!
「ありがと! みんな大好き!」
再びお祭りムードを取り戻した動物たちの間を、全力で駆け抜けていく。
「マミマミ~!」
「一緒に行くチュン!」
「チュンチュン!」
「スズメに会いに行くチュン!」
後ろからスズメ人形の集団が追いついてきた。
わたしの目線くらいの高さ。スズメ人形たちは、羽をばたつかせることなく、滑空していた。前より飛行速度が上がってる!
「おー、一緒に行こう!」
なんか勇ましいね。
スズメっぽい顔から、スズメ人形の顔にも戻っただけなのに、何かシュッとしている気がする。スズメみたいに、ほにゃほにゃ笑わないからかな?
「マミマミ~!」
「スズメ人形が運んであげるチュン!」
「みんなでマミを運ぶチュン!」
「一緒に空を飛ぶチュン!」
「えっ、そんなことできるの⁉ わたし、けっこう重いよ……?」
人間だし。
綿でできた人形のあなたたちには、ちょっと難しいんじゃない?
「大丈夫チュン!」
「60.1kgなら平気チュン!」
「ギリギリ標準体型チュン!」
「何も心配はいらないチュン!」
さっきより、わたしの体重がちょっと減ってる……。
「って、なんであなたたちに、リアルタイムで自分の体重を知らされなきゃいけないの⁉」
「筋肉量も、血中酸素濃度もわかるチュン!」
「肌の水分量が減っているチュン!」
「紫外線にあたり過ぎるのは体に良くないチュン!」
「そろそろトイレに行かないと、腎臓に負担がかかるチュン!」
あなたたち、病院の先生か何かなの……?
「スズメ人形の背中に乗るチュン!」
「急いで乗るチュン!」
「マミを乗せて、バビュンと出発チュン!」
「最大積載量は2kgチュン!」
「ぜんぜん無理だねっ! あと58kgは痩せないと乗れないねっ!」
58kgも痩せたら、たぶん痩せた側の肉がわたしの本体だよ!
「気合いでどうにかするチュン!」
「今こそ、変身合体チュン!」
「ロマン発動チュン!」
「スズメ人形集結チュン!」
急にニチアサの雰囲気が出てきた……?
戦隊ものなんて見たことないけど!
「お客様の中に、マミを乗せて飛べる方はいませんかチュン⁉」
「最大積載量60.1kgの方はいませんかチュン⁉」
「飛ばないで、地上を走るタイプでも可ですチュン!」
「時速100kmで飛行か走行できる方はいませんかチュン⁉」
えー。ぜんぜん合体じゃないし。
まさかの他人任せ!
集結して、速そうなほかの生き物を探しているだけだった……。
いや、集結した意味は……?
「チタに任せるチタチュン」
黄色いボディーに黒い斑点模様のスタイリッシュなあなたは⁉
「チタは、スズメチーターチタチュン!」
なんて?
「スズメチーターチタチュン!」
「えーと……チーターさんね?」
一人称がチタで、語尾がチタチュン……。
ややこしくしているからやめてほしい!
「スズメチーターだぜ!」
急にキャラチェンジしてきた⁉
しかもスズメっぽい顔で、歯をキラッとさせてきた……。イケメンスズメチタチュン……。
「よ、よろしく……」
「ちょっと待った~モルチュン!」
「あ、モルカーは間に合ってる」
乗れないし。版権の問題もあるから、いい加減引っ込んでて。
「モルチュン……」
「チーターさん、改めてお願いできます? チーターって、地上最速の動物ですよね!」
「任せるんだぜ! おれっちは、時速100kmで走れるんだぜ!」
「おお、頼もしい! じゃあ、背中に乗らせてもらって……」
ふかふかだ。
ほんのりあったかい。
「わたし、重くないですか……?」
「ギリギリ大丈夫だぜ!」
「そこはウソでも、『羽根のように軽いから心配するな』みたいな感じでお願いしたいんですけど……」
わたしも一応乙女なんで。
さっきからずっと、世界に向かって体重を連呼されてますけども……。
「行くぜ!」
うわっ、無視だ。
「しっかり掴まっているんだぜ!」
掴まるって……どこに⁉
チーターって毛も短いし、耳も小っちゃいし、どこにも掴まるところなんてないんですけど⁉
「え、え、ああああああああああああああああああああ……あれ?」
振り落とされない、ね?
反動も重力も、何にも感じない……。
「重力操作はスズメ人形にお任せチュン!」
「スズメ人形フルアタックフォーメーションで、空気抵抗を0にしているチュン!」
「今のマミの体重は、実質0kgチュン!」
「マミ、痩せすぎチュン!」
フルアタック……何それ?
急にSFっぽい要素を入れてくるのやめてくれない……?
気軽に世界の常識を捻じ曲げるのはやめよ?
「おほ~! 軽い軽いぜ! ホントはおれっち、体力がなくて200mくらいしか全力疾走できないのに、これなら2kmくらい走れちゃいそうだぜ!」
「えっ、200m⁉ さすがにそれは短くない⁉」
「チーターは、超短距離型の狩りしかできないチュン」
「でもスズメ人形のフルドーピングファイナルDXエナジードリンクを注入したから、元気の前借りをして最高速度を出し続けられるチュン!」
「良い子はマネしちゃいけないチュン!」
「チュンチュン!」
元気の前借りって、道徳の時間に出てきた悪い薬の……。
危なそうだから、ツッコむのやめておこ。
「時空転移門をくぐるチュン!」
「座標固定ヨシチュン!」
「存在証明ヨシチュン!」
「シートベルトヨシチュン!」
「突撃だぜ!」
ちょっ、まっ! わたし、シートベルトしてない! ていうか、シートベルトどこ⁉
あっ。
目の前が白い光に包まれて、視界が0に。
「お客さん、終点だぜ!」
「マミ、着いたチュン!」
「家チュン!」
「早く起きないと顔に落書きするチュン!」
「スズメが待ってるチュン!」
はっ。
「つい、た……?」
わたしの家だ。
それに。
スズメの家が、ある――。




