第47話 南野スズメの帰還
――リンゴ~ン、リンゴ~ン、リンゴ~ン。
『スズメ駅』の大時計の鐘が鳴り続けている。
「これは何かのメッセージ……あ、文字盤のところが開いて、中からなんか出てきた!」
あの大時計って、からくり時計だったんだ!
小さな鼓笛隊やピエロがいっぱい回ってる!
ホーホーホッホーホーホーホッホー。
「えっ、鳩も並んで踊り出した⁉」
「あれはからくり時計ではないな。全部生きてるぞ」
ウッソ!
「あ、サルがシンバルを落とした⁉」
「気をつけるチュン!」
スズメ人形が空中キャッチした! すごーい!
って、シンバルを届けるついでに、輪に入って一緒に踊り出すんだ……。
「これ、どういう状況なんでしょ……?」
「悪い雰囲気には感じられないな」
池中先生が、周りに合わせて手拍子を始める。
「まあそうなんですけど……」
なんでお祭りムードになってるんだろ?
「スズメが帰ってきて、やったね、ハッピーエンドだバンザイ! って時にこの雰囲気ならわかるんですけど、まだ帰ってきてないんですよ?」
「世界からすると、さっきの柊の回答をもって、もう大団円なのかもしれないな」
「わたしの回答? 『Yes』って言ったから?」
『時間切れのため、すべてを元通りにはできません。続けますか?(Y/N)』という世界の問いかけに、わたしは「Yes」と答えた。
元通りにならなくても良い。だからスズメを返してほしい、と。
「じゃあ、スズメはどこですか?」
「……見当たらんな。あの大時計のパレードの中に混じっていると思ったんだが」
「いない、ですよね。スズメっぽい顔の動物しかいないです」
わたしからしたら、状況は何も変わっていないんだけど。
「あのパレードが終わったら、帰ってくるのかもしれないな。落ち着くまで待とう」
「うーん、まあ……」
すっごい楽しそうな雰囲気のところに、無理やり割って入って、空気を壊しちゃうのもあれですからね……。
「いや、それにしてもパレードが広がっていっている気が……。大時計の下でも、見渡す限り、動物たちがみんな踊ったり歌ったり……」
大騒ぎしているわりに、わたしたちのいるステージに上がってこないのは、モラルの高さを感じる……。
「あれ⁉ ちょっとあれを見てくださいよ! スズメじゃないですか⁉」
「どこだ?」
「あそこですよ。大時計の下の右側の道に……」
遠くてよく見えないので、視力の良い先生が確認してください!
「どこだ……ああ、あれか。あれは……おそらく違うな」
「えっ、でもうちの中学の制服を着てますよ⁉」
スズメっぽく見えます!
「いいや、残念ながら……あれはコスプレだな」
「コスプレぇ⁉」
マジですかぁ! わたしの視力じゃ顔までは見えない……。
「髪型や背格好は似ているが、同じようなのが10人はいるぞ」
「10人⁉ スズメが分裂⁉」
「よく見てみろ。ちょっとずつ違う……。どいつも、獣の耳が生えてるな。スカートの下から尻尾が見えているやつもいる」
「まさかの、けものフレンズ!」
くっそぅ! 騙された!
「紛らわしいから、制服を着るな!」
「……視力が悪いお前の責任もあるんじゃないか?」
「両目1.2ありますって! それで見えないなら、あっちの責任ですよ!」
「私には見えているが……」
だからなんでこっちが悪い風に仕立ててくるんですか⁉
「まあ良い。パレードもずいぶん収まってきたんじゃないか?」
「そう、ですね……?」
まだ納得いってないけど、パレードが終わりに近づいてきたなら……スズメが帰ってくる⁉
大時計の鐘が鳴り終わり、文字盤の仕掛けも閉じていく。
それに合わせるように周囲のテンションも、少し落ち着いていくのを感じる。
「スズメはどこかな? どこかな? ほら、視力の良過ぎる先生が遠くを探してくださいよ!」
わたしは近場を見てますから!
「ん、ああ……。いないな」
「諦めるのが早いです! もっとちゃんと探してください!」
スズメ、スズメ、スズメ!
早く帰ってこないかなー?
どこかなどこかなー?
「柊、ずいぶん楽しそうだな」
「そりゃあ楽しいですよ! スズメが帰ってくるんだから!」
もう3日も会ってないんですよ!
こんなの、お母さんのお腹の中にいた時以来のことでしょ!
「……ちょっと待て。組織から連絡が入った」
池中先生は、神妙な顔つきでスマホを確認している。
「このタイミングでトラブル? やめてくださいよ……?」
やっとスズメが帰ってくるんですよ⁉
動物たちだけじゃなくて、人間たちもパレードしたって良いんですよ?
「なるほどな……。そうきたか……」
池中先生の顔が、渋い顔に変わっていく。
「ん~~~~」と唸り、渋い顔。あごに梅干しが完成、と。
「まあ……基本的には良い報告だ」
「お? なんですか?」
表情と合ってないですけど。
「南野の帰還を確認したそうだ」
「へ?」
え?
それって……?
「南野スズメの存在が確認された」
「え、え、ええええええええええええええええええええええええええええ⁉」
ホントに⁉
ホントのホントに⁉
「スズメどこですか⁉ ねえねえねえねえねえ!」
「白衣を引っ張るな! 袖が伸びるだろうが!」
袖なんて伸びたって良いでしょ!
スズメはどこ⁉
「南野は……自宅で修復作業に励んでいるそうだ」
「……はい?」
自宅って……自宅⁉




