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柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


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第46話 世界は性格が悪いってホントですか?

「先生、これ!」


 スズメからのメッセージだ!


『むかえにきて』って書いてある!


「これは……」


 ホーホーホッホーホーホーホッホー。

 ホーホーホッホーホーホーホッホー。

 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


 3羽の鳩が一斉に鳴き出す。

 首を振りながら。

 得意げな表情にも見えた。


「スズメからのSOSですよ! すぐ行かなきゃ!」


 わたしの言葉をきっかけに、周囲が一気に喧騒に包まれた。

 

 驚き。

 同様。

 戸惑い。

 悲観。


 どれもネガティブ寄りな反応に思えた。


「だがな……」


 池中先生の表情は暗い。

 周囲にいるスズメっぽい動物たちと同じような表情をしていた。


「絶対行きますからね! スズメが『迎えにきて』って言ってるんですよ! わたしにSOSを送ってきた!」


 わたしが行かなくてどうするって言うんですか!

 止めても無駄ですからね!


「気持ちはわかる。が、どこへ行くつもりなんだ……?」


 それを言われると……。


「鳩に訊きます!」


 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


「ほら、何か教えてくれそう!」


 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


「うまくいくと良いな……」


「三輪車とも会話できるんだし、いけますよ!」


 ね、世界さん。こういう時にはわたしの願望をかなえてくれて良いんですよ?

 

 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


「おーい、鳩さん! スズメはどこにいるの? この申請書とか、スズメ人形はどこから持ってきたのか教えてー!」


 ホーホーホッホーホーホーホッホー。

 ホーホーホッホーホーホーホッホー。

 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


 鳩たちはわたしのほうを見ることなく、一斉に飛び立った。


「あっ!」


 3羽とも、バラバラの方向に飛んで行ってしまった……。


「ああー! 鳩ー!」


 カムバーック!


「手掛かりなし、か」


「行っちゃいました……」


 なんでよ。

 わたしの願いがかなわないなんて……。


「おい、世界! 嫌がらせすんなよ⁉」


 やんのか、コラー!


「柊、無駄だ。世界に意思はない。人格も存在しないから、挑発は通用しない」


「意思がないって、そんなわけないですって。あきらかに嫌がらせしてきてるじゃないですか!」


「お前が当事者だから、そう思えるだけだ」


「わたしの願望をかなえるのが最優先なんでしょ⁉ わたし『スズメを返して』って、ぐうの音も出ないくらい、行間を読む隙すらないほどに、きっちりみっちりと伝えたのに、なんで返してくれないんですか⁉」


 こんなの、嫌がらせ以外、考えられないでしょ!


「何か……阻害する要因があるのかもしれない」


「何かってなんですか?」


「それがわかれば、すぐに対応している」


 むぅ。


「心の底から、スズメのことを返してほしいって思ってるのに、何が阻害してるって言うんですか……」


 ホーホーホッホーホーホーホッホー。

 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


「鳩の声⁉ どこ⁉」


 駅の裏だ!

 3羽並んで飛んでくる?

 あ、真ん中の鳩が何か咥えてる!


「また人形か」


「ん、先生見えるんですか?」


 わたしには何を咥えているかまでは……。


「まあな。視力は良いほうなんだ」


 わたしも両目1.2あるんですけど。


 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


 上から降ってくる何か。

 両手でキャッチ――。


「あ、ホントだ。またスズメ人形だった!」


 先生の視力、いくつなんですか……?


「今度はどんなメッセージだ?」


 えーと。

 またスズメ人形のお尻に、マジックで何か書いてある。


『時間切れのため、すべてを元通りにはできません。続けますか?(Y/N)』


「なんですか、これ? スズメの字じゃないですね」


 何かの謎解きクイズ?


 って、スズメっぽい動物たちの阿鼻叫喚が⁉


 何が起きたの⁉

 このメッセージが何か嫌な感じってこと⁉


「なるほど……そうきたか」


 先生にはピンときたものがありそう!


「どういう意味か教えてくださいよ!」


 ねえねえ!


「白衣を引っ張るな……。ああ、これは十中八九、世界からのメッセージだろう」


「世界から!」


 それで、どういう意味です?


「ある意味では脅し。ある意味では白旗、だな」


 んー。


「もうちょっとわかりやすく教えてください!」


 謎解きクイズに謎解きクイズを重ねるのは良くないと思います!


「ああ。『時間切れのため、すべてを元通りにはできない』と言ってきている。これはつまりだ、すでに柊の願望をかなえるために捻じ曲げた常識が固定化されたことを意味している」


「えっ。3日経ったから……?」


「そうだ。だが同時に、『すべてではない』と書かれていることから、元通りになる常識も存在することが想像できるな」


「じゃあ、戻すなら早いほうが良いじゃないですか!」


 早くスズメを返して!

 そしてすぐに修復してもらわなきゃ!


「いや、それがそう単純でもない」


「なんでです?」


「一部は修復不可。一部は修復可能。修復可能な一部だけを修復したとしたら――」


 したら?


「すべてが複雑に混ざり合う」


「なるほど?」


「『続けますか?』というのは、それでも良いのか? という……ある意味、脅しだな」


 世界……性格悪い!


「え、じゃあ何? スズメを返したら、世界が変な感じに修復されるから、返さないぞって言っているってことですか⁉」


 そっちが勝手にやっておいて、ふざけんなよ!


「返さないとは言っていないだろうな。『柊が望むような世界には戻らないが、良いのか?』という念押しだろう」


「余計なお世話ですよ!」


 ホント、余計なお世話!

 勝手に引っ掻き回しておいてー!


「スズメを返して! わたしはそれしか言ってないの! 世界がぐちゃぐちゃになったって別に良いよ! いや、まあ別に良いってことはないけど、スズメがいない世界よりはずっと良いに決まってる!」


 さらにざわつく動物たち。


「はいはい、静かにして!」


 わたしの言葉に反応して、一瞬にして周囲は静寂に包まれた。

 ちょっと気持ちいいかも。校長先生よりは威厳があるね!


「はい、みなさんが静かになるまで、1秒でした。とっても優秀! えらい!」


 ほんのちょっとだけ、空気が緩んだのを感じる。


「わたしね、スズメのことは返してほしいって言ったし、世界がぐちゃぐちゃなっても良いって言った。それは本音。でもね、みんなことがどうでも良いなんて思ってないから。そんな、世界の終わりみたいに泣くのはやめて?」


 少しざわざわ。

 諦めたようにため息を吐く池中先生を横目に――。


「今スズメが帰ってきたとして、どこまでが時間切れで、どこまでが修復できるのかはわかんない。でもね、わたしは今の状態のままでも、ぜんぜん良いって思ってるよ。みんなのことが好きだし!」


 おしゃべりしてくれるのもかわいいし、楽しいし。ケンカはしないでほしいけどね。


「絶対全部戻れーなんて思ってないから、毎日みんなと遊んであげるのはむずかしいかもしれないけど、もし良かったら、順番に遊ぼうね」


 地鳴り?

 ううん、歓喜の声だ。


 動物たちの感情が爆発する。

 スズメ人形も、イヌもネコもみんな入り混じって大騒ぎ。

 あ、三輪車とゴミ袋が抱き合ってる。


「なあ、柊。それで良いのか?」


 先生は諦め顔のままだ。


「こんなの、ウソついてどうするんですか。今が楽しければ良いじゃないですか」


「そんな場当たり的な……」


「どうせね、今の常識なんて、未来の人から見たら非常識に決まってるんですよ? わたしたちだって歴史で100年前の習慣を見て笑っているし、そういうものでしょ」


「生徒に学問を教えられるとはな……」


「若い感性のほうが正しいことだってあるんですよ?」


「お前な……」


 へへ。


「じゃあ、世界に返事してやりましょう!」


「そうだな」


「聴いてる? 世界さん! わたしの答えは『Yes』だから! すべてが戻らなくたって良い! スズメを返して! Yes、Yes、Yes!」


 ホーホーホッホーホーホーホッホー。


 鳩の鳴き声。

 それに呼応するように――。


『スズメ駅』の大時計の鐘が、鳴り出した。

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