第36話 超スズメフィーバー! 右を狙うチュン!
一抹の不安を覚えながら、学校へと急ぐ。
なぜか道行く人たちに「がんばって」とか、「マミならできるよ」って声を掛けられたんだけど……どういう状況? おばさんもおじさんも、おばあさんも……なんでわたしの名前を知ってるの?
「チュチュ~ン! マミがいたチュン!」
空から舞い降りてきたのは――。
「スズメ人形!」
さっきの子とは違う子かな?
ちょっと尻尾の羽が青い子だ!
「マミマミマミ~!」
羽をばたつかせながら、わたしの頭の上を一周。
それからゆっくりと手の平の上に降りてきた。
「あっちでスズメを見つけたチュン!」
「えっ、ホント⁉」
「間違いないチュン!」
スズメ人形は、器用に羽を曲げて、自分の胸を叩いて見せた。
「もう今度は、からあげってオチはなしにしてよね!」
「からあげチュン? 食べたいチュン? 良い店を知っているチュン!」
と、スズメ人形が飛び上がり、商店街のほうへと――。
「待って待って待って! さっき500gももらって食べたから、からあげはもう当分大丈夫!」
捨てるわけにもいかないし、結局全部いただいてしまいましたからね……。お腹パンパンですよ。
「それは太るチュン」
「わかってるわよ!」
冷静に言うな!
「見つけたのは、からあげじゃないチュン! スズメチュン!」
「おーし! じゃあ案内して!」
さっきのスズメラジオによると、学校のほうなのかな?
「南南西に20kmチュン!」
「遠い!」
徒歩では無理だよ……。
「タクシー呼ぶチュン?」
「いや……それは……」
「黒くて頼れる立派なやつチュン!」
やっぱりそれって、この間のリムジンでしょ……。さすがにあれはなあ。
「イルカを呼ぶチュン?」
「えっ」
イルカって、太陽が沈まない事件の時の……校庭に北極と南極の海が同居した時のあれ?
「雨を呼ぶチュン」
「待って待って! 日本沈没はやめよう!」
ノーモア水没!
もしスズメの戻りが遅くなったら、水没した日本が確定しちゃうし!
「チュンの背中に乗るチュン?」
「……無理じゃない?」
わたしの頭の上に止まっている君に、そんな力はないよね。
「こうなったら奥の手チュン! ヘリコプターを呼ぶチュン!」
ヘリコプター⁉
「大きな葛籠……じゃなくて、大きなヘリコプターを呼ぶチュン! 1回10億100円で乗せてもらえるチュン。お小遣い足りるチュン?」
「生涯年収的に足りないね」
スズメと2人でちょっと田舎にかわいい一軒家を立てて、慎ましやかな生活を送る予定なので! 白くてモフモフなイヌとハチワレのネコを飼います。
「もう打つ手がないチュン……」
なかったかあ。
20kmの壁は厚かった……。
「じゃあ、近場のスズメのところに行くチュン」
近場のスズメ、とは……。
選択肢が複数ある時点でおかしいって気づいてほしいんだけど。
「南西に20mチュン」
「近っ! それってもう、ここから見えるのでは⁉」
南西ってどっち?
「こっちチュン!」
スズメどこだー!
近場で見つかればラッキーだけど!
「ここチュン」
スズメ人形からの合図は、すぐにやってきた。
まあ、20mだとこんなものかな。
ところでここは……?
「祠?」
こんなところに神社なんてあったっけ?
「スズメが祭られているチュン!」
「そうなんだ⁉ えっ、じゃあスズメは神様になっちゃったってこと⁉」
もともと天使みたいにかわいかったけど、さらにその上に出世したってことかあ。んー、喜ばしいことだけど、それは困る……。
「立派な神様チュン! 火と情熱をつかさどっているチュン!」
「あー、たしかに祠全体が赤いね。火っぽい!」
「お参りするチュン!」
「そうだね!」
早くスズメが帰ってきますように!
「お賽銭を入れるチュン!」
「あ、そっか。神様にお願いごとをするなら必要だよね。……えっと、お賽銭箱は?」
「ないチュン。このスズメの像の目に、五色に輝く光玉をはめ込むチュン」
「五色? 何それ?」
「持ってないチュン⁉ 急いで探すチュン! 手遅れになるチュン!」
スズメ人形が焦ったようにバタバタと暴れ出した。
「手遅れ⁉ 光玉ってどこにあるの⁉」
「きっとその辺に落ちてるチュン!」
えっ、そういうものなの?
お宝を巡って世界中を回って、やっと発見する的な冒険はなくて大丈夫?
「そこに1個あるチュン!」
「どこどこ⁉」
祠の真下、草むらをかき分けて――もしかして、これ?
「ただのビー玉に見えるけど」
「太陽にかざすチュン!」
「……こう?」
なんかこう、光が……。
「ビー玉越しに太陽を覗いたら危ないチュン! 目が潰れるチュン!」
あー、光の屈折とかなんとか。
って!
「今、普通に『ビー玉』って言ったし! やっぱりただのビー玉じゃないの!」
「違うチュン! 五色に輝く光玉チュン! もう1個もそこにあるチュン!」
お、これで2個揃った。
「これをスズメの像の目にはめ込めばいいんだっけ?」
スズメの像ってどれだろう。
「ん……もしかして、この赤くて立派な鳥のこと?」
「そうチュン! 火と情熱をつかさどる神様チュン!」
んー、大きな翼を広げて……炎を身に纏って……長い尻尾が特徴の――。
「これ、不死鳥じゃないの?」
どう見てもスズメではないよね。
丸っこくて小っちゃくてかわいいスズメとは真逆……。
「スズメチュン! 出世すると、シュッとするチュン!」
「シュッとし過ぎでは……」
台座のところになんか書いてある。
「朱雀神社……おい!」
「読み方が違うチュン! 朱雀神社チュン!」
「……絶対違うでしょ!」
朱雀は、スズメが出世した姿じゃないからね⁉
「良いから光玉をはめ込むチュン! 早くしないと手遅れになるチュン」
もう、強引だなあ。
「わかったわかった。この後ちゃんとスズメのところに案内してよ⁉」
ビー玉を空いているくぼみにはめ込みーの。
お?
なんか、祠の奥から地鳴りのような……。
【チュチュ~ン! 私はスズメの神様チュン!】
えー……。
朱雀の像が、スズメの声でしゃべり出したんだけど……。
【目を見つけてくれてありがとチュン!】
「……どういたしまして」
どういう仕掛けなの、これ。
【やさしいマミに耳寄りな情報を授けるチュン】
なんだろう。
【私はマミのことが大好きチュン!】
「それは……わたしもそうだけど?」
【出世して神様になったから、何でも願いをかなえてあげるチュン!】
また願いー?
それはもう、まあまあ間に合ってるんだよね……。
まあでも、わたしの願いは1つだけ。
「スズメを返して」
【わかったチュン! アカスズメ神像のお腹のところにあるダイヤルを、ゆっくり時計回りに回すチュン!】
お腹のダイヤル?
これ、かな?
【チュチュン! くすぐったいチュン!】
「ごめん」
そっとダイヤルだけを持って――。
「回すよ?」
【ひゃっひゃっひゃ!】
めっちゃくすぐったがってる……。
ゆっくりと時計回りにー。
1回転させると、「ガゴンッ」という音を立てて、ダイヤルがそれ以上回らなくなった。
【パンパカパ~ン! チュンチュンチュンパンパカパ~ン! 激熱チュン! 激熱チュン!】
「……何?」
めっちゃ派手にランプが光ってるけど。
うわっ、像の翼がバサバサし出した⁉
【今だ! 朱雀剣を押し込めチュン!】
朱雀剣……?
「祠の左側に刺さっているチュン!」
あ、これか。
「押し込むの?」
「早くするチュン!」
はいはい。
よいしょっと。
【ガシャ~ン! 大当たり! 大当たり!】
「えっ、何⁉」
「やったチュン!」
スズメ人形がめっちゃ喜んでる……。
えっ、ホント何これ?
【右を狙うチュン!】
「……右?」
「早くダイヤルをいっぱいまで回すチュン! パンクするチュン!」
またダイヤルを?
こう、かな?
【超スズメフィーバー! 3600チュン!】
「わー、なんかビー玉がいっぱい転がってきたぁ⁉」
えっ、なにこれなにこれ⁉
「フィーバー中は、絶対手を離しちゃダメチュン!」
ええ……。
足元がビー玉で埋まっていくんですけど……。
【マミ、しあわせチュン?】
「……あんまり」




