第35話 スズメ放送の時間チュ~ン! チェキラッチュン♡
「からあげうまぁぁぁぁ」
衣がサクサクで、齧るとジューシーな油がもうー!
「マミは、しあわせチュン?」
最高にしあわせ♡
「いっぱい食べてもっとしあわせになるチュン!」
「えー、こんなにいっぱい食べたら太っちゃうよー」
「大丈夫チュン。まだ体重60.5kgチュン。標準体型チュン」
ふ、増えてる……。
からあげの分がダイレクトに!
「どうしたチュン? 絶望の表情なんて浮かべて? スズメ印のからあげしあわせチュン?」
いや……。
これ……もも肉だから……。
「これ以上食べたら、確実にデブるよ……」
「マミは、背が高いからお腹がポッコリしていても目立たないチュン」
「そういう問題じゃないって!」
超絶かわいいスズメの隣に立つには、せめてスレンダーな体形を維持しないと! 地味顔のデブなんて言われた日には……もう世界を呪ってしまうかもしれないでしょ!
隣に立つ?
「スズメはどこ⁉ からあげに気を取られてたし!」
この辺でスズメを見たんだよね? スズメどこ⁉ スズメスズメスズメスズメ!
「マミがしあわせなら、スズメ=からあげチュン!」
「だからそういうのは良いって! スズメを出して!」
「……違うチュン?」
なんでそんなに驚いた顔をしているの?
「スズメがからあげなわけないじゃない。違うに決まってるでしょ」
「マミがしあわせにしていればスズメチュン……」
「数学の証明問題じゃないんだから……」
推移律って言うんだっけ?
A=B、かつ、B=Cなら、A=C。
スズメがいれば、しあわせ。
からあげがあれば、しあわせ。
ならば、スズメ=からあげ。
「現実はね、そうはならないの!」
「現実は難しいチュン……。もっとしあわせなものを探すチュン!」
スズメ人形は首を振ると、空に舞い上がっていった。
「今度はちゃんと頼むよー! スズメはからあげじゃないからねー!」
うーん。
仕方ない。わたしもこの辺でスズメの手がかりを探してみよう。
誰かスズメのことを知っていそうな人はいないかな。
商店街の一角。
辺りを見回してみても、みんな普通に日常生活を送っているように見えた。
スズメがいなくなったことなんて、ぜんぜん興味がないかのように。
世界を守っているのはスズメだよ⁉
みんなスズメのおかげで日常生活が送れているっていうのに、その態度はないんじゃないかな⁉
ちょっとはみんなでスズメを探そうよ!
んー! 腹が立ってきた!
ちょっとそこのおばちゃんたち!
真昼間から井戸端会議なんて無駄なことしてないで、スズメを探してよ! 世界終わるよ⁉
……なんて、詰め寄れたらなあ。
知らない人に話しかけるなんて無理でしょ。
そんなスズメみたいなことができたら、わたしがスズメになれるわ。いや、ビジュアル的に絶対なれないけど。
【ピンポンパンポ~ン! ピンポンパンピンポンパン! ピポピポピポピピピピピちゅ~ん!】
「はぇっ⁉ スズメの、声……?」
商店街の道路脇に設置されているスピーカーから、スズメの声がする⁉
【スズメ放送の時間チュ~ン! チェキラッチュン♡】
「ウソ……」
ホントにスズメの声だあ!
「スズメどこ⁉」
これ、どこから放送されてるの⁉
【最初はリスナーのみんなからもらったおハガキを読んじゃうチュ~ン!】
えっ、ラジオ……?
【最初のおハガキは~、私立大波中央学園中等部2年2組、出席番号21番、柊マミちゃん、身長172.6cm、体重60.5kgからいただきましたチュン!】
「個人情報漏洩!」
体重が地味に最新情報に更新されてるの腹立つ!
【ラジオネーム:からあげ大好きチュンさんからチュン! スズメさんこんにちは。はい、こんにちは~♡】
「ラジオネームが書いてあったら、本名読み上げたら絶対ダメ! って、わたし、そんなラジオネームでハガキ送ってませんけど⁉」
どこラジオよ⁉
【『スズメを探しています。みんな一緒に探してほしいチュン。見つけてくれた人にからあげをプレゼントするチュン』だって! みんな、私がどこにいるかわかる~?】
道を歩いている人たちの足が止まる。
井戸端会議をしていたおばさんたちが、スピーカーのほうに注目していた。
【わっかるかな~? 見つけられたらからあげもらえるって~! やったね♡】
いや……。
ホントどこにいるの?
スズメ……。
【ここで大ヒントの時間だぁ!】
えっ、もしかしてスズメの居場所⁉
【実は灯台下暗し? デモクラシー? 思ってもみない場所に、私はいるかも?】
謎解き……?
灯台下暗しってことは、探したと思っていた場所にってこと?
家? それとも学校?
【それではリクエストされたナンバーをお届けチュ~ン。山崎まさよしさんの名曲『One more time, One more chance』チュ~ン!】
でもスズメの家はもうないよね……。
じゃあやっぱり学校なのかな。
スズメと同じように家を失った池中先生が目覚めた場所は、理科準備室だった。
もしかしたらスズメもどこかで目覚めて、動けなくなっている可能性が……?
急いで探さなきゃ!
【こんなとこにいるはずもないのに~♪】
って、まさかのスズメのカラオケver⁉
めっちゃ聴いていたいけど……選曲にそこはかとない悪意を感じる……。
これ、大切な君が……最後まで見つからない歌じゃ……。




