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柊マミ@スズメを休ませたい~世界が勝手に願いをかなえてくるけど、余裕で解釈違いなんですが⁉  作者: 奇蹟あい


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第24話 私の夢ですか? もちろんかわいいお嫁さんです!

 リムジン事件から数日。


 とくに何も不思議なことは起きていない。

 世界は驚くほど平和、とか言っちゃったりしたら、ちょっと気取り過ぎ?


 実は夢だったのかも。

 なんて思ったりもするけれど、12時間を超える動画が手元にある以上……あれは現実……なんだよね。


 家に帰ってから、少しずつ動画の内容を確認しているところ。

 スズメには内緒で。


 まあ、大半はわたしが寝落ちした後に撮られたものだ。手から滑り落ちて、リムジンのカーペットに落っこちてからは、リムジンの天井以外、何も映ってはいない。


 動画が3時間経過する辺りまでは、ホントに何もない。

 たまにわたしかスズメが寝返りを打っているのか、布が擦れる音がするくらいだ。


 だけど、4時間目付近になると様子が変わってくる。

 おそらく窓から差し込む光だと思うのだけれど、夕焼けのような赤っぽい光見え隠れし出す。録画開始が登校時間くらいだから、だいたい朝の8時過ぎから動画がスタートしているとするなら、4時間経過で昼の12時くらい? 真昼間に、なぜ夕焼けが……。


 そしてたまに、ボソボソと人が会話しているような音が入ってくる。

 音量を最大まで上げても、言葉として聞き取ることはできないが、物音ではなく人の声だと思う。話をしている人が遠過ぎてうまく拾えていないのかもしれないね。


 7時間を超えた辺りで、完全に車の外が夜を迎えたのがわかる。

 本来だったら15時くらい。まだ夕方にも早い時間帯のはずなのに、明らかに真っ暗になっているんだよね。トンネルの中? 外から漏れてくる光が一定のリズムじゃないから、普通に市街地を走っていて、街灯の光を拾っている気がする……。


 7時間21分。

 ここで初めて、会話の内容がはっきりと聞き取れた。

 会話というより、一方的に1人の人間が話をしている内容だ。


 声の主は――スズメだった。


『だからぁ、マミはフワフワでモチモチだからぁ、絶対バニラアイスを頼むのぉ』


 正直、意味がわからない。

 おそらくスズメの寝言なんだと思う。


 たしかにね、バニラアイスは好きだけど、わたし自身はフワフワでもなければモチモチでもない。どちらかというと、ガリガリでボソボソだし。そしてバニラアイスよりも、チョコミントアイスを頼む率のほうが高いはず! スズメの夢の中のわたしは、どんな姿をしているんだろうね。


 そこから先は断続的にスズメの寝言が入ってくるようになった。

 変わらずずっと、真っ暗な車内ではあるけれどね。


『マミは首にほくろがあってねぇ~。そこからマミのニオイがするんだよぉ』


 ほくろでなくても、わたしのニオイはすると思う。

 首に抱き着いてきた時に、ニオイを嗅がれているかと思うと、ちょっと恥ずかしい。香水……つけようかな。


『夕飯はビーフカレーでお願いしまぁす。お肉はチキンで!』


 ビーフorチキン?


『おててのマミとマミを合わせて、マ~ミ~』


 何のCMが流れているんだろう。

 ちなみにスズメはこのCMのことがかなりお気に入りなのか、このあと3回ほど「マ~ミ~」が出てきた。


『はい。だから、ひっくり返して逆にヨシってことで、淡水を海水にします』


 何がヨシなのかはわからない。

 でも気軽に淡水を海水にすると、淡水の生き物がかわいそうだと思う。


『今度こそビキニを着せます。絶対です』


 絶対に嫌。


『ペンギンは……ついてきちゃったので、こっそりお風呂場で飼ってます。氷山を移したので大丈夫です』


 大丈夫かなあ。

 お風呂場だと狭いしかわいそうだと思う。


『頻度が上がっています。修復レベルを1段階引き下げます。おそらく問題ありません』


 わたし、のことかな? それとも、ぜんぜん関係ないこと?


『今のところ安定しています。対応可能範囲です。平気です。好きでやっていることですから』


 んー、たぶんさっきの修復云々と繋がってそう。

 わたしのせいで世界が捻じ曲がってしまったのを、スズメが何とかしてくれているらしいし。何とかってどうやって直しているんだろうなあ。


 でもスズメってば、夢の中でまで世界を修復してる……。

 これじゃあ疲れが取れるわけないよね。


 ホント苦労かけちゃってるなあ。

 なんとか、頻度を減らさないと……。


 これまでは無意識にいろんなことを願っちゃっていたと思うんだけど、これからはいかなる困難も柳のように受け流し、2匹目のドジョウを狙っていくぞ、と。


『私の夢ですか? もちろんかわいいお嫁さんです!』


 ああ……。

 結婚なんてしないって、あんなに自然と言っていたのに……。


 やっぱり演技、だったんだね。


 スズメはこんなにかわいいんだもん。

 ウェディングドレス……似合うだろうなあ。


 でも今スズメに、彼氏なんて紹介されたら……ありとあらゆる苦痛を与えてから、地獄の最下層のさらに下に突き落としたくな――らないよ? にこやかに祝福して、ケーキを焼いたりなんかしちゃう、よ?


 結婚式では親友としてスピーチもする、よ?

 探偵を雇って、叩いて叩いて叩きまくって、ないはずの埃を捏造したり――しないよ?


 スズメにはしあわせになってほしいもん。


 わたしも、スズメに頼らずに、自分で解決できるようにならないとね……。


 最初から何も期待せず、願わず、すべての出来事をただ受け入れる。

 そんな人に、わたしはなりたい。


 大丈夫大丈夫。

 スズメの子どもを抱っこするのがわたしの夢……なんかじゃないよ?

 スズメに子どもができてもできなくても大丈夫。どっちの未来も受け入れるし?


 えっ、動画の中で赤ちゃんの泣き声がする……?

 なにこれ怖い。


 ちょっと戻して再生――いやいや……風の音、だよね……?

 気のせい気のせい。


「んー、もう12時過ぎちゃった。今日の動画チェックはこの辺にして……残りは明日にしよう」


 おやすみなさい。


 ……あれ?


 ベッドの上のスズメ人形が……1、2、3、4、5、6……んー、1羽足りない。

 どこだろう?


 ベッドの下かな?

 いない。


 どこー?


「ん? スズメからメッセージだ」


 スズメがこんな遅い時間まで起きているなんて珍しい!


 えーと、何かな。


【スズメ人形がうちに遊びに来ているみたい! 今夜は泊まらせるね! おやすみ!】


 なーんだ。

 スズメのところに遊びに行ってたんだ。


 それなら安心。

 おやすみなさい。

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