第25話 空前の体育ブームがやってきたぞー!
わたしはね、『脱・スズメ依存症』を宣言するよ!
スズメに頼りきりだと、スズメが疲れちゃうからね……。
なんとか、こう……適切な距離感を保ちつつ、理想の幼馴染み像を演出、みたいな?
そう! |スズメくんかくんか《秘密のモーニングルーティン》は……極力減らしていくよっ!
体内のスズメ分が足りなくなっても……発作が起きないように、ね……。
スズメ分補給を願ったりしないようにしないと……。
「マミ~? どうしたの? 朝ご飯ぜんぜん食べてないけど、調子悪い?」
しまった!
朝一からスズメに心配されてる!
「えっ、ち、ち違うよ! 元気過ぎて……そう、早食いをしようと思って! なんかね、一気に食べると胃の中にドカンと入って、そこからチビチビ消化するから、お昼までお腹が空かないらしいよ!」
「え~、体に悪そう……」
うん、まあ、体には良くないと思う。
そして、早食いすると……せっかくスズメのお母さんが用意してくれたご飯の味が……わからない!
うっ、気持ち悪い……。
「いってきま~す。あ、また今日も雨だぁ」
「完全に梅雨だね」
ずっと雨。
ちょっと憂鬱……じゃないよ! 雨大好き!
「あああ雨だとさ、体育の時も外に出なくて良いし、汚れないから良いよね!」
「マミは体育嫌い?」
何かを窺うような目。
これはまさか……。
「ううん! 体育大好きっ! 毎日体育があったらなー……じゃなくて、今がちょうど良い頻度だから……今がちょうど良いなー! 不満なんてないなー!」
「……変なマミ」
む、難しい……。
体育嫌いって言って、体育の授業がこの世界から消滅しても困るし、体育大好きアピールをし過ぎて、全部の授業が体育になっても困るし……。
何事もほどほどが一番だよね。
体育なんて、やりたい人がやれば良いんだし。
まあ、でもあれか。
健康のためにちょっとした運動は必要だよねえ。カロリーを消費しないと、甘いものも食べられない!
ほどほどって難しいね……。
* * *
朝の会。
池中先生の表情が険しい……。
「というわけで……今日の授業は自由参加だ」
何が「というわけ」なの?
「各教科担当がそれぞれの教室で待っている。好きな教科を受講するように」
……なんか大学の授業みたい。
大学のことはよく知らないけど。
でも怪しい。
「スズメ、なんかしたでしょ」
こそっと確認をば。
「……へっ? 何か言った?」
あれ。
今、目が合ってちゃんと会話をしていたつもりだったのに。
「いや、なんか、いきなり授業が自由参加とか、おかしくないかなーって」
周りのクラスメイトたちもざわついているし。
「自由参加⁉ え、あ、え……あ~? なんだろ?」
「それをわたしが訊いているんだけど……」
ぜんぜん覚えがなさそう。
じゃあこれはスズメが何かしたわけじゃないってことかな。池中先生に訊くのが早そう。って、もういなかった。
んー、じゃあ池中先生が担当の理科の授業を受ければ良いかな。
タイミングを見計らって確認しよう。
「……お邪魔しまーす」
理科室の扉を開けて中に入る。
「お~、柊か。よく来たな。最前列に座れ」
ええ……。
ほかの生徒の姿はなし。
「ちなみに、自由参加の授業ってうちのクラスだけじゃないですよね……?」
「2年全体だな。急に今朝、教育庁のほうから、新しいカリキュラムの実行命令が下りてきてだな……」
急に。
それってやっぱり。
「世界が……?」
「ま、これくらい、大したことないさ」
半笑いの池中先生。
目が死んでる……。
「わたし……何も願ってないんですけど……」
「気負い過ぎるな。そういうこともあるさ」
そう、ですかねえ。
「では授業を始める。教科書の42ページを開いて~」
えっ、理科の授業を受けるのって、ホントにわたしだけ⁉
学年で1人だけ⁉
ほかのみんなはどこ行ったの⁉
「お、遅くなりましたぁぁぁぁぁ!」
荒々しく扉を開けて入ってきたのは、スズメだった。
「お~、南野。ちょっと遅刻だが、大目に見よう。座れ」
「はぁい!」
スズメは肩で息をしながら、わたしの隣の席に腰を下ろした。
「ところで……なんでスズメは体操着に着替えてるの?」
ハチマキまで巻いちゃって。
「えっと……それは……」
目が泳いでいるね。
……何か隠しているね?
「みんなが体育の授業を選択しているから、かな……」
「……どういうこと?」
詳しく教えて。
「空前の体育ブーム到来……かな?」
「なんで疑問形?」
あ、また目が泳いだ。
「なんかね、みんなで体育のゴリ……酒井先生を胴上げしてるよ」
「いや、なんで……?」
さらに意味がわからない。
「体育の授業をありがとう的な?」
ホント何言ってるのかわからない。
「……午後までには何とかするね」
あ、ため息吐いた。
「やっぱり、わたしのせい?」
「ん~~~~~~、違う、けど……違わない、かな」
やっぱり世界のほうが勝手に捻じ曲がって?
「そういうこともあるよ! でも、何とかするから大丈夫!」
うわー、無理やり笑ってるのが丸分かりだよぉ。
完全にわたしのせいだ……。
体育はほどほどにってあれほど言い聞かせたのになぜ……。
「今日の授業は、みんなでホットヨガをやるらしいよ~」
「なんでホットヨガ?」
「健康に良いんだってさ~」
ああっ! 健康っ!
……ちょっと興味あるかも。




